伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
117 / 137
第五章

トレントの森

しおりを挟む
 俺たちは世界樹ちゃんを連れて、魔導船まで戻っていた。さすがに船内まではのぞくことができなかったようであり、中に入るとはしゃぎ回っていた。マリアと同じだな。
 世界樹ちゃんは色々と知っていそうで、実際はマリア程度なのかも知れない。それはそれで頭が痛い問題ではあるのだが。
 それよりも、今はもう一つの問題を解決しないといけな。

「世界樹ちゃん、名前はないのか?」
「世界樹ちゃん?」

 リリアの膝の上に座る幼女の世界樹ちゃんが首をかしげて言った。いや、その呼び名は俺たちが勝手につけたものであって、本来の名前とは違うのだよ。
 リリアに散々叱られたあと、どうやらリリアと世界樹ちゃんとの間で上下関係が構築されたようである。リリアが上、世界樹ちゃんが下。完全服従のようである。これはこれで良かった。これならリリアが制御してくれるだろう。
 リリアの許可がなければ俺に迫ってくることはできない。ありがとうリリアちゃん。

「これは私たちが名前を決めてあげないといけないわね。何か良い案はないかしら?」
「そうだなぁ」

 いきなりそんなことを言われてもな。ペットというわけにはいかないし、それなりに真面目な名前をつけないとまずいだろう。

「ダーリンに名前をつけて欲しいの!」

 ハイハイ、と手を上げながら言った。仕草がいちいち可愛いのだが、どう見てもただの幼女なんだよな。ダーリン呼びはさすがにやめていただきたい。

「分かった。俺のことはダナイと呼ぶように。ダーリン呼びは無しだ」
「何で?」
「何ででも。でなければ名前はつけてあげない」

 この一言が聞いたようである。しょんぼりとなったが、受け入れてくれたようである。さて、どんな名前にしようか。世界樹、ねぇ。

「よし、ジュラにしよう。今からジュラちゃんだ。OK?」
「OKなの!」

 どうやら喜んでもらえたようである。納得するとリリアの膝の上でジュースを飲み始めた。ジュラは普通に食べるし、普通に飲む。排せつをするのかどうかは用観察だな。

「それじゃ、イーゴリの街に戻るとしよう。ギルドマスターたちもそろそろ心配しているかも知れないしな」

 よっこらせ、と立ち上がるとジュラが寄って来た。

「どこに行くの?」
「操縦席だよ」
「私も行く!」
「ああ、ええっと……」

 子供には操縦席は面白くないんじゃないのかな。それに座席はあるが機能性重視であり、この部屋にあるような、居心地の良いソファーではない。どうやって断ろうか。

「いいじゃない。一緒に行きましょう。私も行くわ」

 こうして操縦席には俺たち三人が行くことになった。アベルとマリアはここでお留守番だ。二人に片付けを頼むと、操縦席に向かった。

「すごいすごい! 本当に海の向こうに他にも島があったんだ」

 ジュラは大はしゃぎであった。何でもその昔は世界樹がある場所は陸地であったそうである。しかし、度重なる地殻変動により、今では世界樹だけを残して他の場所は海の底に沈んでしまったらしい。

 何で世界樹がある場所だけが残ったのかと聞いたら、どうやらあそこは特別な場所であり、地下を移動する魔力があふれ出る地点だったらしい。世界樹があれだけ大きくなれたのはそのお陰でもあったそうである。

 様々な幸運が重なってこれまで生きながらえてきたが、さすがに限界がきていたらしい。それで新天地を求めたというわけだ。

「見えてきたな。あそこの広場に降り立つぞ。少し怖いかも知れないが我慢しろよ」
「ひゃっ!」

 いつもよりか緩やかに降下したつもりだったのだが、フワリとした浮遊感があった。初めての体験にジュラは驚いたようで、リリアにしがみついていた。さすがにリリアは慣れたようで、そんなジュラを優しく抱きかかえていた。
 この場だけ見ると、完全に親子だな。俺も含めて。

 地上に降り立つとすぐに船外に出て、魔導船をしまった。そして代わりに馬車と松風を出した。馬や馬車はその昔に見たことがあるのだろう。特に驚く様子はなかったが、キラキラした顔で見ていた。

「ほら、乗るぞ。ここからは馬車の旅だ。街道まで二日、そこから街までは一日かかるからな。覚悟しておけよ」
「はーい!」

 初めて乗る馬車がうれしいのだろう。ピョコンと手を上げて返事をした。それを見ていたリリアはクスクスと笑っている。

「まるで親子ね」
「リリアもそう思うか? 俺もだよ」

 二人して笑った。それから数日後、俺たちはイーゴリの街へと戻ってきた。計算してみると、一月ほど南の海を探検していたようである。
 家に着くとすぐに片付けが始まった。留守の間、師匠に見回りを頼んでいたとは言え、室内はさすがにノータッチだ。見られたくないものもあるしな。そんなわけで一月分のホコリを処理する必要がある。

 アベルとマリアは冒険者ギルドに報告に行ってもらった。俺たちがいない間に何か問題はなかったかと、無事に戻ってきたことの報告である。その間に俺たちは掃除と食事の支度を終わらせていた。ジュラには家の設備の案内だ。

 人型モードになったのはこれが初めてだそうである。長い歴史の中でこんな風に人とかかわることになるとは思わなかった、としみじみ語っていたが、同感である。まさか植物に求愛されるとは思ってもみなかった。

 ジュラにとっては魔道具を手にするのは初めてである。遠くから見たことはあるそうだが、そのころは興味がなくてそれほど真剣には観察していなかったらしい。どの魔道具を渡しても「すごい、初めて!」と喜んでいた。

 ちなみに気になったので、ジュラの戦闘能力も聞いてみた。何でも世界樹は植物界の王様みたいなものだそうで、周辺の植物を操ることができるらしい。植物を操ることができるのは世界樹の特権だと言っていたが、俺もそれができることは黙っていた。

 それを言ったら再び子作りをせがまれるかも知れない。もしくは俺も世界樹だと思われるかも知れない。俺はただのきれい好きなドワーフだ。ちょっと変わったところのあるおちゃめなドワーフだ。

 報告を終えたアベルたちが帰ってきたので夕食にした。何でもさすがに一月何の連絡もないことにギルドマスターのアランたちが心配していたそうである。Bランクパーティーの俺たちがいなくなるのはかなりの痛手のようである。気をつけないとな。

 この分だと師匠も心配しているかも知れない。明日は必ず挨拶に行こう。後々のことも考えて、ジュラのことも紹介しておいた方が良いだろう。冒険者ギルドには――そのときで良いか。今から報告して変に勘ぐられると困るからな。

 それに幼女形態とは言え、世界樹だ。世界樹が産出する素材は大変貴重で有用なものが多い。それが欲しいと言われると非常に困ることになるからな。できる限り黙っておいた方がいいだろう。この意見にはみんなが賛成してくれた。

「西の砦がまたきな臭くなってきたそうだよ」
「何だ、またか。魔族でも絡んでいるのか?」

 アベルは首を左右に振った。

「どうやら違うらしいよ。西の国の「常磐の森」って呼ばれている魔境の森で魔物の氾濫があったらしい。そしてその氾濫で森を出てきた魔物の一部が西の砦に流れてきているらしい」

 聞いたところによると、その「常磐の森」と西の魔境は接しているようである。そのため被害が出ているそうだ。

「魔物の氾濫の原因は何なんだ?」
「まだ調査中らしいけど、付近の住民によると「森が動いた」って言っているみたいだよ」
「森が動いた?」

 それってあれか、動く木であるトレントが大量に移動したってことなのか? ということはその中にエルダートレントがいるかも知れない。これはまたとないチャンスなのでは?

 リリアもそれに気がついたらしく、こちらを見てコクコクと首を縦に振っていた。
 次のターゲットはエルダートレントの木炭からの青い炎か。これは休む暇がないな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

処理中です...