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魔族襲来①
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国王の執務室に3人の顔があった。しかし3人の顔色はすぐれなかった。
「その報告に間違いはないのだな?」
「はい。間違いございません」
そう答えたのは、先の魔物の氾濫の鎮圧にあたっていた騎士団長だった。
「まさか、封印されていた魔族が復活を遂げていたとは・・・」
頭を抱えているのはこの国の宰相であり、国の運営に大きく関わっている人物である。
その言葉を最後に、しばらくの沈黙があった。
「その魔族は確か、多大な犠牲を払ってようやく封印することができた、と聞いているが?」
「ええ、その通りです。消滅させることはできず、何とか封印したという記録が残っております」
「再封印するだけでもどれだけの被害が出ることになるか・・・しかし、嘆いているだけでは被害が増すばかりだ。急ぎ、その魔族の情報と行方を追うように。混乱を避けるため、情報統制はしておくように」
「ハッ!万が一に備えて避難体制を強化しておきます」
「よろしく頼む」
会合の後も、3人の顔色はすぐれなかった。
魔物の氾濫よりも差し迫った危機がすぐそこまで来ている可能性がある。相手は聖剣を探しだそうとしているのだ。すでにこの国をターゲットにしている可能性は大いにあった。
小さな英雄のお陰で侯爵家による国の乗っ取りは未然に防がれた。当然、侯爵家は取り潰されたのだが、侯爵家の面々は誰1人として口を割らなかった。いや、話せるほどの情報を持っていなかった、と言うのが正解だろう。魔族の旨い話に乗っただけであり、それ以外のことを知ろうとしなかった。何の役にも立たない侯爵家であった。
「魔族か~。まだ生き残りが居たんだ~」
フェオが小さく頷きながら、感心そうに呟いた。魔族は絶滅したことになっていたのかな?
「魔族がいるのはそんなに珍しいのかい?」
「そりゃあね。ほら、妖精だって残っているのは、多分、私ぐらいだと思うよ?同じような存在の魔族も居なくなってて当然だよ。何たって、私達は魔力が濃いところじゃないと新しく生まれることができないし、存在できないからね。魔力がなくなって消えたら、おしまい」
アッサリとフェオは言ったが、俺には、いや、俺達には衝撃の事実だった。その証拠にショックでクリスティアナ様も固まっている。
その様子にフェオが気がついた。
「や、やだな~二人とも。そんな顔しないでよ!自然淘汰なんて、自然の摂理だよ。時代に合わなくなっただけだって。あ、でも魔力の塊のようなシリウスとの間に子供を作れば、ひょっとしたら大丈夫かもしれない!」
え、そういうものなのかな?妖精の子孫を残せる可能性があるのかな?妖精とのハーフ、ハーフフェアリー?ハーフエルフなんかは聞いたことあるけど、どうなんだろうか。
「人間と妖精の間に子供を作ることができるのかい?」
疑問がつい口からポロッと出てしまった。すると何かに殴られたかのように、ガバッとクリスティアナ様がこちらに振り向いた。
「な、何を言って・・・」
「どうなんだろう?そう言えば聞いたことないな~。今から試してみる?」
フェオは首を傾げながら、しかし、真面目な顔をして聞いてきた。
普段はお気楽トンボのフェオのいつになく真剣な眼差しに、フェオの心が透けて見えるようで何だか悲しくなってきた。フェオも心の奥底では独りぼっちになってしまったことを寂しく思っているのだろう。
「そうだな、フェオ・・・って、今!?」
「今ですの!?」
二人が驚愕する目の前でフェオは服を脱ぎ捨てた。そして、何やら呪文を唱え始めた。
突然の出来事に、二人して陸に上がった魚のように口をパクパクさせていると、フェオの魔法が完成した。
暖かい光がフェオの姿を包み込み、その姿をゆっくりと変えていった。そして光が収まるとそこには・・・お母様を越える美貌と豊満な体つきをした絶世の美女が佇んでいた。全裸で。
さすがは妖精、マジ半端ない。フェオの髪も地面に着くほどまで長く伸びており、さながら地上に降りた女神のようだ。
シリウス君の豆柴が一瞬にして牙を剥いた。風呂場じゃなくて良かった。本当に良かった。
思わずの出来事に硬直していると、フェオが両手を広げ、俺を優しく包み込んだ。なにこれ、柔らかくて、暖かくて、いい香りがする。なんかこのまま・・・
「ストーップ!!」
俺よりも先に復活したクリスティアナ様が叫び声を上げ、フェオと俺の間に体をねじ込んできた。俺は、はた、と我に返った。
危ない危ない。フェオと一線を越える所だった。この年齢で子作りが可能なのかは分からないが。
半泣き状態で俺にしがみつくクリスティアナ様の頭にそっと手を置き、落ち着かせるようにその艶やかな髪を撫でた。
「フェオ、気持ちは良く分かるけど、人間社会には順序ってものがあるんだよ。フェオも人間社会で共に生活しているのだから、多少なりともそれに従わなければいけないよ」
諭すようにゆっくりと、しっかりとフェオの目を見て言った。俺の言葉に納得したのかは分からなかったが、頷き返してくれた。
「分かったわ。クリピーが一番目で、私が二番目に子作りすればいいのね。じゃあさ、クリピー、早く早く!」
駄目だコイツ。早く人間社会のマナーを教え込まないと、と一瞬考えを巡らせている隙に、フェオは何やら魔法を唱えた。その瞬間、クリスティアナ様の着ていた服が全部脱げ落ち、全裸になった。
「わ、わわっ!」
突然の出来事に慌てながら両腕で隠したが、さすがに全部は隠しきれなかった。そう言えば以前フェオが服を全部脱がせる魔法があると言っていたが、本当にあったのか。てっきりデタラメだと思っていた。
クリスティアナ様のこれまた美しい裸体を拝んでいたら、クリスティアナ様に叱られた。
「な、何をじっくり見てますの!?シリウス様ー!!」
ここから先は記憶が曖昧だ。クリスティアナ様の右ストレートが飛んできたとこまでは覚えているのだが・・・。
「魔族が聖剣の復活を察知しているのなら、また探りを入れてくるかも知れませんね」
魔族の狙いが聖剣の消滅だったら、またやってくるだろう。
「そ、そうですわね」
ん?クリスティアナ様がこちらと目を合わせない。まだ怒っているのかな?
「それで、プッ、どうするの?」
何故かこちらを見たフェオが吹き出しながら聞いてきた。何か失礼な気がする。
「取り敢えずは、野鳥の会の魔法を、魔力量の多い順に優先的に知らせるようにしておくよ。これなら魔力量の多い魔族をすぐに察知できるはずさ」
質問をしたフェオの方に面と向かって言ったが、当のフェオはそっぽを向いて笑いを堪えている。
「フェ~オ~?」
「ブハッ!もう限界!だってシリウスがパンダみたいなんだもん」
そう言ってフェオが笑い転げた。パンダって、あのパンダだよね?この世界にもいるのかな?
手鏡を持って来てもらい、顔を確認すると、見事にパンダのようなアザができていた。これは多分、クリスティアナ様に殴られた跡だな。
それでクリスティアナ様がこちらを向かないのか。取り敢えずは怒ってはいなさそうなので良かった。
「シリウス様、も、申し訳ありませんわ」
しょんぼりとクリスティアナ様が謝ってきた。別に気にしてないのでそう告げると、安心したかのように、ホッと息を吐いた。
原因がフェオのせいだとは言え、どちらかと言えばクリスティアナ様の全裸を堪能していたこちらが謝るべきかもしれない。だが、また振り返すのが怖くてやめておいた。当然、そんな美味しい思いをさせてくれたフェオを怒る気にもならなかった。
「ところでさ、シリウス。魔力量の多い順にしたらさ、誰が一番になるの?」
フェオがなんだか悪巧みをしているような表情で聞いてきた。フェオが一番なのを確認したいのかな?
「そりゃあもちろん・・・ん?」
目を擦る。いや、目を擦っても情報は脳内に浮かんでいるので全く意味はないのだが、ただのジェスチャーだ。
脳内情報にはフェオではなく、俺が一番になっている。しかも、測定不可、と出ている。
「ん?どうしたの?」
フェオがその様子に首を傾げた。
「あ、ああ、いや、フェオが一番だったよ?クリスティアナ様が上位10名に入っていたから驚いてさ」
嘘ではない。クリスティアナ様の魔力量もなかなかだった。
「本当ですの!?私の魔力量はそれほど多くはないと聞いていたのですが・・・」
首を傾げて考え込んだが、答えは別のところからやってきた。
「新しく魔法をどんどん覚えたからじゃない?使える魔法が増えれば、その魔法を使うために魔力量も増えるよ?シリウスの創った魔法はヘンテコな魔法が多いから、クリピーの体がそれに適応しようと頑張ったんだよ。きっと」
そう、フェオが答えた。
魔力量を増やすそんな方法があったのか。あと、ヘンテコは余計だ。こちらはいつでも全部真面目にやっている。
「そうでしたのね!それならば、これからも沢山シリウス様から魔法を教えてもらえば、もっともっと魔力量を増やすことができるのですね。シリウス様、これからもよろしくお願いしますわ!」
クリスティアナ様が満面の笑みをこちらに向けてきた。
眩しい!クリスティアナ様の笑顔が眩しい!
「あたしも、あたしも!」
フェオが精一杯手を挙げて言ってきた。その姿も可愛いらしい。自分は本当に恵まれていることを再認識した瞬間だった。
そんな二人を愛でていると、野鳥の会に反応があった。
「おや、どうやら魔族がノコノコとやってきたみたいだよ」
その言葉にビクッと反応するクリスティアナ様。慌てて俺の腕にしがみついてきた。
「な、何故そんなに冷静で居られますの?」
俺とフェオが全く動じないことに疑問を持つクリスティアナ様。だってさあ。
「う~ん、何か、大したこと無さそうなんだけど?」
「さすがフェオ。フェオの魔力量の10分の1くらいしか魔力量がないからね。フェオなら小指でチョイ、だね」
油断していても敗北はないだろう。さすがは原初の妖精。神に最も近い存在は伊達じゃない。
「あの、私の何倍くらいですの?」
「あー、10倍くらい?」
「飛んでもないですわ!」
ヒシッと俺の腕にきつくしがみついた。胸の弾力が半端ない。この年齢でこれとか、大人になったらドンだけだよ。
「大丈夫、大丈夫。あたしが瞬殺してあげるからさ!ところで、シリウスの何倍くらい?」
う、答え難い質問をしてくるなぁ。どうしよう。
「えーっと、半分くらい?」
「シ、シリウス様も飛んでもないですわ・・・」
しまった、クリスティアナ様に引かれてしまった。同じくらいとか言っておけば良かったか?でも、それだと心配しそうだしな。
「クリピー、騙されちゃ駄目だよ。シリウスはあたしよりも魔力量があるから10倍以上は間違いなくあるわよ」
こちらを見てニタリと笑う。コイツ、さっき分かってて、わざと誰が一番か聞いたな?思わず顔がぐぬぬとなった。それを見たフェオはとても満足そうだ。
「フェ、フェオと同じ10倍かそれ以上!?シリウス様、本当に人間ですの!?」
何気にクリスティアナ様が酷い。さすがにそれは無いんじゃないかなぁ。
「・・・多分、人間だと思います」
「だからシリウスは妖精王だって!」
「いいえ、きっと聖王様ですわ!」
やいのやいのと言い合う二人。大変、姦しい。
え、シリウスはシリウスだって?エクスカリバーはいい子やね。そんなエクスカリバーをそっとナデナデしておいた。
「その報告に間違いはないのだな?」
「はい。間違いございません」
そう答えたのは、先の魔物の氾濫の鎮圧にあたっていた騎士団長だった。
「まさか、封印されていた魔族が復活を遂げていたとは・・・」
頭を抱えているのはこの国の宰相であり、国の運営に大きく関わっている人物である。
その言葉を最後に、しばらくの沈黙があった。
「その魔族は確か、多大な犠牲を払ってようやく封印することができた、と聞いているが?」
「ええ、その通りです。消滅させることはできず、何とか封印したという記録が残っております」
「再封印するだけでもどれだけの被害が出ることになるか・・・しかし、嘆いているだけでは被害が増すばかりだ。急ぎ、その魔族の情報と行方を追うように。混乱を避けるため、情報統制はしておくように」
「ハッ!万が一に備えて避難体制を強化しておきます」
「よろしく頼む」
会合の後も、3人の顔色はすぐれなかった。
魔物の氾濫よりも差し迫った危機がすぐそこまで来ている可能性がある。相手は聖剣を探しだそうとしているのだ。すでにこの国をターゲットにしている可能性は大いにあった。
小さな英雄のお陰で侯爵家による国の乗っ取りは未然に防がれた。当然、侯爵家は取り潰されたのだが、侯爵家の面々は誰1人として口を割らなかった。いや、話せるほどの情報を持っていなかった、と言うのが正解だろう。魔族の旨い話に乗っただけであり、それ以外のことを知ろうとしなかった。何の役にも立たない侯爵家であった。
「魔族か~。まだ生き残りが居たんだ~」
フェオが小さく頷きながら、感心そうに呟いた。魔族は絶滅したことになっていたのかな?
「魔族がいるのはそんなに珍しいのかい?」
「そりゃあね。ほら、妖精だって残っているのは、多分、私ぐらいだと思うよ?同じような存在の魔族も居なくなってて当然だよ。何たって、私達は魔力が濃いところじゃないと新しく生まれることができないし、存在できないからね。魔力がなくなって消えたら、おしまい」
アッサリとフェオは言ったが、俺には、いや、俺達には衝撃の事実だった。その証拠にショックでクリスティアナ様も固まっている。
その様子にフェオが気がついた。
「や、やだな~二人とも。そんな顔しないでよ!自然淘汰なんて、自然の摂理だよ。時代に合わなくなっただけだって。あ、でも魔力の塊のようなシリウスとの間に子供を作れば、ひょっとしたら大丈夫かもしれない!」
え、そういうものなのかな?妖精の子孫を残せる可能性があるのかな?妖精とのハーフ、ハーフフェアリー?ハーフエルフなんかは聞いたことあるけど、どうなんだろうか。
「人間と妖精の間に子供を作ることができるのかい?」
疑問がつい口からポロッと出てしまった。すると何かに殴られたかのように、ガバッとクリスティアナ様がこちらに振り向いた。
「な、何を言って・・・」
「どうなんだろう?そう言えば聞いたことないな~。今から試してみる?」
フェオは首を傾げながら、しかし、真面目な顔をして聞いてきた。
普段はお気楽トンボのフェオのいつになく真剣な眼差しに、フェオの心が透けて見えるようで何だか悲しくなってきた。フェオも心の奥底では独りぼっちになってしまったことを寂しく思っているのだろう。
「そうだな、フェオ・・・って、今!?」
「今ですの!?」
二人が驚愕する目の前でフェオは服を脱ぎ捨てた。そして、何やら呪文を唱え始めた。
突然の出来事に、二人して陸に上がった魚のように口をパクパクさせていると、フェオの魔法が完成した。
暖かい光がフェオの姿を包み込み、その姿をゆっくりと変えていった。そして光が収まるとそこには・・・お母様を越える美貌と豊満な体つきをした絶世の美女が佇んでいた。全裸で。
さすがは妖精、マジ半端ない。フェオの髪も地面に着くほどまで長く伸びており、さながら地上に降りた女神のようだ。
シリウス君の豆柴が一瞬にして牙を剥いた。風呂場じゃなくて良かった。本当に良かった。
思わずの出来事に硬直していると、フェオが両手を広げ、俺を優しく包み込んだ。なにこれ、柔らかくて、暖かくて、いい香りがする。なんかこのまま・・・
「ストーップ!!」
俺よりも先に復活したクリスティアナ様が叫び声を上げ、フェオと俺の間に体をねじ込んできた。俺は、はた、と我に返った。
危ない危ない。フェオと一線を越える所だった。この年齢で子作りが可能なのかは分からないが。
半泣き状態で俺にしがみつくクリスティアナ様の頭にそっと手を置き、落ち着かせるようにその艶やかな髪を撫でた。
「フェオ、気持ちは良く分かるけど、人間社会には順序ってものがあるんだよ。フェオも人間社会で共に生活しているのだから、多少なりともそれに従わなければいけないよ」
諭すようにゆっくりと、しっかりとフェオの目を見て言った。俺の言葉に納得したのかは分からなかったが、頷き返してくれた。
「分かったわ。クリピーが一番目で、私が二番目に子作りすればいいのね。じゃあさ、クリピー、早く早く!」
駄目だコイツ。早く人間社会のマナーを教え込まないと、と一瞬考えを巡らせている隙に、フェオは何やら魔法を唱えた。その瞬間、クリスティアナ様の着ていた服が全部脱げ落ち、全裸になった。
「わ、わわっ!」
突然の出来事に慌てながら両腕で隠したが、さすがに全部は隠しきれなかった。そう言えば以前フェオが服を全部脱がせる魔法があると言っていたが、本当にあったのか。てっきりデタラメだと思っていた。
クリスティアナ様のこれまた美しい裸体を拝んでいたら、クリスティアナ様に叱られた。
「な、何をじっくり見てますの!?シリウス様ー!!」
ここから先は記憶が曖昧だ。クリスティアナ様の右ストレートが飛んできたとこまでは覚えているのだが・・・。
「魔族が聖剣の復活を察知しているのなら、また探りを入れてくるかも知れませんね」
魔族の狙いが聖剣の消滅だったら、またやってくるだろう。
「そ、そうですわね」
ん?クリスティアナ様がこちらと目を合わせない。まだ怒っているのかな?
「それで、プッ、どうするの?」
何故かこちらを見たフェオが吹き出しながら聞いてきた。何か失礼な気がする。
「取り敢えずは、野鳥の会の魔法を、魔力量の多い順に優先的に知らせるようにしておくよ。これなら魔力量の多い魔族をすぐに察知できるはずさ」
質問をしたフェオの方に面と向かって言ったが、当のフェオはそっぽを向いて笑いを堪えている。
「フェ~オ~?」
「ブハッ!もう限界!だってシリウスがパンダみたいなんだもん」
そう言ってフェオが笑い転げた。パンダって、あのパンダだよね?この世界にもいるのかな?
手鏡を持って来てもらい、顔を確認すると、見事にパンダのようなアザができていた。これは多分、クリスティアナ様に殴られた跡だな。
それでクリスティアナ様がこちらを向かないのか。取り敢えずは怒ってはいなさそうなので良かった。
「シリウス様、も、申し訳ありませんわ」
しょんぼりとクリスティアナ様が謝ってきた。別に気にしてないのでそう告げると、安心したかのように、ホッと息を吐いた。
原因がフェオのせいだとは言え、どちらかと言えばクリスティアナ様の全裸を堪能していたこちらが謝るべきかもしれない。だが、また振り返すのが怖くてやめておいた。当然、そんな美味しい思いをさせてくれたフェオを怒る気にもならなかった。
「ところでさ、シリウス。魔力量の多い順にしたらさ、誰が一番になるの?」
フェオがなんだか悪巧みをしているような表情で聞いてきた。フェオが一番なのを確認したいのかな?
「そりゃあもちろん・・・ん?」
目を擦る。いや、目を擦っても情報は脳内に浮かんでいるので全く意味はないのだが、ただのジェスチャーだ。
脳内情報にはフェオではなく、俺が一番になっている。しかも、測定不可、と出ている。
「ん?どうしたの?」
フェオがその様子に首を傾げた。
「あ、ああ、いや、フェオが一番だったよ?クリスティアナ様が上位10名に入っていたから驚いてさ」
嘘ではない。クリスティアナ様の魔力量もなかなかだった。
「本当ですの!?私の魔力量はそれほど多くはないと聞いていたのですが・・・」
首を傾げて考え込んだが、答えは別のところからやってきた。
「新しく魔法をどんどん覚えたからじゃない?使える魔法が増えれば、その魔法を使うために魔力量も増えるよ?シリウスの創った魔法はヘンテコな魔法が多いから、クリピーの体がそれに適応しようと頑張ったんだよ。きっと」
そう、フェオが答えた。
魔力量を増やすそんな方法があったのか。あと、ヘンテコは余計だ。こちらはいつでも全部真面目にやっている。
「そうでしたのね!それならば、これからも沢山シリウス様から魔法を教えてもらえば、もっともっと魔力量を増やすことができるのですね。シリウス様、これからもよろしくお願いしますわ!」
クリスティアナ様が満面の笑みをこちらに向けてきた。
眩しい!クリスティアナ様の笑顔が眩しい!
「あたしも、あたしも!」
フェオが精一杯手を挙げて言ってきた。その姿も可愛いらしい。自分は本当に恵まれていることを再認識した瞬間だった。
そんな二人を愛でていると、野鳥の会に反応があった。
「おや、どうやら魔族がノコノコとやってきたみたいだよ」
その言葉にビクッと反応するクリスティアナ様。慌てて俺の腕にしがみついてきた。
「な、何故そんなに冷静で居られますの?」
俺とフェオが全く動じないことに疑問を持つクリスティアナ様。だってさあ。
「う~ん、何か、大したこと無さそうなんだけど?」
「さすがフェオ。フェオの魔力量の10分の1くらいしか魔力量がないからね。フェオなら小指でチョイ、だね」
油断していても敗北はないだろう。さすがは原初の妖精。神に最も近い存在は伊達じゃない。
「あの、私の何倍くらいですの?」
「あー、10倍くらい?」
「飛んでもないですわ!」
ヒシッと俺の腕にきつくしがみついた。胸の弾力が半端ない。この年齢でこれとか、大人になったらドンだけだよ。
「大丈夫、大丈夫。あたしが瞬殺してあげるからさ!ところで、シリウスの何倍くらい?」
う、答え難い質問をしてくるなぁ。どうしよう。
「えーっと、半分くらい?」
「シ、シリウス様も飛んでもないですわ・・・」
しまった、クリスティアナ様に引かれてしまった。同じくらいとか言っておけば良かったか?でも、それだと心配しそうだしな。
「クリピー、騙されちゃ駄目だよ。シリウスはあたしよりも魔力量があるから10倍以上は間違いなくあるわよ」
こちらを見てニタリと笑う。コイツ、さっき分かってて、わざと誰が一番か聞いたな?思わず顔がぐぬぬとなった。それを見たフェオはとても満足そうだ。
「フェ、フェオと同じ10倍かそれ以上!?シリウス様、本当に人間ですの!?」
何気にクリスティアナ様が酷い。さすがにそれは無いんじゃないかなぁ。
「・・・多分、人間だと思います」
「だからシリウスは妖精王だって!」
「いいえ、きっと聖王様ですわ!」
やいのやいのと言い合う二人。大変、姦しい。
え、シリウスはシリウスだって?エクスカリバーはいい子やね。そんなエクスカリバーをそっとナデナデしておいた。
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