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さては見ていたな!
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「だ、大丈夫ですか、ガーネット公爵令息様? ずいぶんとお加減が悪そうですが」
「大丈夫です、少しのぼせただけです。温泉自体はとても良いものでしたよ。あとから皆さんで入って下さい。ああ、脱衣場がないので、作っておいてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろんですよ。確かに引き受けました。こちらをどうぞ。この辺りでとれる果実ジュースです。王女殿下達にも好評でしたよ」
あのあと、俺は先にみんなをお風呂からあがらせて最後に出た。そのため、のぼせてしまったのだ。
まあ、風呂の中での出来事でもかなり一杯一杯だったので、そうなっても仕方がない状況だったのだが。
今日のところはこれで帰路に就くことにした。夕食を用意しますと言ってくれたが、すでに宿に用意してあるからと言って丁重にお断りした。
宿に戻り、食事を取るとすぐに布団に入った。
久しぶりにかなり体も魔法も使ったので、もうくたくただった。
クリスティアナ様もフェオもエクスも疲れているようであり、俺がベッドに行くとすぐに隣に滑り込んでスースーと寝息を立てた。
眠たかったのならば、俺を待たずに先に寝てくれて良かったのに。でもすぐに眠りについてくれたお陰で、俺も変な意識をせずに眠ることができそうだ。
一緒にいる時間も、もうかなりのものになっているので平気かと思っていたら、そんなことはなかった。
きっと正式な婚姻関係を結んで、やることをやるまでは、こんな距離感が続くのだろう。それはそれで悪くはないな。
エクスにはそろそろ人体の神秘について話さなければならないだろう。でないと、いつか本当にやらかしそうで怖い。でもどうやって教えればいいんだろう。クリスティアナ様に頼んだらさすがにまずいかな。ここは真面目さに定評のあるピーちゃんに頼むべきだろう。ピーちゃん、君に決めた。そうして俺は安心して眠りについた。
明けて翌朝。
「おはようございます、クリスティアナ様。朝食の準備は整ってますよ」
「おはようございます、シリウス様。お早いのですわね」
「ええ、先に今日の計画を立てておこうと思いましてね。今日はあの村に井戸を作ろうと思っていますよ。同時に水を流す水路も作らないといけないですから、どの場所に水路を設置するかも決めておかないといけないですからね」
「ずいぶんと熱心ですわね」
クスクスと楽しそうに笑うクリスティアナ様。可愛らしいその様子にほっこりした。
「そうかも知れませんね。何だか自分の村を作っているような気がして、放って置けないのですよね。領主の息子だからでしょうか?」
「ウフフ、きっと、シリウス様がお優しいからですわ。領主の息子だとしても、問題のあるその場所まで行く人は、きっとそんなに多くはいませんよ。普通は部下に指示を出して終わり、でしょう?」
「そうかも知れませんね。だとすると、領主の息子失格ですかね?」
「そんなことありませんわ。これからそれをできるようになればいいのです。そのための勉強だと、私は思いますわ。だから今はやりたいことを色々とやってみて、経験を積んでおくべきだと思いますわ。それに私も隣にいますわ。もっと頼って下さいませ」
ずいぶんとしっかりしてるな、クリスティアナ様は。王族としてちゃんと勉強しているのだろう。
それに比べて俺の方はと言うと、未だに前世の庶民感覚を引きずっている。
今回もそうだ。それなりに命令できるようにはなっているが、まだまだなのだろう。だが、俺の足りない部分はクリスティアナ様が補ってくれる。俺はこの日、そう確信が持てた。
二人して見つめ合い、隣り合って肩を寄せた。潤んだ目に、プルプルの唇がすぐそこにあった。
これはチャンスなのでは?
そっと顔を寄せると、クリスティアナ様が目を瞑った。もうちょっとでー。
「ちょっと二人とも! 朝っぱらから何キスしようとしてるのよ! クリピー、抜け駆けはしないって決めてたでしょう!?」
実にいいタイミングでフェオがやってきた。まるで計ったかのように。さては見ていたな、フェオ!
「フェオ君?」
「なによぅ。あたしだって我慢しようとは思ったのよ? でも、我慢できなかったのよ」
内心では申し訳ないと思っているのか、フェオがしょんぼりとしてしまった。う、何だかものすごい庇護欲がそそられる。そして罪悪感を抱いてしまった。
「別に怒ってはいないよ、フェオ。それで、その取り決めはどんな風になっているのかい?」
「みんなに内緒でやらないこと」
「・・・」
沈黙するクリスティアナ様。申し訳ないと思っているみたいだ。
どうやら他のメンバーに許可をもらう制度になっているようである。それってかなりやり難いのではないだろうか。
「それだと、せっかくのムードが台無しにならない? いつやるか何て分からないしさ。あとで申告するようにしたらどう?」
「それだと言わないかも知れないじゃない。あたしだけ回数が少ないとか、やだもん」
頬を膨らませ、口を尖らせるフェオ。要するに平等に愛して欲しいというわけだな。よしよし。
「分かったよ、フェオ。それじゃあ今からクリスティアナ様とキスするから、その次はフェオの番だからね」
「ふぇっ!?」
「ふぇっ!?」
二人が同じような声を上げた。ここで流されてお預けにはしないぞ。クリスティアナ様もここでお預けにされたらさすがにがっかりするだろう。多分。
「あ、あの、シリウスさ・・・んっ」
ムードもへったくれもなかったが、何とかクリスティアナ様の唇をいただくことには成功した。
クリスティアナ様は潤んだ目をしていたが、特に不満を言ってくることはなかった。どちらかと言えば恍惚とした表情に見える。
「じゃあ次はフェオだね」
「し、シリウス! ムード! ムードってものが・・・んんっ」
フェオの顔が小さいからやり難い。どこが唇なのかさっぱり分からない。ちょっと大きくなってもらわないと難しいようだ。
「フェオ、俺達くらいの大きさになれな・・・フェオ? 大丈夫か!?」
俺が手を離すとフェオはパタリとテーブルの上に倒れた。
「だ、大丈夫れす・・・」
全然大丈夫じゃなさそうだが、本人がそういうのなら大丈夫なのだろう。フェオには刺激が強すぎたか? 腰が砕けたようになっている。
クリスティアナ様は慌ててフェオを抱き上げた。
「ちょっとフェオ! しっかりして下さいませ!」
ぺちぺちと叩いているが、再起動しそうになかった。
「えへへ~」
顔が完全にとろけている。これはもうダメかも分からんね。
そうこうしていると、ようやく起きて来たエクスが異変に気がついた。
「何? 何かあったの?」
頬に指を当てて首を傾げている。そうだ、抜け駆けがダメなら、エクスも同じように愛してあげないといけないな。あとで軋轢ができたら嫌だからね。
「エクス~、ちょっとおいで~」
「何? マスター、変?」
「シリウス様!? エクスにはまだ早いのではないですか?」
「でもフェオはみんな平等にって言ってたし」
「そ、それはそうですが・・・」
エクスはまだ人間歴が短い。多分そこを心配したのだろうが、この短期間にもエクスは人として十分に成長している。こういうことも教えておかなければ偏った考えの人間になってしまうかも知れない。
エクスは自分が何をされるのか分からず、キョトンとしてこちらを見つめている。エクスの白い肩をそっと支えた。
「ん、んんっ!?」
そのとき、エクスの目がカッと一瞬見開かれた。クリスティアナ様もフェオも目を瞑っていたが、エクスは目を開けたままだったので、何が起こったのかはしっかり見えていただろう。
驚きの表情をしていたが、やはり拒絶されることはなく、受け入れてくれた。
「マスター」
「ん? 何だいエクス?」
「子供、できた?」
「い、いや、今のじゃ無理なんじゃないかな~?」
「じゃあ、もう一回、して?」
首を傾げておねだりしてきたエクス。何だかエクスの開けてはいけない扉を開けてしまったような気がする。
「ちょっとエクス! 抜け駆けはダメだって言ったでしょう!」
フェオがすぐに噛みついてきた。
ワーワーと騒がしくなる食堂。それを横目に俺はみんなの朝食の準備を始めた。
【朝から一体何の騒ぎですか?】
【おはようございます、我が勇者】
「クロ、勇者呼びはやめてよね。シリウスって呼んでよね」
【滅相もない! 使い魔ごときが主の名を呼ぶことなど許されることではありません!】
妙なところで律儀だな。ならせめて主呼びにしてくれと頼んでおいた。
そしてこのどさくさに紛れて、三人に朝からキスした件に関しては、ピーちゃんから隠し通すことができた。ピーちゃんにバレたら全然に怒られる。
「大丈夫です、少しのぼせただけです。温泉自体はとても良いものでしたよ。あとから皆さんで入って下さい。ああ、脱衣場がないので、作っておいてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろんですよ。確かに引き受けました。こちらをどうぞ。この辺りでとれる果実ジュースです。王女殿下達にも好評でしたよ」
あのあと、俺は先にみんなをお風呂からあがらせて最後に出た。そのため、のぼせてしまったのだ。
まあ、風呂の中での出来事でもかなり一杯一杯だったので、そうなっても仕方がない状況だったのだが。
今日のところはこれで帰路に就くことにした。夕食を用意しますと言ってくれたが、すでに宿に用意してあるからと言って丁重にお断りした。
宿に戻り、食事を取るとすぐに布団に入った。
久しぶりにかなり体も魔法も使ったので、もうくたくただった。
クリスティアナ様もフェオもエクスも疲れているようであり、俺がベッドに行くとすぐに隣に滑り込んでスースーと寝息を立てた。
眠たかったのならば、俺を待たずに先に寝てくれて良かったのに。でもすぐに眠りについてくれたお陰で、俺も変な意識をせずに眠ることができそうだ。
一緒にいる時間も、もうかなりのものになっているので平気かと思っていたら、そんなことはなかった。
きっと正式な婚姻関係を結んで、やることをやるまでは、こんな距離感が続くのだろう。それはそれで悪くはないな。
エクスにはそろそろ人体の神秘について話さなければならないだろう。でないと、いつか本当にやらかしそうで怖い。でもどうやって教えればいいんだろう。クリスティアナ様に頼んだらさすがにまずいかな。ここは真面目さに定評のあるピーちゃんに頼むべきだろう。ピーちゃん、君に決めた。そうして俺は安心して眠りについた。
明けて翌朝。
「おはようございます、クリスティアナ様。朝食の準備は整ってますよ」
「おはようございます、シリウス様。お早いのですわね」
「ええ、先に今日の計画を立てておこうと思いましてね。今日はあの村に井戸を作ろうと思っていますよ。同時に水を流す水路も作らないといけないですから、どの場所に水路を設置するかも決めておかないといけないですからね」
「ずいぶんと熱心ですわね」
クスクスと楽しそうに笑うクリスティアナ様。可愛らしいその様子にほっこりした。
「そうかも知れませんね。何だか自分の村を作っているような気がして、放って置けないのですよね。領主の息子だからでしょうか?」
「ウフフ、きっと、シリウス様がお優しいからですわ。領主の息子だとしても、問題のあるその場所まで行く人は、きっとそんなに多くはいませんよ。普通は部下に指示を出して終わり、でしょう?」
「そうかも知れませんね。だとすると、領主の息子失格ですかね?」
「そんなことありませんわ。これからそれをできるようになればいいのです。そのための勉強だと、私は思いますわ。だから今はやりたいことを色々とやってみて、経験を積んでおくべきだと思いますわ。それに私も隣にいますわ。もっと頼って下さいませ」
ずいぶんとしっかりしてるな、クリスティアナ様は。王族としてちゃんと勉強しているのだろう。
それに比べて俺の方はと言うと、未だに前世の庶民感覚を引きずっている。
今回もそうだ。それなりに命令できるようにはなっているが、まだまだなのだろう。だが、俺の足りない部分はクリスティアナ様が補ってくれる。俺はこの日、そう確信が持てた。
二人して見つめ合い、隣り合って肩を寄せた。潤んだ目に、プルプルの唇がすぐそこにあった。
これはチャンスなのでは?
そっと顔を寄せると、クリスティアナ様が目を瞑った。もうちょっとでー。
「ちょっと二人とも! 朝っぱらから何キスしようとしてるのよ! クリピー、抜け駆けはしないって決めてたでしょう!?」
実にいいタイミングでフェオがやってきた。まるで計ったかのように。さては見ていたな、フェオ!
「フェオ君?」
「なによぅ。あたしだって我慢しようとは思ったのよ? でも、我慢できなかったのよ」
内心では申し訳ないと思っているのか、フェオがしょんぼりとしてしまった。う、何だかものすごい庇護欲がそそられる。そして罪悪感を抱いてしまった。
「別に怒ってはいないよ、フェオ。それで、その取り決めはどんな風になっているのかい?」
「みんなに内緒でやらないこと」
「・・・」
沈黙するクリスティアナ様。申し訳ないと思っているみたいだ。
どうやら他のメンバーに許可をもらう制度になっているようである。それってかなりやり難いのではないだろうか。
「それだと、せっかくのムードが台無しにならない? いつやるか何て分からないしさ。あとで申告するようにしたらどう?」
「それだと言わないかも知れないじゃない。あたしだけ回数が少ないとか、やだもん」
頬を膨らませ、口を尖らせるフェオ。要するに平等に愛して欲しいというわけだな。よしよし。
「分かったよ、フェオ。それじゃあ今からクリスティアナ様とキスするから、その次はフェオの番だからね」
「ふぇっ!?」
「ふぇっ!?」
二人が同じような声を上げた。ここで流されてお預けにはしないぞ。クリスティアナ様もここでお預けにされたらさすがにがっかりするだろう。多分。
「あ、あの、シリウスさ・・・んっ」
ムードもへったくれもなかったが、何とかクリスティアナ様の唇をいただくことには成功した。
クリスティアナ様は潤んだ目をしていたが、特に不満を言ってくることはなかった。どちらかと言えば恍惚とした表情に見える。
「じゃあ次はフェオだね」
「し、シリウス! ムード! ムードってものが・・・んんっ」
フェオの顔が小さいからやり難い。どこが唇なのかさっぱり分からない。ちょっと大きくなってもらわないと難しいようだ。
「フェオ、俺達くらいの大きさになれな・・・フェオ? 大丈夫か!?」
俺が手を離すとフェオはパタリとテーブルの上に倒れた。
「だ、大丈夫れす・・・」
全然大丈夫じゃなさそうだが、本人がそういうのなら大丈夫なのだろう。フェオには刺激が強すぎたか? 腰が砕けたようになっている。
クリスティアナ様は慌ててフェオを抱き上げた。
「ちょっとフェオ! しっかりして下さいませ!」
ぺちぺちと叩いているが、再起動しそうになかった。
「えへへ~」
顔が完全にとろけている。これはもうダメかも分からんね。
そうこうしていると、ようやく起きて来たエクスが異変に気がついた。
「何? 何かあったの?」
頬に指を当てて首を傾げている。そうだ、抜け駆けがダメなら、エクスも同じように愛してあげないといけないな。あとで軋轢ができたら嫌だからね。
「エクス~、ちょっとおいで~」
「何? マスター、変?」
「シリウス様!? エクスにはまだ早いのではないですか?」
「でもフェオはみんな平等にって言ってたし」
「そ、それはそうですが・・・」
エクスはまだ人間歴が短い。多分そこを心配したのだろうが、この短期間にもエクスは人として十分に成長している。こういうことも教えておかなければ偏った考えの人間になってしまうかも知れない。
エクスは自分が何をされるのか分からず、キョトンとしてこちらを見つめている。エクスの白い肩をそっと支えた。
「ん、んんっ!?」
そのとき、エクスの目がカッと一瞬見開かれた。クリスティアナ様もフェオも目を瞑っていたが、エクスは目を開けたままだったので、何が起こったのかはしっかり見えていただろう。
驚きの表情をしていたが、やはり拒絶されることはなく、受け入れてくれた。
「マスター」
「ん? 何だいエクス?」
「子供、できた?」
「い、いや、今のじゃ無理なんじゃないかな~?」
「じゃあ、もう一回、して?」
首を傾げておねだりしてきたエクス。何だかエクスの開けてはいけない扉を開けてしまったような気がする。
「ちょっとエクス! 抜け駆けはダメだって言ったでしょう!」
フェオがすぐに噛みついてきた。
ワーワーと騒がしくなる食堂。それを横目に俺はみんなの朝食の準備を始めた。
【朝から一体何の騒ぎですか?】
【おはようございます、我が勇者】
「クロ、勇者呼びはやめてよね。シリウスって呼んでよね」
【滅相もない! 使い魔ごときが主の名を呼ぶことなど許されることではありません!】
妙なところで律儀だな。ならせめて主呼びにしてくれと頼んでおいた。
そしてこのどさくさに紛れて、三人に朝からキスした件に関しては、ピーちゃんから隠し通すことができた。ピーちゃんにバレたら全然に怒られる。
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