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挽回の秘策
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これでゲーム内に登場するキャラクターの確認ができた。それでこれからの私の動きについてだが……答えはすでに出ている。
悪役令嬢として彼らに嫌われれば良いのだ。
正直言って、現段階ではヒロインがどのキャラクターを攻略するつもりなのかは分からない。それにすべての攻略対象から愛される逆ハーレムエンドもあるのだ。
そのため、もれなく全員から嫌われておく必要があるのだ。
ゲーム内やスピンオフでも、イザベラは節操なく若いツバメたちにツバを付けていた。そしてその度に好感度が下がっていた。
そのことを考えると、ゲームの悪役令嬢である私には「話しかけるだけで相手の好感度が下がる」というチート能力を持っているはずである。
兄のルークについては、おそらく「お母様生存」というイレギュラーが発生してしまったためバグってしまっているのだ。だが、他の攻略対象者たちは大丈夫だろう。多分。
そんなわけで、私は攻略対象と出会う度に声をかけまくる必要があるのだ。そしてガンガン嫌われておく必要があるのだ。やってやろうじゃん。
ランドール公爵家でやらかしてしまった分、ここで挽回しておかなければならないのだ。
そんな決意を新たにしていると、待ちに待ったその日がやって来た。
それは魔法の素養を見極めるという大変重要な儀式であった。この日を境に、八歳の年齢に達した子供は魔法を教えてもらえるようになるのだ。
長かったぞ。家族が私の目から魔法の本を隠すようになってからのこの八年間。どれだけ私がこの日を待ち焦がれたことか。これで堂々と魔法を使うことができるようになるのだ。
こうして私はウキウキしながらその日を迎えたのであった。何度部屋で両手を掲げてガッツポーズを取ったことか。そのたびに使用人に不審な目で見られたが、そんなことはお構いなしだ。
私の魔法の儀式はお城で執り行われることになっていた。高位貴族たちはその権力をアピールするために、こぞって自分の子供をお城に送り込み、魔法の儀式を行わせるのだ。
公爵家である我が家もその例に漏れることはない。そして私には魔法の儀式の他にも大事なイベントがあるのだ。
この日私は、豆腐メンタル王子のフィリップと初めて会うことになるのだ。
その魔法の儀式の中で、私は王子に「これでもか」とまとわりついて好感度をあっという間にマイナスにするつもりである。一度下げ切ってしまえば、学園に入るまで二度と会わなくても大丈夫だろう。
王族に会うだなんて、考えただけでも肩が凝りそうだわ。それでなくても、王子を除いたあと二人の攻略対象と、お城の中で接点を作らなくてはいけないわけだし。大変だわ。
「うれしそうだね。やっぱり魔法が使えるようになるのがうれしいのかい?」
馬車の中でルークが聞いてきた。ただいまお城へ移動中である。
やはり、と言うべきか。「付いてこなくてもいい」と断ったのにルークは付いてきた。馬車の中には私とお母様、それにルークとフランツがいる。お父様の職場はお城だし、私の儀式の時間になれば、私とお母様を溺愛するお父様ならきっと現れるはず。
つまりは、ランドール公爵家がお城に勢ぞろいすることになるのだ。これはかなり注目が集まりそうな気がする。
ひょっとしたら、お父様とお母様が私を国王陛下に売り込むかも知れない。そうなれば、王子と言葉を交わす時間がたくさん取れるだろう。これは好感度を下げるチャンス。
「それもありますが、フィリップ王子に会えるのではないかと楽しみにしておりますわ」
「な、なんだってー!!」
ルークが絶望に満ちた声をあげた。どうしたのかしら? 私がフィリップ王子に会うことがそんなに驚くべきことなのかしら? それとも別に何か理由が……。
「ルーク、そのように大きな声を出すものではありませんよ」
「し、しかしお母様、イザベラが僕以外の男の名前を……」
知らんがな。これを期に、ぜひシスコンから卒業してもらいたいものである。フランツも残念な生徒を見るような目でルークを見ていた。
フランツはルークに魔法を教えており師弟関係にあるのだ。自分の教え子が残念な性格であることに心を痛めている節がある。
でも何でだろう。全然フランツがかわいそうに思えない。だって私が魔法を使ったことを暴いたのはフランツだし、私に魔法を教えないように徹底的に対策を採ってきたのもフランツだ。
私にとっては敵よ、敵! いい気味だわ。そのままハゲろ!
ちなみに余談だが、ルークとフランツが魔法の勉強をしている間は、私とお母様はお茶をする時間になっていた。別名、マナー講習。
そこにも「イザベラには魔法を教えないぞ」という確たる意志が見えていた。何でじゃい。
そんな風に思いながらフランツをギロリと見ていると、私がにらんでいることに気がついたらしい。おもむろに口を開いた。
「この日が無事にやってきてくれて、本当にホッとしてますよ」
「フランツにはいつも苦労をかけさせてしまったわね」
お母様が眉をハの字に下げて済まなそうに言った。何でだ。魔法を覚えることができなくて苦労したのは私の方なのに。
「いえいえ、とんでもございません。無事にイザベラお嬢様がここまで育ってくれただけでも、頑張ったかいがありましたよ」
「頑張ったって……フランツはいつも私に何かをしていたの?」
うーん、特に何かされていた様子はなかったんだけどな。一体何の話かしら?
悪役令嬢として彼らに嫌われれば良いのだ。
正直言って、現段階ではヒロインがどのキャラクターを攻略するつもりなのかは分からない。それにすべての攻略対象から愛される逆ハーレムエンドもあるのだ。
そのため、もれなく全員から嫌われておく必要があるのだ。
ゲーム内やスピンオフでも、イザベラは節操なく若いツバメたちにツバを付けていた。そしてその度に好感度が下がっていた。
そのことを考えると、ゲームの悪役令嬢である私には「話しかけるだけで相手の好感度が下がる」というチート能力を持っているはずである。
兄のルークについては、おそらく「お母様生存」というイレギュラーが発生してしまったためバグってしまっているのだ。だが、他の攻略対象者たちは大丈夫だろう。多分。
そんなわけで、私は攻略対象と出会う度に声をかけまくる必要があるのだ。そしてガンガン嫌われておく必要があるのだ。やってやろうじゃん。
ランドール公爵家でやらかしてしまった分、ここで挽回しておかなければならないのだ。
そんな決意を新たにしていると、待ちに待ったその日がやって来た。
それは魔法の素養を見極めるという大変重要な儀式であった。この日を境に、八歳の年齢に達した子供は魔法を教えてもらえるようになるのだ。
長かったぞ。家族が私の目から魔法の本を隠すようになってからのこの八年間。どれだけ私がこの日を待ち焦がれたことか。これで堂々と魔法を使うことができるようになるのだ。
こうして私はウキウキしながらその日を迎えたのであった。何度部屋で両手を掲げてガッツポーズを取ったことか。そのたびに使用人に不審な目で見られたが、そんなことはお構いなしだ。
私の魔法の儀式はお城で執り行われることになっていた。高位貴族たちはその権力をアピールするために、こぞって自分の子供をお城に送り込み、魔法の儀式を行わせるのだ。
公爵家である我が家もその例に漏れることはない。そして私には魔法の儀式の他にも大事なイベントがあるのだ。
この日私は、豆腐メンタル王子のフィリップと初めて会うことになるのだ。
その魔法の儀式の中で、私は王子に「これでもか」とまとわりついて好感度をあっという間にマイナスにするつもりである。一度下げ切ってしまえば、学園に入るまで二度と会わなくても大丈夫だろう。
王族に会うだなんて、考えただけでも肩が凝りそうだわ。それでなくても、王子を除いたあと二人の攻略対象と、お城の中で接点を作らなくてはいけないわけだし。大変だわ。
「うれしそうだね。やっぱり魔法が使えるようになるのがうれしいのかい?」
馬車の中でルークが聞いてきた。ただいまお城へ移動中である。
やはり、と言うべきか。「付いてこなくてもいい」と断ったのにルークは付いてきた。馬車の中には私とお母様、それにルークとフランツがいる。お父様の職場はお城だし、私の儀式の時間になれば、私とお母様を溺愛するお父様ならきっと現れるはず。
つまりは、ランドール公爵家がお城に勢ぞろいすることになるのだ。これはかなり注目が集まりそうな気がする。
ひょっとしたら、お父様とお母様が私を国王陛下に売り込むかも知れない。そうなれば、王子と言葉を交わす時間がたくさん取れるだろう。これは好感度を下げるチャンス。
「それもありますが、フィリップ王子に会えるのではないかと楽しみにしておりますわ」
「な、なんだってー!!」
ルークが絶望に満ちた声をあげた。どうしたのかしら? 私がフィリップ王子に会うことがそんなに驚くべきことなのかしら? それとも別に何か理由が……。
「ルーク、そのように大きな声を出すものではありませんよ」
「し、しかしお母様、イザベラが僕以外の男の名前を……」
知らんがな。これを期に、ぜひシスコンから卒業してもらいたいものである。フランツも残念な生徒を見るような目でルークを見ていた。
フランツはルークに魔法を教えており師弟関係にあるのだ。自分の教え子が残念な性格であることに心を痛めている節がある。
でも何でだろう。全然フランツがかわいそうに思えない。だって私が魔法を使ったことを暴いたのはフランツだし、私に魔法を教えないように徹底的に対策を採ってきたのもフランツだ。
私にとっては敵よ、敵! いい気味だわ。そのままハゲろ!
ちなみに余談だが、ルークとフランツが魔法の勉強をしている間は、私とお母様はお茶をする時間になっていた。別名、マナー講習。
そこにも「イザベラには魔法を教えないぞ」という確たる意志が見えていた。何でじゃい。
そんな風に思いながらフランツをギロリと見ていると、私がにらんでいることに気がついたらしい。おもむろに口を開いた。
「この日が無事にやってきてくれて、本当にホッとしてますよ」
「フランツにはいつも苦労をかけさせてしまったわね」
お母様が眉をハの字に下げて済まなそうに言った。何でだ。魔法を覚えることができなくて苦労したのは私の方なのに。
「いえいえ、とんでもございません。無事にイザベラお嬢様がここまで育ってくれただけでも、頑張ったかいがありましたよ」
「頑張ったって……フランツはいつも私に何かをしていたの?」
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