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豆腐メンタルの王子様
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お父様に連れられてお城の中へと入った。
今までお城は遠くからしか見たことがなかった。そのため、お城の外観をもっと近くから見たかったのだが、それはかなわなかった。
きっとその雄大な姿に驚くことになったんだろうけどな。残念。
どうやら魔法の儀式が始まるまでにはそれほど間がないようである。すでに集まっていた他の貴族たちをみると、何だかずいぶんと待たされているような感じの人もいたが、そこはさすがの公爵家。ほとんど待ち時間がないように調整されているらしい。さす公。
待合室でゆっくりする暇もなく、魔法の儀式が行われることになっている大聖堂に到着した。
教会は王都の街中にも立派なものがあるのだが、お城の中にも、それに負けないほどの立派な大聖堂があった。このことからも分かるように、この国では宗教と政治が一体となって運営されているのだ。
大聖堂には私と同じ年齢と思われる子供たちが何人かいるようである。この日は王子も儀式を受ける日なので、貴族の子供たちの中でも精鋭がそろっていることだろう。
その中でも私は、王子の婚約者として最有力候補のはずである。
大聖堂の中心には大きな優勝カップが置かれている。もちろん本当に優勝カップなわけではない。前世の知識によると、この黄金色のカップに魔力を流し込むとその中に水がたまるようになっている。
その、どこから現れたか分からない水の量が、その人が持つ魔力の総量を示しているのだ。そしてその水の色が得意な属性を表している。
つまり、水の量が多いほど、魔術師として優れているということになるのだ。
フランツのように魔眼を持っている人は少ないのだろう。だからこそ、こうして儀式を行って、その人の魔力量や得意な属性の確認をするようになっているのだ。
指定された席に着いてソワソワとしていると、私たちが入って来た大扉とは別の小さな扉、それも豪華な装飾が施された扉から王族たちが入場してきた。
その場にいた全員が席を立ったため、私もそれに従う。
王族専用の席に王族たちが座ると、遅れて私たちも座った。
司会進行役の神父が儀式におけるテンプレートを長々と話し終えたところで、ようやく魔法の儀式が始まった。
まずは王子のフィリップからである。どうやらこの儀式は身分が高い順に進むらしい。それもそうか。他の人が終わるまで、王族が待っているはずはないか。トップ貴族の公爵もまたしかり。自分の番が終われば「即解散」となるだろう。
名前を呼ばれた豆腐メンタルの王子様がおどおどとした動きで優勝カップに近づいた。
うーん、知ってはいたが、何だかとっても情けないぞ。これはこれでかわいそうだ。
さすがにざわつくことはなかったが、微妙な空気が漂っているのが分かった。その姿を見てガッカリしているご令嬢も、失神して倒れたご令嬢……はいないようである。これはあらかじめ、みんな知っているのかな?
そうしてようやく優勝カップにたどり着いたフィリップ王子は、おもむろにそのカップに手を当てた。そして、黄金色のカップがわずかに光ったような気がした。
あとには不気味なまでの静寂がその場を包み込んでいた。
私は結果を知っている。カップの中にはほんのちょっぴりだけ、水がたまっているのだ。
そう、フィリップ王子の魔力は少ないのだ。
だがそんなフィリップ王子にも、ちゃんと他の人よりも優れているところもあるのだ。おそらく今は、私だけが知っている。
王族たちの席からはため息のようなものが聞こえた。
うーん、これ以上は見ていられないわ。大の大人がそんな態度でどうするのよ。持って生まれた才能はどうにもならないのよ。与えられたカードでどう戦うかを教えるべきではないのかしら?
私はお母様が止めるよりも早くカップに近づいた。そして、カップの中にたまっている、ほんの少しの水を見て、茫然自失の涙目になっているフィリップ王子の隣に立った。
「まあ! 見て下さい! 黄色の水の中に、キラキラした宝石のようなものが輝いていますわ!」
そう。それこそがフィリップ王子の優れた性質である。魔力量は確かに少ない。しかし、フィリップ王子が持っている属性は上位属性。選ばれし者だけが持つことができる、土属性の上位版、黄金属性なのだ。
その瞬間、静かだった大聖堂が急に色めき出した。フィリップ王子もそのキラキラしたものに気がついたようであり、目を大きく見開いてそれを見ている。
「こ、これはまさか。お、黄金属性ですぞ。フィリップ王子は黄金属性をお持ちです!」
進行役の神父が叫んだ。
こうして魔法の儀式は一時中断となったのだった。フィリップ王子を囲んでワッショイワッショイな状態になっているのを、元いた席に素早く戻って見ていた。
私の隣ではお母様が笑顔でこちらを見ていた。
「イザベラ、良く気がつきましたわね。これでフィリップ王子も少しは心が穏やかになるはずよ。あなたは知らないでしょうが、フィリップ王子はね……ちょっと自信をなくしていたのよ」
よく知っている話だが、知らない振りをしていた方がいいだろう。私は初めて聞きました風を装った。
「そうだったのですね。知りませんでしたわ。でも、フランツなら、フィリップ王子が黄金属性であることが分かっていたのではないですか?」
知っているなら早く教えてあげれば良かったのに。そうしたら、もっと堂々とした態度でこの儀式に臨むことができたはずよ。
もしかして、フランツは王家に何か恨みでもあるのかしら? そういえば魔眼なんてレアなものを持っているのに公爵家に使えているだなんて、良く考えてみたらおかしいわ。
今までお城は遠くからしか見たことがなかった。そのため、お城の外観をもっと近くから見たかったのだが、それはかなわなかった。
きっとその雄大な姿に驚くことになったんだろうけどな。残念。
どうやら魔法の儀式が始まるまでにはそれほど間がないようである。すでに集まっていた他の貴族たちをみると、何だかずいぶんと待たされているような感じの人もいたが、そこはさすがの公爵家。ほとんど待ち時間がないように調整されているらしい。さす公。
待合室でゆっくりする暇もなく、魔法の儀式が行われることになっている大聖堂に到着した。
教会は王都の街中にも立派なものがあるのだが、お城の中にも、それに負けないほどの立派な大聖堂があった。このことからも分かるように、この国では宗教と政治が一体となって運営されているのだ。
大聖堂には私と同じ年齢と思われる子供たちが何人かいるようである。この日は王子も儀式を受ける日なので、貴族の子供たちの中でも精鋭がそろっていることだろう。
その中でも私は、王子の婚約者として最有力候補のはずである。
大聖堂の中心には大きな優勝カップが置かれている。もちろん本当に優勝カップなわけではない。前世の知識によると、この黄金色のカップに魔力を流し込むとその中に水がたまるようになっている。
その、どこから現れたか分からない水の量が、その人が持つ魔力の総量を示しているのだ。そしてその水の色が得意な属性を表している。
つまり、水の量が多いほど、魔術師として優れているということになるのだ。
フランツのように魔眼を持っている人は少ないのだろう。だからこそ、こうして儀式を行って、その人の魔力量や得意な属性の確認をするようになっているのだ。
指定された席に着いてソワソワとしていると、私たちが入って来た大扉とは別の小さな扉、それも豪華な装飾が施された扉から王族たちが入場してきた。
その場にいた全員が席を立ったため、私もそれに従う。
王族専用の席に王族たちが座ると、遅れて私たちも座った。
司会進行役の神父が儀式におけるテンプレートを長々と話し終えたところで、ようやく魔法の儀式が始まった。
まずは王子のフィリップからである。どうやらこの儀式は身分が高い順に進むらしい。それもそうか。他の人が終わるまで、王族が待っているはずはないか。トップ貴族の公爵もまたしかり。自分の番が終われば「即解散」となるだろう。
名前を呼ばれた豆腐メンタルの王子様がおどおどとした動きで優勝カップに近づいた。
うーん、知ってはいたが、何だかとっても情けないぞ。これはこれでかわいそうだ。
さすがにざわつくことはなかったが、微妙な空気が漂っているのが分かった。その姿を見てガッカリしているご令嬢も、失神して倒れたご令嬢……はいないようである。これはあらかじめ、みんな知っているのかな?
そうしてようやく優勝カップにたどり着いたフィリップ王子は、おもむろにそのカップに手を当てた。そして、黄金色のカップがわずかに光ったような気がした。
あとには不気味なまでの静寂がその場を包み込んでいた。
私は結果を知っている。カップの中にはほんのちょっぴりだけ、水がたまっているのだ。
そう、フィリップ王子の魔力は少ないのだ。
だがそんなフィリップ王子にも、ちゃんと他の人よりも優れているところもあるのだ。おそらく今は、私だけが知っている。
王族たちの席からはため息のようなものが聞こえた。
うーん、これ以上は見ていられないわ。大の大人がそんな態度でどうするのよ。持って生まれた才能はどうにもならないのよ。与えられたカードでどう戦うかを教えるべきではないのかしら?
私はお母様が止めるよりも早くカップに近づいた。そして、カップの中にたまっている、ほんの少しの水を見て、茫然自失の涙目になっているフィリップ王子の隣に立った。
「まあ! 見て下さい! 黄色の水の中に、キラキラした宝石のようなものが輝いていますわ!」
そう。それこそがフィリップ王子の優れた性質である。魔力量は確かに少ない。しかし、フィリップ王子が持っている属性は上位属性。選ばれし者だけが持つことができる、土属性の上位版、黄金属性なのだ。
その瞬間、静かだった大聖堂が急に色めき出した。フィリップ王子もそのキラキラしたものに気がついたようであり、目を大きく見開いてそれを見ている。
「こ、これはまさか。お、黄金属性ですぞ。フィリップ王子は黄金属性をお持ちです!」
進行役の神父が叫んだ。
こうして魔法の儀式は一時中断となったのだった。フィリップ王子を囲んでワッショイワッショイな状態になっているのを、元いた席に素早く戻って見ていた。
私の隣ではお母様が笑顔でこちらを見ていた。
「イザベラ、良く気がつきましたわね。これでフィリップ王子も少しは心が穏やかになるはずよ。あなたは知らないでしょうが、フィリップ王子はね……ちょっと自信をなくしていたのよ」
よく知っている話だが、知らない振りをしていた方がいいだろう。私は初めて聞きました風を装った。
「そうだったのですね。知りませんでしたわ。でも、フランツなら、フィリップ王子が黄金属性であることが分かっていたのではないですか?」
知っているなら早く教えてあげれば良かったのに。そうしたら、もっと堂々とした態度でこの儀式に臨むことができたはずよ。
もしかして、フランツは王家に何か恨みでもあるのかしら? そういえば魔眼なんてレアなものを持っているのに公爵家に使えているだなんて、良く考えてみたらおかしいわ。
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