29 / 50
刺激的な朝
しおりを挟む
サッパリした表情で部屋に戻ると、風呂上がりの冷たい果実の飲み物をパメラが用意してくれていた。さすが気が利く俺の嫁。
「どうぞ、エル様」
「ありがとうパメラ。これを飲んだら、召喚魔法の勉強をしよう。寝るまでの間だけどね」
「はい。何としてでも使えるようになって見せますわ!」
両手に拳を作って力強くパメラが言った。一日で習得できなかったことに納得はしたものの、悔しさはそう簡単に無くならなかったようである。そんなパメラに応えるべく、教える方にも力が入った。
今日の訓練ではかなり魔力を消費したはずだ。明日にその疲れを持ち越さないように、昨日よりも早めに眠りについた。
昨日と同じく、今日も手をつないでベッドに入った。
明日の朝は今日のような失態はしないぞ。目を覚ませ、目を覚ますんだ。クワッと! と言うか、いつものようにシロが俺を起こしてくれればいいんじゃないのか? なんで起こしてくれないんだ。
「シロ、明日はしっかりと起こしてくれよ」
「え~、パメラに起こしてもらいなよ」
「エル様、心配は要りませんわ。私が責任を持って起こしますから。明日は早めに起きるおつもりですか?」
違う、そうじゃない。寝ぼけて何をやらかすか分からないから、何とかしたいのであって……。すぐ隣にあるパメラの顔の眉はキリリと引き締まり、完全に命令待ちの状態である。これは断れないな……。
「いや、今朝と同じ時間で構わないよ。朝早くから練習を開始しても、魔力には限りがあるからね。それよりもしっかりと寝て、体を休めた方がいい」
これはもうなるようにしかならないな。信じているぞ、俺。
その夜、俺はなかなか眠りにつくことができなかった。決してすぐ隣にパメラの顔があり、すうすうと寝息が耳にかかっていたからでも、隣から良い香りがしていたからでもない。
まぶたの向こうに、緩やかな風のような光が見える。もうちょっとこのまま……。柔らかい感触が頭の後ろにある。いつもの枕よりも暖かく心地良い枕だ。いつの間にこんな枕を買ったっけ? 手が何か柔らかいものを握っている。外で食べるまんじゅうよりも柔らかいし、何だかスベスベしている。
力を入れてギュッとつかむと、ひゃうん、という小さな悲鳴が聞こえた。
その瞬間、しっかりと目を見開いた。見上げると、熟れたリンゴよりも赤くなったパメラの顔がすぐそこにあった。どうやら膝枕をしてくれているようだ。そして……光の速さで今つかんでいるものから手を離した。あの感覚は、間違いなくおっぱい。しかも生乳だ。おとといはバスローブの下にスケスケのネグリジェを着ていたようだが、昨日は裸だったらしい。
あまりの出来事に、思考が炎の魔法で燃やし尽くされたかのようである。もごもごと口を動かした。しかし、なんて声をかけたらいいのか思いつかない。頭が真っ白になるって、こうなることを言うんだな。
「お、おはようございます、エル様。昨日はよく眠れましたか?」
「あ、ああ。パメラのお陰でよく眠ることができたよ」
パメラがうれしそうに目を見開き、両手を口元に当てた。
「うれしいですわ」
とろりととろけそうな顔をしたパメラを思わず抱きしめた。まずい、体が勝手に動いてしまった。俺は一体どうすればいいんだ。これが、正解なのか?
そんな俺の心配をよそにパメラは俺の背中に両手を回してきた。恥ずかしくなってきたのかパメラは俺の胸にしっかりと顔を埋めている。パメラが落ち着くまでしばらくそのままの状態で過ごした。
鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で朝食の準備をするパメラ。そこから少し離れた場所で、俺はシロに苦言を呈した。
「なんで起こさないんだよ」
「だって、パメラが自分が起こすって言い張るんだもん。でも、満更でもなかったでしょ?」
「お前は……」
二の句が継げなかった。俺はあのときの感触を思い出し、おなかの下がムズムズしてくるのを感じた。確かに気持ちよかったけど、無意識にやっていただけあって何だが罪悪感があるぞ。
「シロ、頼むからシロが起こしてくれ。朝から刺激が強すぎる」
「……ヘタレ」
「ヘタレでもなんでも構わないから頼む」
俺は頭を下げた。召喚獣に頭を下げるとか普通はしないのだが俺はやるぞ。自分の理性のために。
「分かったよ。善処はするよ」
「何を善処なさるのですか? シロちゃん」
朝食の準備を終えたパメラがプレートを運んできた。その上には美味しそうなハムと目玉焼きがホカホカと湯気を立ち上らせながら、どうだと言わんばかりに並んでいる。
「いや、何でもないんだ。いただきます。うん、予想通り、美味いな」
焼きたてのパンの上にのせて食べると絶品である。最近市場で売り出されるようになった、ほんのちょっぴり酸味の利いた、少し黄色がかった一風変わったドレッシングがそれによく合う。
満足そうにこちらを見ていたパメラも、俺をまねしてパンにのせて食べ始めた。
貴族が食べるにはちょっとどうかと思うほどの庶民的な料理なのだが、そのようなことは気にしていない様子である。ほほをほころばせながらかじりつくその様子は、森で見かけた、餌を頬張る小動物のようだった。
「どうぞ、エル様」
「ありがとうパメラ。これを飲んだら、召喚魔法の勉強をしよう。寝るまでの間だけどね」
「はい。何としてでも使えるようになって見せますわ!」
両手に拳を作って力強くパメラが言った。一日で習得できなかったことに納得はしたものの、悔しさはそう簡単に無くならなかったようである。そんなパメラに応えるべく、教える方にも力が入った。
今日の訓練ではかなり魔力を消費したはずだ。明日にその疲れを持ち越さないように、昨日よりも早めに眠りについた。
昨日と同じく、今日も手をつないでベッドに入った。
明日の朝は今日のような失態はしないぞ。目を覚ませ、目を覚ますんだ。クワッと! と言うか、いつものようにシロが俺を起こしてくれればいいんじゃないのか? なんで起こしてくれないんだ。
「シロ、明日はしっかりと起こしてくれよ」
「え~、パメラに起こしてもらいなよ」
「エル様、心配は要りませんわ。私が責任を持って起こしますから。明日は早めに起きるおつもりですか?」
違う、そうじゃない。寝ぼけて何をやらかすか分からないから、何とかしたいのであって……。すぐ隣にあるパメラの顔の眉はキリリと引き締まり、完全に命令待ちの状態である。これは断れないな……。
「いや、今朝と同じ時間で構わないよ。朝早くから練習を開始しても、魔力には限りがあるからね。それよりもしっかりと寝て、体を休めた方がいい」
これはもうなるようにしかならないな。信じているぞ、俺。
その夜、俺はなかなか眠りにつくことができなかった。決してすぐ隣にパメラの顔があり、すうすうと寝息が耳にかかっていたからでも、隣から良い香りがしていたからでもない。
まぶたの向こうに、緩やかな風のような光が見える。もうちょっとこのまま……。柔らかい感触が頭の後ろにある。いつもの枕よりも暖かく心地良い枕だ。いつの間にこんな枕を買ったっけ? 手が何か柔らかいものを握っている。外で食べるまんじゅうよりも柔らかいし、何だかスベスベしている。
力を入れてギュッとつかむと、ひゃうん、という小さな悲鳴が聞こえた。
その瞬間、しっかりと目を見開いた。見上げると、熟れたリンゴよりも赤くなったパメラの顔がすぐそこにあった。どうやら膝枕をしてくれているようだ。そして……光の速さで今つかんでいるものから手を離した。あの感覚は、間違いなくおっぱい。しかも生乳だ。おとといはバスローブの下にスケスケのネグリジェを着ていたようだが、昨日は裸だったらしい。
あまりの出来事に、思考が炎の魔法で燃やし尽くされたかのようである。もごもごと口を動かした。しかし、なんて声をかけたらいいのか思いつかない。頭が真っ白になるって、こうなることを言うんだな。
「お、おはようございます、エル様。昨日はよく眠れましたか?」
「あ、ああ。パメラのお陰でよく眠ることができたよ」
パメラがうれしそうに目を見開き、両手を口元に当てた。
「うれしいですわ」
とろりととろけそうな顔をしたパメラを思わず抱きしめた。まずい、体が勝手に動いてしまった。俺は一体どうすればいいんだ。これが、正解なのか?
そんな俺の心配をよそにパメラは俺の背中に両手を回してきた。恥ずかしくなってきたのかパメラは俺の胸にしっかりと顔を埋めている。パメラが落ち着くまでしばらくそのままの状態で過ごした。
鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で朝食の準備をするパメラ。そこから少し離れた場所で、俺はシロに苦言を呈した。
「なんで起こさないんだよ」
「だって、パメラが自分が起こすって言い張るんだもん。でも、満更でもなかったでしょ?」
「お前は……」
二の句が継げなかった。俺はあのときの感触を思い出し、おなかの下がムズムズしてくるのを感じた。確かに気持ちよかったけど、無意識にやっていただけあって何だが罪悪感があるぞ。
「シロ、頼むからシロが起こしてくれ。朝から刺激が強すぎる」
「……ヘタレ」
「ヘタレでもなんでも構わないから頼む」
俺は頭を下げた。召喚獣に頭を下げるとか普通はしないのだが俺はやるぞ。自分の理性のために。
「分かったよ。善処はするよ」
「何を善処なさるのですか? シロちゃん」
朝食の準備を終えたパメラがプレートを運んできた。その上には美味しそうなハムと目玉焼きがホカホカと湯気を立ち上らせながら、どうだと言わんばかりに並んでいる。
「いや、何でもないんだ。いただきます。うん、予想通り、美味いな」
焼きたてのパンの上にのせて食べると絶品である。最近市場で売り出されるようになった、ほんのちょっぴり酸味の利いた、少し黄色がかった一風変わったドレッシングがそれによく合う。
満足そうにこちらを見ていたパメラも、俺をまねしてパンにのせて食べ始めた。
貴族が食べるにはちょっとどうかと思うほどの庶民的な料理なのだが、そのようなことは気にしていない様子である。ほほをほころばせながらかじりつくその様子は、森で見かけた、餌を頬張る小動物のようだった。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる