奴隷の少女がどうやら伯爵令嬢みたいです

えながゆうき

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決意

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 食事が終われば後は風呂に入って寝るだけだ。パメラが使用人にお湯を頼もうとしたのですぐに止めた。

「パメラ、空間移動の魔法で家に戻って、そこで風呂に入ろう。その方がスッキリしていいだろう?」
「そうですわね。でも、エル様の魔力は大丈夫なのですか? 空間移動の魔法は魔力をかなり消費すると、魔法の本に書いてありましたわ」
「大丈夫、問題ない」

 そう言ってパメラの腰を引き寄せた。キャッと小さな声が漏れる。すぐにシロとオルトが近くに集まってきた。次の瞬間には見慣れた家の脱衣所に立っていた。

「便利ですわね。私も使えるようになりたかったですわ」

 残念そうに肩を落とすパメラ。小さな体がますます小さくなったように感じだ。どうにかしてあげたいところだが、こればかりは才能が必要だからね。使えなくても仕方がない。
 その可愛らしい柔らかいほっぺたをつつくと、湯船にお湯をそそいだ。その間にパメラが服を脱いでいた。気が早くないか? あっという間にパメラは下着一枚の姿になった。

 真っ黒な下着の下から、白い陶器のような滑らかな肌が見える。何というか、その下着、透け具合がすごくない!? ほぼ、見えてるんだけど!?
 思わず凝視してしまったが、何とか視線を引き剥がすことに成功した。胸部は先端の色味が分かるほど透けており、下半身はほんの少し、気持ち隠れてるかな? くらいのカバー範囲である。

「パメラ、そんな下着、持っていたっけ?」
「お母様が用意して下さったものですわ。エル様が喜ぶだろうって……お嫌でした?」
「いや、そんなことはないぞ」

 そんなわけあるかい! むしろ、グッときた。でも目のやり場に困る。しかしお母様が用意したって……パメラのこの積極性は母親譲りだったのか。良かった、パメラの個性じゃなくて。
 俺はお湯を入るのに集中しようと頑張っていたが、パメラが俺の腕をつかんだ。むにゅりと布一枚の感触が伝わってくる。これダメなやつ!

「パメラ?」
「……」

 無言でスリスリと顔をこすりつけてくるパメラ。どうしたんだ、一体。やけに甘えモードになっているな。ドラゴンの話題を出したのはまずかった? でも可能性が大いにありそうなんだよね。覚悟があるとないとでは大違いだからね。ちょっとくらい脅しておいた方が、何かあったときに動けるだろう。

「大丈夫だよ。前にも言ったけど、ドラゴンくらい余裕だから」
「……それでも、心配ですわ」

 うーん、もしかして、パメラって心配だと甘えてくるタイプなのかな? 安心させようと頭を撫でているのだが、もっともっとと頭をグイグイ手のひらにこすりつけてくる。その様子はまるで猫のようである。お尻とかたたいてあげたら喜ぶかな?

「ほら、お湯も沸いたし、風邪を引く前に先に入っていてくれ。俺は準備してくるからさ」

 シロとオルトにパメラを任せると、俺はバスローブを取りに行った。危ない、危ない。あのままだと空気に飲まれてパメラの下着を脱がすところだったわ。
 パメラの様子を警戒しながら戻ると、ちゃんと風呂に入っていてくれた。

 俺が風呂の中に入ると、「背中を流しますわ」と言ってパメラが湯船から出てきた。いつもは体にタオルを巻いているのだが、今日は巻いていない。そして、大事な部分を手で隠してもいない。その美しく、女神が降り立ったかの如き整った容姿に息が止まる。
 たわわに実った胸。スラリと伸び、ムダな肉を極限まで落とした四肢。艶やかな肌。

 羞恥に体を赤く染めたパメラが俺の後ろに座る。そして慣れた手つきで俺の背中を洗い始めた。俺は何とか下半身を抑え込もうと頑張ったが、先ほどの光景が衝撃的過ぎてうまくできないでいた。何あれ。母上を超える人物がこの世に存在するとは思わなかった。

 そのうち背中をむにむにと柔らかい感触がヌメヌメと這いだした。これは間違いなく生乳。だってタオルを巻いてなかったもん。下半身がにわかに騒ぎ出した。

「気持ちいいですか?」
「はい。ええと、パメラさん、だれにそれを教わったのかな?」
「お母様ですわ。こうするとお父様がとっても喜ぶって……」

 何を教えているんだ、お義母様は! 伯爵も妻になんてことをさせているんだ。悶々としたものを考えながらも、何とか体を洗い終わった。

「パメラ、先に湯船につかっておいてくれ」
「エル様は入らないのですか?」
「うん、ちょっと落ち着いてから入るよ」
「落ち着く?」

 わけが分からないとばかりにパメラが首をかしげた。そしてパメラの視線がシロに向いた。分かってるよね、シロ? シロにアイコンタクトを送る。

「それはね、ご主人様の男の面子が立ってるから動けないってことだよ」
「男の面子?」

 ますます困惑するパメラ。分かりにくい比喩なんじゃないかな、それ。というか、何で説明するんだ、シロ。
 ジロリとシロを睨み付けたところで合点がいったのか、パメラが「あ」と小さな声を上げた。視線をそらし、静かに湯船へと移動するパメラ。
 何だろうこの気まずい空気。しかもこのしゃがんだ状態の角度だと、湯船に入るときのパメラの股下部分が丸見えである。本人は気がついているのかどうかは分からないが。

「ねえ、ご主人様」
「何だ?」
「ご主人様だけが一方的にパメラの裸身を堪能するのって、ずるくない?」
「……」

 そうなのか? ずるいのか? 俺って卑怯なのか? チラリとパメラを見る。耳を赤く染めてうつむいた。……俺はずるい男なのかも知れない。パメラの裸だけ見て。
 よし。俺は決意を固めた。ありのままの自分でいこう。どうせ夫婦になったら隅々までお互いに見せ合うことになるのだから、その前哨戦と思えばいいだろう。

 俺はさも「気にしてませんよ」と立ち上がり、ポーカーフェイスで湯船につかった。
 パメラは俺の男の面子を見て目を見開くと、カチンと固まった。それはもう、微動だにしなかった。パメラの顔や耳だけでなく、全身がレッドスライムのように真っ赤になった。

「お、お父様のよりもご立派」

 小さな驚きに満ちた声が聞こえた。おい、伯爵。娘にナニを見せているんだ。だからこんな、ちょっと捨て身な娘に育ったんじゃないのか? いや、伯爵夫人も一枚噛んでいたか。
 お風呂から上がるまでの間、ほんのちょっとだけ気まずかった。
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