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10 キヨクたんは当時の象徴と言うかあこがれというか。とにかく、ありがとうございましたぁ!
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今、私は死んだ魚の目をしている。と、思う。
「ボウウ、婚約おめでとう! 俺たちは早々に推しをあきらめて他の女の子に浮気してしまったけど、最後まで初恋を捨てずにいたお前が報われて、推しと結ばれるなんて。俺たちも自分のことのように嬉しいぞ!」
「ありがとう。脈がないからあきらめようとしたんだが、皆があきらめるなと卒業式に背中を押してくれたおかげだ」
ボウウ様に、アースリケージへ連行、いや、デートするために連れて来られた瞬間、待ってましたとばかりに彼の同僚たちに囲まれた。どうやら、私を皆に紹介したかったらしい。
はにかみながら、同僚の騎士様がたに「皆、俺の妻だ」と紹介した。
ちょ、まだ、妻じゃないから! そう即時に訂正したい。でも、祝福のムード満載のここでそう言える人はいないと思う。その横顔もかっこいい。イケメンはどんな姿でもかっこいいのかよー。イケメンだからって、なんでも許されると思ったら大間違いなんだぞ。イケメンだからって!
「キヨクたん、僕のこと覚えてますか? 僕、あれから部隊長になったんです! あの時、キヨクたんが『がんばってね♡』って激励してくれたおかげです!」
覚えてません。すみません。
「お前、抜け駆けやめろよ! キヨクたん、俺、あの時キヨクたんと握手してもらってから手を洗ってないんですよ!」
冗談でもきちゃないことは言わないでよー。やだー。
「お前、キモいこと言うなよ! キヨクたんがドン引きじゃねーか。すんません、こいつのたちの悪い冗談は笑い飛ばしてください。真面目な話、あの頃は、皆ほんとキヨクたんのおかげで頑張れたんです。俺たちにとって、キヨクたんは当時の象徴と言うかあこがれというか。とにかく、ありがとうございましたぁ!」
最後に、ファンクラブの会長みたいなポジにいる青年が頭を下げると、他の面々も「ありがとうございましたぁ!」と一斉に叫んで私を囲んだ。体育会系の熱気ごと。アチチチチ。ちょ、離れてー。ハウス、ステーイ!
頼むから、そのキヨクたんはやめてー。見られてる、見られてるから。周囲の紳士淑女が、なんだなんだと見てるから! ああ、しばらく外を歩けないぃー。
なんてこと、お祭り騒ぎのようになっている彼らを前にして言えるはずもない。ええ、ボウウ様との婚約といい、私はNoと言えない(元)日本人。
「え……と。あ、あの、皆さんがあの時にご協力していただいてからも、ずっと鍛錬を続けていたとボウウ様から聞きましたの。皆様の頑張りのお陰で、例年にない功績をあげられたとか。素晴らしいですわ」
私が微笑んで社交辞令を伝えると、体育会系騎士様がたは全員照れて笑った。ボウウ様が言うには、毎年1/3は脱落するらしいのに、その年は全員騎士になったみたい。
複雑だけど、私の存在が彼らの心の支えになったことは、素直に嬉しく思えた。黒歴史だけど。全員の記憶から、あの頃の私を消去したい。せめて、たん呼びは絶対にやめさせてやると心に誓った。
「妻の紹介も済んだし、もういいだろ? お前らもデートでもなんでも行ったらどうだ」
私が人ごみに疲れたことを察知したのか、ボウウ様がうまく騎士様たちを散らしてくれた。
「キヨクは、何度も来たことがあるんだよな?」
「いいえ。いつも限定スイーツを、おじいちゃまやおじさまがたに買って貰っていただけです。なので、ここに男性とくるのは、初めてですわ。お父様の誕生日祝いに家族と来たっきりなんです」
流石、王室御用達の老舗の高級スイーツ店。重厚感と清潔感、そして、きらびやかなのに心が落ち着く絶妙な店内の調和に、余計なことを言ってしまった。
言ってから、しまったと思ったが、もう遅い。
ここで、数名の男性と何度もデートしたことがあると言ったほうが、幻滅されてフラレるチャンスも生まれたというのに。嘘ではない。おじいちゃま、おじさまとは、テイクアウトだけど限定スイーツのきのこのアレを受け取ったことが何度もあるもの。
「そうか、俺とがはじめてなのか。光栄だな」
ボウウ様は、それはもう嬉しそうに目を細めて微笑んだ。歯並びの良い白がキラっと光った気がする。
案内された場所は、2階のテラス席。ここから店内や外の景色が一望できる。
下からはかなり顔をあげて見上げないと見えない位置で、彼は護衛として、第三王子や聖女様を狙う犯罪者を警戒していたのだという。何度か、無理やり聖女様をさらおうとした悪漢を、王子とともに取り押さえたらしい。
「一般人では考えられないほど、大変なお仕事だったんですね」
それは、ゲームの好感度アップのためのイベントだろう。ただ、この世界に生きる彼らにとっては、本当に命にかかわる出来事だったに違いない。
私は、攻略キャラ全員が無傷でゲームのヌケドメルートのエンドを迎えることができた聖女様に感心した。このゲームは、ひとつ選択を誤ると、誰かが一生残ってしまう怪我を負う。
事前情報も、攻略サイトの閲覧もできない彼女が、どうやって100%の達成を果たしたのか、少しだけ気になった。
ふたりで、紅茶とショコラセカンド・サックサクマウンテンがおまけでついている、限定のスイカとメロンと社員マスカットの冷たいスイーツが運ばれてきた。
半分に割ったスイカの皮を器にして、シャーベット状になったそれらが、一口大のボールになって入っていた。長時間シャーベットを維持できるように、器には魔法で氷魔法がかけられている。
はて? なぜにひとつ……?
そのスイーツは、私とボウウ様の前にでーんと置かれた。それはいい。こんなに大きいスイーツ、ひとりで食べる人なんてそうはいないだろうか。解せないのは、二股のフルーツフォークがひとつだということだ。
「ご注文いただいていたお帰りの際のスイーツは準備しておりますのでご安心ください。それでは、このスイーツよりも甘いひとときをおすごしください」
洗練された礼と共にスタッフが出ていく。そして、対面に座っていたボウウ様が、ゆっくり私の隣に座り、ひとつしかないフルーツフォークでスイカを刺したと思ったら、私に向かってそれを差し出してきたのだった。
サク山チョコ〇郎さん、美味しいですよね。どうしてあんなにも少なくなったのでしょうか( ノД`)シクシク…
「ボウウ、婚約おめでとう! 俺たちは早々に推しをあきらめて他の女の子に浮気してしまったけど、最後まで初恋を捨てずにいたお前が報われて、推しと結ばれるなんて。俺たちも自分のことのように嬉しいぞ!」
「ありがとう。脈がないからあきらめようとしたんだが、皆があきらめるなと卒業式に背中を押してくれたおかげだ」
ボウウ様に、アースリケージへ連行、いや、デートするために連れて来られた瞬間、待ってましたとばかりに彼の同僚たちに囲まれた。どうやら、私を皆に紹介したかったらしい。
はにかみながら、同僚の騎士様がたに「皆、俺の妻だ」と紹介した。
ちょ、まだ、妻じゃないから! そう即時に訂正したい。でも、祝福のムード満載のここでそう言える人はいないと思う。その横顔もかっこいい。イケメンはどんな姿でもかっこいいのかよー。イケメンだからって、なんでも許されると思ったら大間違いなんだぞ。イケメンだからって!
「キヨクたん、僕のこと覚えてますか? 僕、あれから部隊長になったんです! あの時、キヨクたんが『がんばってね♡』って激励してくれたおかげです!」
覚えてません。すみません。
「お前、抜け駆けやめろよ! キヨクたん、俺、あの時キヨクたんと握手してもらってから手を洗ってないんですよ!」
冗談でもきちゃないことは言わないでよー。やだー。
「お前、キモいこと言うなよ! キヨクたんがドン引きじゃねーか。すんません、こいつのたちの悪い冗談は笑い飛ばしてください。真面目な話、あの頃は、皆ほんとキヨクたんのおかげで頑張れたんです。俺たちにとって、キヨクたんは当時の象徴と言うかあこがれというか。とにかく、ありがとうございましたぁ!」
最後に、ファンクラブの会長みたいなポジにいる青年が頭を下げると、他の面々も「ありがとうございましたぁ!」と一斉に叫んで私を囲んだ。体育会系の熱気ごと。アチチチチ。ちょ、離れてー。ハウス、ステーイ!
頼むから、そのキヨクたんはやめてー。見られてる、見られてるから。周囲の紳士淑女が、なんだなんだと見てるから! ああ、しばらく外を歩けないぃー。
なんてこと、お祭り騒ぎのようになっている彼らを前にして言えるはずもない。ええ、ボウウ様との婚約といい、私はNoと言えない(元)日本人。
「え……と。あ、あの、皆さんがあの時にご協力していただいてからも、ずっと鍛錬を続けていたとボウウ様から聞きましたの。皆様の頑張りのお陰で、例年にない功績をあげられたとか。素晴らしいですわ」
私が微笑んで社交辞令を伝えると、体育会系騎士様がたは全員照れて笑った。ボウウ様が言うには、毎年1/3は脱落するらしいのに、その年は全員騎士になったみたい。
複雑だけど、私の存在が彼らの心の支えになったことは、素直に嬉しく思えた。黒歴史だけど。全員の記憶から、あの頃の私を消去したい。せめて、たん呼びは絶対にやめさせてやると心に誓った。
「妻の紹介も済んだし、もういいだろ? お前らもデートでもなんでも行ったらどうだ」
私が人ごみに疲れたことを察知したのか、ボウウ様がうまく騎士様たちを散らしてくれた。
「キヨクは、何度も来たことがあるんだよな?」
「いいえ。いつも限定スイーツを、おじいちゃまやおじさまがたに買って貰っていただけです。なので、ここに男性とくるのは、初めてですわ。お父様の誕生日祝いに家族と来たっきりなんです」
流石、王室御用達の老舗の高級スイーツ店。重厚感と清潔感、そして、きらびやかなのに心が落ち着く絶妙な店内の調和に、余計なことを言ってしまった。
言ってから、しまったと思ったが、もう遅い。
ここで、数名の男性と何度もデートしたことがあると言ったほうが、幻滅されてフラレるチャンスも生まれたというのに。嘘ではない。おじいちゃま、おじさまとは、テイクアウトだけど限定スイーツのきのこのアレを受け取ったことが何度もあるもの。
「そうか、俺とがはじめてなのか。光栄だな」
ボウウ様は、それはもう嬉しそうに目を細めて微笑んだ。歯並びの良い白がキラっと光った気がする。
案内された場所は、2階のテラス席。ここから店内や外の景色が一望できる。
下からはかなり顔をあげて見上げないと見えない位置で、彼は護衛として、第三王子や聖女様を狙う犯罪者を警戒していたのだという。何度か、無理やり聖女様をさらおうとした悪漢を、王子とともに取り押さえたらしい。
「一般人では考えられないほど、大変なお仕事だったんですね」
それは、ゲームの好感度アップのためのイベントだろう。ただ、この世界に生きる彼らにとっては、本当に命にかかわる出来事だったに違いない。
私は、攻略キャラ全員が無傷でゲームのヌケドメルートのエンドを迎えることができた聖女様に感心した。このゲームは、ひとつ選択を誤ると、誰かが一生残ってしまう怪我を負う。
事前情報も、攻略サイトの閲覧もできない彼女が、どうやって100%の達成を果たしたのか、少しだけ気になった。
ふたりで、紅茶とショコラセカンド・サックサクマウンテンがおまけでついている、限定のスイカとメロンと社員マスカットの冷たいスイーツが運ばれてきた。
半分に割ったスイカの皮を器にして、シャーベット状になったそれらが、一口大のボールになって入っていた。長時間シャーベットを維持できるように、器には魔法で氷魔法がかけられている。
はて? なぜにひとつ……?
そのスイーツは、私とボウウ様の前にでーんと置かれた。それはいい。こんなに大きいスイーツ、ひとりで食べる人なんてそうはいないだろうか。解せないのは、二股のフルーツフォークがひとつだということだ。
「ご注文いただいていたお帰りの際のスイーツは準備しておりますのでご安心ください。それでは、このスイーツよりも甘いひとときをおすごしください」
洗練された礼と共にスタッフが出ていく。そして、対面に座っていたボウウ様が、ゆっくり私の隣に座り、ひとつしかないフルーツフォークでスイカを刺したと思ったら、私に向かってそれを差し出してきたのだった。
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