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5 私も気絶していいですか?
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「この国は絶滅の一途をたどっている。私たちの種族はこの周辺の民たちよりも環境の変化弱いのだ。気温が少しずつ下降していて年々子供の数が減っている。同族同士での子は寒さに耐えられない弱い個体だから、このまま気温が下がれば自然と消えて行くのだろう」
王子はよくわからない事を話し始めた。すでに今でもアップアップの私の頭の中に、それがすんなり入って来るはずはなく。ぼんやり他人事のようにしか聞く事ができない。なんというか、ついていけなさすぎて、逆に冷静というか、投げやりみたいな。気持ちがどこかに行っちゃってしまったような感じ。
「他国も、我らの存続を危惧してくれていて、少しではあるが寒さに強い血を入れてみたりはしたものの、効果はほんとどなく、異種間での行為はもともと推奨されないためその方法も近年になり廃れた」
やっぱり寒さに弱いとか異種間とか意味がさっぱりわからない。なんだか、ペットショップとかのミックスみたいな事を言うな、なんて思っていた。
「そこで、我らは神に祈りを捧げた。すると、我らの理の外にある異世界の乙女である暑さにも寒さにも強い花嫁を迎えれば、守られるであろうと。寒さに耐えられない子供や女性の数は男性よりもはるかに速く減少している。それ以来、我らは神託通りに儀式をし、十数年という長い時をかけ君を召喚することに成功したのだ。どうか、ビィノ。神託の乙女である君には、是非とも私たちと結婚し子をたくさん生して欲しい」
そう言うと、王子は言い切ったとばかりに満足そうに一息つく。そして、ずっとなんだけれども、先輩をとっても愛しそうに見つめて、彼にとっては求婚のような、とんでもなく失礼な事を先輩に伝えて来た。
「……は?」
先輩は、目と口を丸くあけてフリーズしてしまった。私は言われた当事者じゃないから、「子供が減って国が滅亡しそうだから、異世界から先輩を呼んで子供をたくさん産んでもらう」という、まるで子供製造機みたいな失礼な事を言った王子に対してじろじろと不躾に見てしまう。
そりゃ、たしかに結婚して子供を産むなんて、私たちの世界でも夢をみる子も多いだろう。だけど、それってなんだか子供を産むためだけに先輩を求めてますって言っているみたいで、心の中がモヤモヤムカムカしてなんだか気持ちが悪くなった。
「ビィノ……。このような出会いになったけれども、私は物心ついたときから神託の乙女……君を待ちわびていた。どんな子が来てくれるのかと思い、その……夜も眠れなかったんだ。我ながら変だと思うが会ったこともないけれど強烈に惹かれていて。こんなにも綺麗でかわいい子が来てくれただなんてとても嬉しい。どうか、私たちと結婚して……ビィノ? ビィノッ!」
「せんぱい⁈ しっかりしてください! せんぱーい!」
私の隣で、さっきまで毅然と背筋を伸ばしていた先輩の体が横倒しになりソファに沈む。目を閉じて、意識を失っているようだ。くたんとした先輩の肩をゆすり、一生懸命呼びかけるけれどもその目が開かれる事はない。
王子もすぐにこちらにきて、先輩を心配そうにのぞき込むと彼女をお姫様だっこした。まるで大切な宝物のようにそっと優しく抱える姿は、イケメンだし、とっても様になっている。
「カレン。ビィノの事は絶対に悪いようにはしない。だからここは私に任せて欲しい」
王子が、さっきまでならきっと私なんて無視して先輩を抱っこして連れて行っただろうけれど、私と先輩がとても仲良さそうにしていたためか、私の事も粗雑にしないようにこうして声をかけてくれた。
さっき謝罪を伝えられたけれど、さすが王子といった具合に、自分の言った言葉の責任をとっているのか、ここで私をどうでもいい雑草のように扱った事で先輩に嫌われるのが嫌だからなのかわかんないけど、王子の態度を少し見直した。
「は、はい。先輩をお願いします……」
「ありがとう。カレンはこんなに小さいのに、とってもいい子だね……それなのに私は……本当にすまなかった。カレン、君の事もだが、ビィノの事は私の命に代えても守ってみせるから安心してくれ」
ん?
なんだか、さっきから王子は私をとっても小さな子供のように思っているみたいな言動がある。でも、今はそんな事よりも先輩の容態のほうが大事だ。どちらにせよ、今は王子のその言葉を信じるしかない。
私は、まるで映画にでてくるヒーローみたいな事を言う王子に頭を下げて先輩を彼にまかせたのであった。
「では、シビル。カレンの事を頼んだ。カレンは、どうするか……このままという訳にもいくまい。そうだ、ゼクスのところに連れていってやってくれ。あいつならこの子の世話をきちんとするだろうから」
「はっ、おまかせを」
先輩を抱っこした王子がそう言い残す。彼と共に、何人もの人たちが一緒に部屋を出て行く。ぽつんと残された私も本当は気絶したいほどキャパオーバーだった。
でも、そんな事は出来ないから、おしりを前にしてずるりと姿勢を崩してソファに思いっきりもたれた。顔を両手で覆い天井を見上げるように顔を上げはーっと長いため息を吐く。
「おにいちゃん……おかあさん……おとうさん……」
ぽつり、手の中で家族を思い浮かべながら呼ぶ。今までのはエレベーターが怖くて気を失った私が見た夢で、手を顔から離して起きたら皆がいるに違いない。そうしたら、レストランに行くんだって考えて現実逃避していた。
「すまない、そろそろいいだろうか?」
暫くその体勢のまま過ごしていると、やっぱり現実は無情で。私に声をかけて来た見知らぬ大きな男の人がいたのであった。
王子はよくわからない事を話し始めた。すでに今でもアップアップの私の頭の中に、それがすんなり入って来るはずはなく。ぼんやり他人事のようにしか聞く事ができない。なんというか、ついていけなさすぎて、逆に冷静というか、投げやりみたいな。気持ちがどこかに行っちゃってしまったような感じ。
「他国も、我らの存続を危惧してくれていて、少しではあるが寒さに強い血を入れてみたりはしたものの、効果はほんとどなく、異種間での行為はもともと推奨されないためその方法も近年になり廃れた」
やっぱり寒さに弱いとか異種間とか意味がさっぱりわからない。なんだか、ペットショップとかのミックスみたいな事を言うな、なんて思っていた。
「そこで、我らは神に祈りを捧げた。すると、我らの理の外にある異世界の乙女である暑さにも寒さにも強い花嫁を迎えれば、守られるであろうと。寒さに耐えられない子供や女性の数は男性よりもはるかに速く減少している。それ以来、我らは神託通りに儀式をし、十数年という長い時をかけ君を召喚することに成功したのだ。どうか、ビィノ。神託の乙女である君には、是非とも私たちと結婚し子をたくさん生して欲しい」
そう言うと、王子は言い切ったとばかりに満足そうに一息つく。そして、ずっとなんだけれども、先輩をとっても愛しそうに見つめて、彼にとっては求婚のような、とんでもなく失礼な事を先輩に伝えて来た。
「……は?」
先輩は、目と口を丸くあけてフリーズしてしまった。私は言われた当事者じゃないから、「子供が減って国が滅亡しそうだから、異世界から先輩を呼んで子供をたくさん産んでもらう」という、まるで子供製造機みたいな失礼な事を言った王子に対してじろじろと不躾に見てしまう。
そりゃ、たしかに結婚して子供を産むなんて、私たちの世界でも夢をみる子も多いだろう。だけど、それってなんだか子供を産むためだけに先輩を求めてますって言っているみたいで、心の中がモヤモヤムカムカしてなんだか気持ちが悪くなった。
「ビィノ……。このような出会いになったけれども、私は物心ついたときから神託の乙女……君を待ちわびていた。どんな子が来てくれるのかと思い、その……夜も眠れなかったんだ。我ながら変だと思うが会ったこともないけれど強烈に惹かれていて。こんなにも綺麗でかわいい子が来てくれただなんてとても嬉しい。どうか、私たちと結婚して……ビィノ? ビィノッ!」
「せんぱい⁈ しっかりしてください! せんぱーい!」
私の隣で、さっきまで毅然と背筋を伸ばしていた先輩の体が横倒しになりソファに沈む。目を閉じて、意識を失っているようだ。くたんとした先輩の肩をゆすり、一生懸命呼びかけるけれどもその目が開かれる事はない。
王子もすぐにこちらにきて、先輩を心配そうにのぞき込むと彼女をお姫様だっこした。まるで大切な宝物のようにそっと優しく抱える姿は、イケメンだし、とっても様になっている。
「カレン。ビィノの事は絶対に悪いようにはしない。だからここは私に任せて欲しい」
王子が、さっきまでならきっと私なんて無視して先輩を抱っこして連れて行っただろうけれど、私と先輩がとても仲良さそうにしていたためか、私の事も粗雑にしないようにこうして声をかけてくれた。
さっき謝罪を伝えられたけれど、さすが王子といった具合に、自分の言った言葉の責任をとっているのか、ここで私をどうでもいい雑草のように扱った事で先輩に嫌われるのが嫌だからなのかわかんないけど、王子の態度を少し見直した。
「は、はい。先輩をお願いします……」
「ありがとう。カレンはこんなに小さいのに、とってもいい子だね……それなのに私は……本当にすまなかった。カレン、君の事もだが、ビィノの事は私の命に代えても守ってみせるから安心してくれ」
ん?
なんだか、さっきから王子は私をとっても小さな子供のように思っているみたいな言動がある。でも、今はそんな事よりも先輩の容態のほうが大事だ。どちらにせよ、今は王子のその言葉を信じるしかない。
私は、まるで映画にでてくるヒーローみたいな事を言う王子に頭を下げて先輩を彼にまかせたのであった。
「では、シビル。カレンの事を頼んだ。カレンは、どうするか……このままという訳にもいくまい。そうだ、ゼクスのところに連れていってやってくれ。あいつならこの子の世話をきちんとするだろうから」
「はっ、おまかせを」
先輩を抱っこした王子がそう言い残す。彼と共に、何人もの人たちが一緒に部屋を出て行く。ぽつんと残された私も本当は気絶したいほどキャパオーバーだった。
でも、そんな事は出来ないから、おしりを前にしてずるりと姿勢を崩してソファに思いっきりもたれた。顔を両手で覆い天井を見上げるように顔を上げはーっと長いため息を吐く。
「おにいちゃん……おかあさん……おとうさん……」
ぽつり、手の中で家族を思い浮かべながら呼ぶ。今までのはエレベーターが怖くて気を失った私が見た夢で、手を顔から離して起きたら皆がいるに違いない。そうしたら、レストランに行くんだって考えて現実逃避していた。
「すまない、そろそろいいだろうか?」
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