【完結R18】おまけ召還された不用品の私には、嫌われ者の夫たちがいます

にじくす まさしよ

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20 Goeie nag 再会は、ポロポロこぼれるパステリートスとともに

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※近況やコメントを読まれない方もおられるのでこちらに。補足です。
前回の、最後のカレンの実況のようなものは、レースのスタートの様子を、甥っ子があんな風に可愛く言っていたのでそれを参考にしました。バイクに興味のない方は、まあレーススタートだとさらっと流していただけると。(誤字脱字を見つけたので修正しました)

お問い合わせがあったので簡単に↓(緑色のランプじゃないのー?と)
グリッドスタートはバイクレース(MotoGP)のスタートのひとつで、並んでいる選手たち。
シグナルが消えたら一斉にスタートなんです。(変わっていたり間違ってたらどうしよう)
予選で決定された選手がポールポジション(いちばん有利な先頭)を取ります。
  グリッド(これはスタートラインだと思ってください)から、緑色のシグナルがついたら、テスト走行みたいに走った(フォーメーションラップ)あと、もう一度グリッドに戻り、今度は赤いシグナルがつきます。
  シグナルは、縦の信号機みたいなのが並んでいて、「そろそろ時間だぜ、準備はいいか?」と、赤のランプが1秒毎についていきドキドキします。
横一列に赤のシグナルが全てついたあと、2、3秒くらいに全ての赤のランプが消えます。消えて真っ黒になってからスタートです。
  ひとつの縦の信号機が、カウントダウン3、2、1で消えて緑色に変わってからスタートとはちょっと違うのです。
  ピットロード付近の信号機は緑色がついてたと思います。
  うろ覚えな部分もありますし、作者が文字でかくとつまらないですね。興味のある方は検索していただくと、面白い記事もたくさんあります。日本人選手が優勝されたりしていてバイク興味ない知人はビックリしていました。(お一人でもバイクファンが増えてくれると嬉しいです)

※追記。おわび。↑の説明、フォーメーションラップは4輪専用の用語みたいです。作者の間違った記憶の記載がありますので、あまり信じないで、なんとなくブラックになったらスタートって思っていただけると嬉しいです。申し訳ありませんでした。


※それでは本編。年下ゼクス王子のターン



 ビィノは、猛烈アタックを続けた兄上に、最初は逃げていたが結局絆されたみたいだ。
  彼女に近づく令息たちもいたけれど、兄上がなんだかんだで悉く邪魔をした。
  複数の夫と神託の乙女を愛して~とか言いながらビィノが夫はひとりが良いと言う希望に付け込んで独占欲丸出しだった。

 これには王に令息たちの家から抗議があったものの、ビィノ自身がそんな兄上を(体のいい虫除け的に)享受していたのだから、令息たち自身に魅力がないのが悪いと一喝したのである。
 いつの間にか、甘い雰囲気になって来たなって思ってから、ふたりが恋人同士になるのにはそれほど時間がかからなかった。今ではすっかり相思相愛の婚約者として、周囲にも認められている。

「兄上、義姉上どうしたのです?」

 僕は、城に呼び出されたため兄上の部屋に来ている。

  ビィノとぴっとり体をくっつけてソファに座る幸せいっぱいの兄上が、少し羨ましいと思いつつ、向かいのソファに腰かけた。

「ゼクス君、カレンちゃんの事なんだけど……聞いているわよね?」

 ビィノが恐る恐る、僕の反応を伺いながら訊ねて来たので頷いた。僕は明日、カレンの求婚者として侯爵家に行きお見合いをするのだ。その場にはシビルと、もうひとりいると聞いている。彼女はまだ誰も選んでいないらしい。

「あのね、カレンちゃんはああ言っていたけれど……」

 ビィノは、あの会議の後も、必死に王をはじめ、公爵までも懐柔しようと働きかけていた。だが、王も公爵も頷く事はない。会議でのカレンの言葉を、彼女自身が撤回するならまだしも、この国の至宝たる神託の乙女とはいえ、部外者の意見で会議の決定事項をコロコロ変えていては示しがつかない。

「義姉上、僕は予定通りカレンに求婚します。理由はいくつかありますが……王族である僕が求婚して第一の夫となる事で、彼女にとって意に添わぬ結婚や、将来的にまだ人数を増やせと言いだしそうな貴族たちを抑え込めます」

「え、ええ。それは聞いたわ。でも……」

「それに、僕はまだ未成年ですから、成人まで時間があります。その間にカレンの様々な事が決定されるでしょう。義姉上としても、絶好の時間稼ぎにはなりませんか?」

「時間稼ぎったって、ゼクス君は14才でしょう? あとわずかじゃない。いえ、そうじゃなくて、今日はそんな話をしにきたわけじゃ……」

「そこは、巻き込まれた被害者であるカレンにとっての成人年齢にする事くらいは、僕の権限でできます。確か女性は16才、男性は18才なんですよね?」

「ええ。でも、もうすぐ女性も18才に年齢が引き上げられるはずだったわ」

「彼女と僕が18才になるまで3、4年。それまでの間に、カレンが本当に愛する人が見つかればその人を夫として迎えます。……僕は、夫になっても、カレンが望まないかぎりお飾りの夫で構いません」

 僕がふたりをしっかり見つめながらそう言うと、兄上が声を荒げた。

「ゼクス! お飾りってお前……!  それはいくらなんでも、お前が辛いだろう? 他の男と彼女が夫婦になるのを間近で見るなんて。お前はカレンの事を……」

「兄上……あの会議の日、僕は彼女に何もできなかった。孤立無援で悲しみにくれる彼女の手を握る事も、よってたかってこの国の大人たちがカレンに捲し立てたあの場から彼女を連れ出す事も。あげく、カレンが年齢を誤魔化したなどという汚名をかぶり僕たちを守ってくれたんです。僕は、王族として、ひとりの男として、今度こそカレンを守りたいんです」

「……お前の気持ちはよく分かる。あの時のカレンは倒れてしまいそうなほどだったからな。しかし、お前の気持ちはどうなる?」

「僕は混血児だし、あの寒い館で一緒に生涯を過ごしてくれる伴侶なんて出来ません。とっくに女性と結婚するだなんて諦めていました。だから、カレンが僕の元から再び旅立つ日が来ても……かまいません」

 そう言いつつ、僕の胸はズキリと物凄く痛んだ。
 僕は、カレンに惹かれているから、本当は僕とずっと一緒にいて欲しい。

  ずっと愛されるという事を諦めていたんだ。

 カレン、僕の小さな可愛い女の子。僕が守りたい女性に、愛し愛される未来を願ってしまった自分がいてびっくりしたのは数日前の事だった。
 庇護者であるカレンのためにって考えながら、自分が出来る事を冷静に計画立てていた。

  でも、カレンを、政略であり白い結婚じゃなくて、僕の本当の妃にしたくて堪らない。他の男なんて嫌だと心が切り裂かれるような痛みとともに、彼女への気持ちを自覚した。

  1ヶ月も経っていないのに会いたくて仕方がなくて、今はきっと、僕のほうが寂しい。

「その気持ちは、きっとカレンちゃんも感激すると思うわ。でもね、ゼクス君にも幸せになって欲しいの。ゼクス君は、いつだって自分を二の次にしちゃうし、色々譲って来たでしょう? カレンちゃんの気持ちが動かなかったのならどうしようもない。でも、ジスクールのようにとまでとは言わないけれど、どこまでも食い下がって振り向かせる事をしても良いと思うわ? カレンちゃんはゼクス君の事を嫌っていないどころか、好きな部類に入っていると思うのよ」

「それは……僕が子供として接していたし、兄のように好意を持ってくれているだけかと」

「あのね、兄のような、幼馴染のように思っていた異性に、ある日突然恋に落ちるなんて事、この世にはごまんとあるのよ? カレンちゃんの気持ちがゼクス君に向けばハッピーエンドなんだから。それとも、ゼクス君はカレンちゃんをそういう目で見れないの? それならさっき言った通り、えーと、白い結婚だったかしら。そういうのをしてもらえると嬉しいんだけど」

「男女の事なんてどうなるかわからないのだから、何もしないうちから諦めるなんて、ケープ国の王族たるもの、あまりにも情けないぞ? 私を少しは見習え。諦めなかったから、今こうしてビィノを得る事が出来たんだ!」

「兄上は、ちょっとは遠慮を覚えたほうがいいと思う……」

 兄上が、鼻高々に胸を張って僕に発破をかけるという名の自慢話をしたから、ムッとして、ボソッと嫌味を言ってしまった。

「ん? 何か言ったか?」

「いいえ、何も……兄上たちの助言の通り、僕は彼女に政略だけでなく気持ちを向けようと思います……」

「いいか? まずは好きだと何度も言うんだ。そうしたらきっと上手くいく。そうなったら、盛大に結婚式を挙げようじゃないか! きっと、コウテイ国のゼクスの母君の縁者も喜んで参列してくれるに違いないからな」

 そんな単純な事ではないとは思う。思うんだけれど、ほんの少し、僕にもカレンの愛を望んでもいいのかな、カレンも僕を好きになってくれるかな、なんて淡い期待を抱いてしまったのである。


※※※※


 翌日、僕は侯爵家で丸テーブルの椅子に座っていた。隣にはシビルがいる。もうひとつの席は空白だ。

  僕とシビルの間にカレンがいて、最初はぎくしゃくしていたけれど、やっぱり僕たちと過ごした数日があったから、暫くすると和気あいあいと会話が弾む。
 本来なら侯爵夫人であるイーゼフが同席するはずなのだが、僕たち3人にしてくれた。
 もうひとりの人物は、急用で来れなくなったらしい。辞退はしていないから、後日改めて求婚する予定だと言われた。

 カレンが好きな、パステリートス。何層もの薄い生地のパイがテーブルには置かれていた。
  さつま芋のペーストやメンブリージョかりんのジャムが挟まれていて、ぱくりと食べてもいいし、パイの生地をべりべりはいで食べるのも美味い。行儀も悪くなるし、口からパイ生地がこぼれるためあまり好まれないが、カレンと一緒に暮らしていた頃、彼女はこれが大好きだった。

  この甘いお菓子に、生クリームクレマまでつけたいって言っててビックリした。

 頬についたジャムを拭き取り、胸からスカートまで広がった生地の粉は、カレンがパンパンはたいてもとれないから、いつも僕かシビルが綺麗にしてあげていたなと思い出す。

 案の定、カレンはパイ生地をぽろぽろ落としていった。シビルが、テーブルにあるナプキンで頬についた生地のかけらを拭き取ったのである。

「カレン、ほら頬っぺたについている」

「ん……シビル」

 痛くないようにそっと拭き取るその光景は、一緒に暮らしていた頃に散々見て来た。その時は、まるで親子のようだと微笑ましい気持だったのに、今では胸の中がチクチク小さく細い針で刺されたかのような不快感でいっぱいになる。

「カレン、スカートにも落ちているよ?」

「ありがとう、ゼクス……」

 こんな事になったけれど、こうして誰もいない時は前のように接して欲しいと、殿下なんていう僕と彼女を分け隔てるような呼称は止めるようお願いした。
  シビルも同じように伝えたため、今は以前のように名を呼び合っている。

 実は、ベールは取っていた。本来なら許されないが、すでにカレンは僕たちを夫候補として考えてくれているらしく、侯爵夫人が許してくれたのである。

 ここに来るまで、色々考えすぎて、頭の中が戻せない細かなパズルピースになったかのような気持ち悪さが嘘のようだ。
 心が弾み、カレンが僕の名を呼んで笑ってくれるだけで、温かい何かが僕を満たしてくれたのだった。

 カレン、僕のお嫁さんになる大好きな女の子。シビルも一緒だけど、それでもいい。どうか、僕の事も見て。そして、少しでいいから、好きになって欲しい……。
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