完結R18 外れガチャの花嫁 

にじくす まさしよ

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mãe─マイン

 結婚前の、親友と彼の仲は勘違いだった。それは間違いなかったと思う。だけど、友達だからと言いつつ、妙に仲が良いふたりの様子を見て、心にひっかかりを覚えていたのも事実だった。

「お前、本当にあいつと結婚するのか? 魔法はちゃちいし、勉強もあまりしないから学位は下の上。いや、下の中がいいところだろ。家柄と顔以外、いいところなんてないと思うんだが」
「アルカヌム兄さま。両親を亡くしたわたくしを、小さなころから兄のように面倒を見てくださっていて、とーってもありがたいと思っています。だけど、彼を馬鹿にしたら承知しませんから!」
「おー、怖い怖い。もう馬鹿にしないから許してくれ。しかしまあ、気が強いお前が結婚とか。おぼっちゃまを尻に敷くんだろうなあ」
「あら? 彼はわたくしを、とーっても理解してくれているんです。女が学年上位だとか、釣り目が悪女みたいで怖いとか負け惜しみを言ってくるそのへんのへなちょこより、よっぽどしっかりしていて優しいし、わたくし自身を見てくださってるんですからね」

 そんな風に、兄弟子や叔父様の苦言を突っぱねた。パイ様を逃したら、わたくしを愛してくれる男性なんていないって思っていたから、彼の求婚をふたつ返事でした。意地もあったかもしれない。

 でも、彼はわたくしが思っていたような、懐の深くて大きな優しい人ではなかった。

 白い髪で産まれたアイリス。目元も口元も、耳の形だってあの人にそっくりだ。
 なのに、白い髪というだけで、まだ何もできないあの子を夫は恐れた。それどころか、わたくしが兄弟子と不貞をしたと言い、自分がカーソと浮気をする始末。

 それでも彼を嫌いになれなかった。愛していた。戻ってきてくれると信じて待った。でも、彼はカーソとの間に子供をもうけて、アイリスを後継者から外すなどと言い出した。

 アイリスは後継者としてこの家に縛られている。アイリスが解放されて、カーソの産んだ子に後継者を移すには、成人するまでに公の機関が一度取り決めた後継者の権利と義務を外してくれるか、もしくは、アイリスがこの世から消えたとき。

 あの様子では、アイリスは酷い目にあわされると確信した。

 あの日、最後の細い糸彼との絆をつかむために彼と話をした。けれど、やっぱり夫の考えは変わらなかった。

 正直、わたくしは彼の能力や才能を下に見ていた。だから、罰が当たったのだろう。

(まさか、激高した彼の魔力が暴走するなんて)

 あのまま放置すれば、あの近くですやすや眠っているアイリスが危ない。わたくしは、力の限り暴走を止めようとした。そして、若草色の髪を持つ彼の魔力と暴走した力によって引き起こされた彼の魔法によってユーカリの木に閉じ込められてしまった。

 一日一日、愛する我が子が成長していく。案の定、下働きの者すら、アイリスをいじめた。わたくしがアイリスが成人するまでに契約したドレスのサブスクすら、わたくしを裏切った親友の娘が利用するなんて。

 ああ、小さなアイリスが泣いている。わたくしに出来るのは、あの子を見守ることだけ。

 ユーカリの木とわたくしの相性が良かったのか、それまで丹精込めて育てたせいなのか、周囲にも魔法を運ぶことが出来た。

 お腹が空いているあの子のために甘くて栄養価が高い果実を実らせ、ケガをすれば傷を早く治すための薬草を生い茂らせた。

 出来ることなら、あの子を抱きしめたい。そして、この不幸しかない家とあの男から逃げて、ふたりで幸せに暮らせる場所に行きたかった。

 アイリスは、とても美しく育った。でも、白い髪の迷信を信じる人たちによって、顔を下に向けて生きるようになってしまった。その白い髪は、太陽を浴びて光り輝く、とても美しい純白なのに。

 久しぶりにアイリスがわたくしの前に姿を見せてくれた。ユーカリの木に閉じ込められてから、どれほど時が経ったのだろう。

 コーラボ叔父様や、アルカヌム兄様の声がする。

 成長したあの子が、今度はわたくしを抱きしめてくれる。わたくしが抱っこをしていた時は、あんなにも小さかったのに。

 最近、どうも意識が遠のくことが多くなった。最後に、アイリスと一緒にいられて良かったと思う。わたくしはユーカリの木に流れる水と一緒なり、どうか幸せになってと、神に我が子の幸せを祈りながら目を閉じようとした。

 でも、その時にいやにはっきり、この世で一番嫌いな音が聞こえた。

「うるさい! さっきから何を言っている。マインがそのユーカリの木にいるだと? 馬鹿馬鹿しい。ラドレス、お前は前から気に入らなかった。マインと結婚したいと頼みに行った時も馬鹿にしやがって。マインも、銀髪の浮気相手も、俺を馬鹿にしてたんだろうが! いいか、あいつは、ここを出ていったはずだ! 勝手に出ていったんだ。ここにはいないし、俺は知らない! さっさとここから消えろっ!」

 ぼんやりしている場合ではない。パチッと目を覚まして、ユーカリと溶け合いそうだった意識を浮上させた。
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