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4.実験が始まりました。
しおりを挟むアロペットさんの説明に、私はこれ以上ないほど青ざめていた。
無敵の防御力、なんて響きはいいけれど、要するに「手術も注射もできない体」ということだ。
虫垂炎にでもなれば、切開もできずにそのままあの世行き。
……何が絶対防御だ。自分で自分の首を絞めているだけではないか。
思ったより良いスキルではないことに、落胆と不安の感情が膨れ上がる。
静かになった私を気にしてくれたのか、元気にアロペットさんが手を叩いて鼓舞してくれた。
「よし、じゃあ始めるよ!まずは意識がない状態で針が飛んでしまったから、意識ある状態で採決するね」
腕を出して、針を近づけられる。
この程度であれば、元の世界でも採決をされたことがあるので特に動じないが、針が折れたことにはやはりびっくりした。
「意識は関係ないか……。ちなみに、今腕を触っている感触はある?」
「あります」
「マッサージくらいは特に問題なしと……。ちょっと強めに押すよ?」
ゆっくりと手の平を押す指の力が増す。
もう少しで痛気持ちから外れるかなと思ったところで、押していた指が弾かれた。
「へえ。今東さんどんな感覚だった?」
「えっと、痛気持ちいくらいから、気持ちいが消えるくらいで、本格的に痛いと思うかなのところでした」
アシュベト君がさらさらとメモをしている。
この後も同じ動作を手や、足、頭で行った。
「じゃ、口と目、お尻と膣をやります!」
「へ……粘膜ってことですか」
「そうです!最初は口からかな、舌を出してね!」
え、ちょっとと抵抗する前に、頭を固定されて舌を引っ張られる。
口はまだいけるが、目とお尻と膣が問題であった。
そんなことを考えているうちに目ん玉に指をあてられてすぐ弾かれた。
「目はやっぱり敏感だね。すぐ弾かれた」
「っつ!目、目はちょっとびっくりするので……何か事前に言っていただけると」
椅子に座って頭をアシュベトさんが固定し、前にアロペットさんが立って実験をしてくれている。
流れるような動きで口の中が終わったと思ったら、すっと目に指が近づいてきて瞬きが遅くなってしまった。
体がびくつく。
ごめんごめんと軽く流すあたり本当に当人らは気にしていないのか。
ある程度見当がついているのか、事務作業であった。
「この感じだと、お尻と膣も本人の痛いと思ったところで弾かれるな」
「じゃ……や、やらなくても……」
「ん~、まぁ、でもなぁ、筒状の膣とかお尻の穴の中から弾かれるときの衝撃も見ておきたいんだよなぁ。今のところ、弾かれた際には痛みはないけどね。それが筒となったら、全方向から衝撃が来るわけでしょ?もし性行為するときにちんちんいれて、痛いと思った瞬間に弾かれてしまったら、相手のちんちん飛んでっちゃうよ?東さんと性交渉しても大丈夫ってわからなくても良い?」
もしつぶされるように吐き出されたら、痛みがあるのか。
考えただけで、相手の男性は悶絶ものだろう。
恋愛を考えると避けて通れない状況であるが、さすがにそこは羞恥心が勝った。
それに、予定もない。
「お尻と膣は勘弁していただけたらと……。その時が来たら潔く実験を受けますので、何卒」
土下座する勢いで頼んだ。
「まあ、君に手出そうとするなんて人いたら、閣下もセプティム様も黙ってないからね。一応拾い物だから所有権を持っているって思っている相手に手出されるのは、魔族として屈辱だから。相手死ぬしね」
「そ、そうなんですか」
魔族は独占欲と支配欲、所有欲が強いのだそう。
個が強いということは手物に置いている物も守れることが当たり前であるという考えらしい。
「手を出した相手が不憫になるから、弾かれるくらいのほうがましなのかも知れない」
「そ、うですか。まぁ、予定もないのでしばらくは大丈夫です……」
アシュベトさんはちょっとほっとしており、アロペットさんはなんだかつまらなそうだ。
――この人絶対サイコパスだ。
そして粗末な布1枚の奴隷着から、シャツとズボンを支給いただいて外に出てきた。
実験室のすぐ近くの廊下から出た庭というには狭い。
完全に建物の裏手。
「今度はどれだけ強い衝撃に耐えられるかということで、一旦僕たちがすぐ用意できる武器を集めてみました!」
実験室からすぐ外に出た庭の一角に、包丁や鈍器や、木の幹や岩など、本当にすぐ用意できるであろう物が並べられていた。
急拵えにも程がある。
「さっき、ペンで思いっきり手を突き刺そうとしましたが、弾かれました!どこまでいけるかやってみよう!」
「あの!本当に不意にやるのやめてください!アシュベトさんと話していたら横で跳ね飛ばされて何かと思いましたよ!」
「いやーまたうるさくされるのも嫌だなって思って」
「うるさくしないので!言ってください!心臓が、ストレスで禿げそう。あと、この実験ってどこまで上いきます?」
「心臓に毛が生えているのか?」
「えー、最終的には魔国1番の怪力を誇る、魔王軍の騎士団長か魔王閣下の斬撃か拳?」
アシュベトさんは真剣に突っ込んでくるし、アロペットさんはさらっと怖いことを言うしで、かなり疲れる。
壊れるまでこの人達やるのか……。
「あ!安心してね!即死しても蘇生薬あるし!あ、高いから一生働いて返してもらうようになるけど!見事耐えたら本当に騎士団入りしてもいいし、もしかしたら重役のボディガードも夢じゃないかも!身体能力魔族の5歳並みだけど!」
夢があるねぇなんて無責任なことを言っているが、この人は本当にどうでもよくて面白いから実験している。
鑑定の結果、私のスキルはなし、身体能力も魔族にとっては子ども並みの能力値であったらしい。
知能指数は中の上だそう。
本当に自分の価値を示すにはこのギフトにかけるしかない。
「まずは物理攻撃の絶対耐性に対する限界値測定。あ、アシュベト君、念のため蘇生薬の準備しておいて。あ、東さんには効かないかもしれないけど、気休めにはなるから」
「……気休めにもならない情報をありがとうございます。ちなみに、薬が効くか先に試した方が……」
「わかりやすいのからやろっかななんて思ったんだけど、そうだよね!万一死んじゃって蘇生薬つかえませんでしたってなったら怒られるよね」
ケガも何もしていないのに、分からないからなぁなんて半分ごちていたがこの判断が吉と出た。
外での物理実験は明日へ持ち越し、弱い下剤と変身薬の実験に切り替えられた。
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