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不能の訳
不能の訳4/6
しおりを挟む不能になってから5年ばかりの月日が経ち、彼女に出会って勃起た。嬉しさと、困惑と自分のモノがスラックスを突き破らんと頭を大きくもたげて痛いくらいだ。
訓練所に行くことなんて頭から何処かへ抜けて、ルーカスの思考は先ほどの彼女が誰なのか、精を久しぶりに出したい欲望が支配した。
急いでトイレに駆け込んで、ズボンを下げる。
痛々しいほどに立ち上がっていたモノは、少し頭を垂れ始めていた。
――ぁ!待ってくれ!
目を瞑り、扉に背を預けたまま先ほどの彼女を想像する。自分の好みでは決してなく、綺麗どころかと言われると普通。少し憂いを帯びた眼差しは、どことなく美しさを感じたがいかんせん全体的に汚れていて綺麗かと言われるとわからないが正直な感想だった。
半分に萎れたモノを一生懸命すく。
左手で袋を揉み、先端が少し濡れていたので全体に塗りつけながら快楽の糸口を辿った。
――……イケない…………。
触り始めた頃はまだ芯が残っていたのに、徐々に柔らかく小さくなっていってしまった。
天を仰いで、静かにパンツとスラックスを上げた。
――こうなったら、何がなんでも彼女に会うしかない!
急いでトイレを出て、行政所の方にかけて行った。
どこの課に用事かはわかっているが、どこかで見た覚えがあるが名前が思い出せない。
とりあえず受付に行って特徴を伝える。
「あー、イリアさんですね!それならすぐ報告終わって、つい先ほど帰りましたよ?そちらから出たので、庭園の花でも見て帰るんじゃないですかね?10分もしない報告に呼び付けて、さぞご立腹でしょうから」
苦笑いを浮かべる受付に、ありがとうとだけ返して同じ扉から出た。
――イリア。……イリア……。はて……。
名前を聞いたもののピンとこない。
扉から出てすぐ、足を止めるルーカス。
――待て、後ろから追いかけて何を話す……。どこかで会ったことがある気がするが、どこだかもわからない。どこかで会ったよね!と声をかけたところで知りませんでは何も収穫がない……。
考えること数分。真っ直ぐ進めば中庭だが、横の通路に身体を向けた。
ルーカスのたどり着いた答えは、偶然を装って話をする。さっきは間に合ったか、ずいぶん早く帰るみたいだけどどうしたのか、これなら長く話せる。
自身の今までの女性経験をフルに使う時がやってきた。
中庭から出て城外へ出るにはこの道。
少し遠くから気配を探って、偶然を装う為に鉢合わせのタイミングを測る。
待つこと数分。
誰かまではわからないが、魔力を薄めて広げていたところに引っかかった。歩幅から、女性か少し大きい子ども。ここに子どもは滅多な事ではこない。自ずと導き出される答えは女性。もし別人でも逆側からまたはっておけば良い。
――ごく自然に……。
足を進めると当たりだった。
まだ視線を合わせず、横目で様子を伺う。
――確かにご立腹のようだ。
無表情の中にも怒りが見え隠れしていた。
「……ぁ、さっきの」
自然と視線を合わせて、また自然に見えるように顔を横に向けて手を上げる。
声をかけなければ視線も合わずそのまま通り過ぎていただろう。
少し訝しげな眼差しも、早く帰りたいからなのだと容易に想像は付くが、こちらも引き下がる訳にはいかない。
そしてフワリと漂う刺激臭。
全身の血が加速していくのがわかるが、平常心をなんとか保つ。
「どうも……」
「間に合った?」
イリアは小さく溜息をついて、自身の苛立ちをなんとか収めているようだった。
「いえ、指定の時間は無くて、とりあえず速く来いとのことでしたので」
「そっか。俺が呼び止めたから怒られたんじゃないかって少し気掛かりだったから」
「早く行こうが遅く行こうが同じだったと思います。報告という名の、謝罪が欲しかったようなのでとっとと謝ってあちらは何か言いたそうでしたが、残りは文章でと伝えて出てきました」
「ぇ」
まさか報告半分で出てきたと言うことに驚いたが、きっと理不尽に叱責されたのだろう。役人が消化不良で今頃苦虫噛み潰したような悔しい顔をしているのかと思ったら、おかしくなって笑ってしまった。役人はどうも決め付けが強くて、ルーカス自身も苦手な役人は多い。
「そっか。災難だったね。俺も王城の人間だからここだけの話だけど、苦手な役人俺も多くてね。それとなくそのうち言っておくね」
小声で秘密だよ、とルーカスが少し顔を寄せてイタズラっぽく微笑んだ。
大抵の女の子は悪い気はしないようで、感謝の言葉や名前を聞いてきたりする。しかしイリアは、どうでも良い空返事だけ。
全くの手応えがなく、それどころか帰りたそうに視線は進行方向へ向けられた。
――全くの脈無し。……どうしたら良いだろう。
なんとか接点をと考えたが、何も思いつかない。
会話が途切れた事で、目の前で頭を小さく下げて帰ろうとするイリアを呼び止めてしまった。
これ以上用もないのに足止めをすることは愚策。今後何かしらの付き合いを考えると別れの言葉1つでも言って潔く引き下がるしかない。
視線を彷徨わせていると、先ほどはなかった汚れが新しく顔についていた。
「ぁ、えっと……、顔、汚れているよ」
頬を指さして、泥か砂がついた箇所を教えてあげる。
帰る気満々であったイリアは、とりあえずお礼を言って、頬を袖で擦るが反対側だ。
特に本人は汚れていようが気にしていない様子だったが、これはチャンス。
「ちょっとごめんね」
そう言って、自分のスラックスからハンカチを取り彼女の頬を拭く。どさくさに紛れて首筋の汗まで拭ったが、親切心ではなく無意識の行動だった。
「ハンカチが汚れてしまいます」
「いいんだよ。その為にハンカチをもっているから」
「……ありがとうございます。新しい物をお返し出来ず」
早く帰りたい気持ちは山々だろうが、礼儀はきちんと守る性分なのだろう。新しい物を買って返すと言って、汚れたハンカチを受け取ろうと手を伸ばしたが、そそくさとルーカスがポケットにハンカチをしまった。
「気にしなくて良いのに……。じゃあ、依頼を1つ一緒にやってくれないかな?」
借りを作りたくないタイプだと見抜いたルーカスは、それを利用して次の接点を作る。何度か返さなくて良いと善良な事をアピールしつつ、相手が引く前にこっちの提案を呑んでもらいにかかる。
――面倒くさいという顔を一瞬したけど、こっちもなりふり構ってなれないんだ。
「ちょっと、高難易度な場所になるけど。俺一応Aランクだから……。Aランクしか入れない、コンダルン湿地っていう場所とかどうだろう?何か達成っていうより、探索かな?」
Aランクしか行けない場所への同行というアドバンテージをフル活用。Aランク冒険者は数が少なく、野良で活動している人は両手で数えられるほどだろう。この国を拠点にしているなら、更に少なくなる。
こんな好条件、自分に自身がない人ならともかく、食いついてこないはずはなかった。食いつかなかったとしても、ハンカチを買ってもらうという次の接点は確約されているから強く出れた。
「行ってみたかったんだけど、俺1人ではつまらないし、誰か集めるほどでもないからって思っていたんだけど……。迷惑かな?」
困ったように食い下がると、絶対乗ってくると確信していたルーカス。
「わかりました。こんな機会滅多にないと思いますので、お願いします」
――よし!
「ありがとう。来月くらいになっちゃうと思うけど」
「問題ありません」
正式に名前をゲットしてイリアを見送った。
応援ありがとうございます!
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