ヒレイスト物語

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第一章 出会い

誤算

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 辺りに独特な鉄の臭いが広がっている。カチっカチっ。
 そんな音が鳴ったかと思うと目の前の人が光り出す。これはまずい。
 なんだかわからないが感覚的にまずいものだと判断し、体が勝手に動き出す。


 階段を駆け上がる。思わず大きい声が出てしまう。


「ドアから離れろ。いますぐに!」



 バァァァァン!



 爆風で体が吹き飛ばされドアを突き破る。
 ドン!と鈍い音がする。体中が痛い。特に背中が。
 吹き飛んでいる最中反射で体を丸めていたらしい。
 しばらく眩暈がして動けなかったが徐々に回復して辺りを見回す。


 扉の前にいた傭兵たちは巻き込まれていなかった。
 ちゃんと言葉が届いたことに安堵する。


「ディグニ様。大丈夫ですか⁉」


「ああ、なんとかな。」


「下で何があったんですか?」


 傭兵たちが慌てている。


「落ち着け。下の様子を見てくる。待っていろ。」


 傭兵たちを宥め、下に向かう。本音をいえば戻りたくはない。
 どんな惨状になっているか考えると血の気が引く。
 まあ、あんなことをしておいてなんだが。俺の予想は杞憂に終わった。


 何もない。あの男に関わるものすべてが。
 あの男から抜け落ちた髪の毛一本も残さず、証拠になりうるものすべてが。
 爆発したというより消滅したという方が正しいか。さてどうしたものか。


 そんなことを考えて上に戻ると、ペルフェットがいた。


「凄まじい音がしたので。何かあったんですか?」


「あったというかないというか。・・・あ、いや何でもない。
 忘れてくれ。どうやらやらかしてしまったらしい。
 今から王様に叱られに行くよ。」


 それで済めばいいんだけどな。
 傭兵たちに封鎖しておけと命令し、玉座に向かう。






 ――――――――――――――――――


「なんだと⁉」


 王様の怒声が響く。


「捕虜の男が消滅しました。」


「それはさっき聞いてわかっておる。なぜそうなったかということだ。」


 珍しく王様が取り乱している。


「王よ。落ち着いてください。気品がありませんよ。
 それでは国民に示しがつきません。」


 ルトさんの言葉で王様が落ち着きを取り戻す。


「す・・・。んっ。」


 王様は何か言おうとして口を噤んだ。


「で、どうしてそうなったのかわかるか、ディグニ。」


「おそらくですが、何かを情報を話そうとした時に
 発動する何かが仕掛けられていたのだと思います。

 順調に進んでいました。やっと捕虜が口を開いた時、
 カチっ、カチっ、という音がしたと思ったらいきなり捕虜が光出したんです。
 そして直接見ていないので確実とは言えませんが、
 爆発音とともに消滅したのだと思います。

 捕虜が何も残さず消滅したことを考えると、
 体の中に機械が仕掛けられていたと思うよりは
 何らかの魔法を仕掛けられたと思う方がまだ現実的でしょう。」


 王様が渋い表情をして頭を抱えている。


「魔法か。ややこしいことになったな。」


 すぐに視線を上に戻し、ルトさんの方を向く。


「ペルにそんな魔法があるか聞いてみます。」


「うむ。頼むぞ。」


 王様とルトさんの関係性が伺えるやりとりだった。


「少し一人にしてくれ。考えたいことがある。」


 そう言われ、俺とルトさんは玉座を後にした。






 ―――――――――――――――


「怪我は大丈夫ですか。」


 なにかに気付いたのかルトさんが聞いてくる。


「怪我ですか。なんともないですよ。この通り・・・」


 普通に動くことをアピールしようとしたら、ルトさんが背中に触れてくる。


「っっ!」


「はあ、あなたという人は。私がわからないと思いましたか?
 ペルを連れてくるので医務室で待っていてください。」


「いや、それは・・・」と反論しようとしたら背中を思いきり叩かれた。


「ぐあっ」


「いいですね。」


 有無を言わさない言葉だった。俺は大人しく医務室へ向かった。
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