20 / 171
第一章 出会い
決断
しおりを挟む
医務室に着く。独特のにおいが広がっている。
アルコールや薬品のにおい。若い頃は非常にお世話になった。
最近はここに来ることもなかったからな。
懐かしんでいるとペルフェットがやってくる。ルトさんの姿がない。
「ルトさんは用事があるようで、こちらには来ませんよ。」
王様のところでも向かったのだろう。それよりも気になることがある。
「その、どこまで聞いた?」
「上着を脱いでください。安心してください。
やらかして怪我をしたとしか聞いてないですよ。
私のご主人様は勘が鋭いですし、それにあの方に私は嘘をつけません。
それを考慮した上でそこまでしか話さなかったのでしょう。」
ペルフェットはそういいながら、俺の背中を見る。
”やらかして”の部分が気になるが。
何やら後ろでクスクス笑い声が聞こえる。おそらくあれだろう。
「いくつか骨が折れているところがありますね。
こんなに普通にしていられるのが不思議です。」
「いや、まあ、痛みには慣れちゃったからな。それより、大丈夫なのか。」
俺は昔のシェーン様とペルフェットの出来事を知っている。
「今更じゃないですか。それにちゃんと加減しますよ。
シェーン様との約束ですから。
ですので、危険な箇所と応急処置だけしておきますね。
あとは人間の医者か、自然治癒でお願いします。」
何回かペルフェットに治してもらったことがある。
今回はそれら以上にひどい状態だった。一応聞いてみたが杞憂だったらしい。
「わかった。でもあの医者苦手なんだよな。自然治癒一択だな。」
また、ペルフェットがクスクス笑っている。
治療が終わったみたいで楽になる。
「ありがとう。助かったよ。」
ペルフェットは「いえ。」と控えめに言う。
「そういえば、ビスはどうだ?やらかしてないか。」
「そんなことはないですよ。
少々シェーン様に怒られていましたが、ディグニ様ほどではありません。」
徐々にあの人に似てきていると感じるのは気のせいだろうか。
「ああ、それと一つ謝らないといけないことがあります。」
珍しいなと思いながら、耳を傾ける。
「今シェーン様と一緒魔法を教えています。」
驚きよりも納得が勝る。ただ、一つ確認しなければいけない。
俺はペルフェットをじっと見る。
「ビスはなんて言ってる?」
「僕は魔法を使いたい、そう申していました。」
「そうか。なら俺から何か言うことはないよ。
無理強いしている別だったけどな。ビスは楽しそうか。」
「ええ、とても。シェーン様とも仲良くしています。
なんだか姉弟みたいで微笑ましいですよ。
シェーン様も久々に楽しいのかはしゃいでいます。」
ペルフェットは、顔も声色もあまり変わっていないが、
なんだか嬉しそうだった。
「そうか、それはよかった。」
「それでは、私はこれで。二人が待っていますから。」
俺はしばらく横になっていた。足音が聞こえて目が覚めてしまったらしい。
体を起こすとそこには王様とルトさんがいた。そして告げられる。
「二週間後、レーグル王国に向かってくれ」と。
――――――――――――――――――――
王様が考え出した答え。それは時間を置くことだった。
ただ、時間を置くだけではない。周辺を少数で警戒しつつ、
集められるだけ情報を手に入れ出発すること。それが最善の策だと。
「俺ならすぐにでも出発できます。」
どうしようもなかったことだとしても、今回の件負い目を感じている。
それにフィロ様が危険な目に遭う可能性もあった。
「負い目を感じているのもわかります。
それに、あなたは今、万全な状態ではないでしょう。
相手の力量もわかっていません。逆に危険です。」
「それでも、俺は・・・」
「黙りなさい!王が決めたことです。」
ルトさんの怒声を久しぶりに聞いた。頭が冷める。
今、モーヴェ王国は綱渡りしている状態だ。一歩間違えれば底に落ちてしまう。
それに、王様の気持ちも考えず発言してしまった。俺は王様に深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。」
王様はゆっくりと静かに問いかけてくる。
「よい。お前の気持ちもわかる。
だがフィロの一件で国民に慌ただしい様子を見せてしまった。
お前がすぐに動いてしまうと余計に国民を不安にさせてしまう可能性がある。
それに捕虜にかけられた魔法、ペルフェット曰く相当高度の魔法らしい。
少なくても一人相当腕の立つ敵がいると思っていい。
お前の怪我が完治するのも二週間程度かかると言っておった。
お前の気持ちを考えると二週間が最低ラインだ。
まあ、お前の気持ちだけで送るわけではないが。
最大の譲歩だということをわかってくれ。
私の命令に従ってくれるか。」
ずるい。こんな自身にも言い聞かせているような言い方。承諾するしかない。
「はい。」
下を向いてしまう。王様に肩をポンと叩かれる。
足音と扉を開閉する音だけがその場に残った。
アルコールや薬品のにおい。若い頃は非常にお世話になった。
最近はここに来ることもなかったからな。
懐かしんでいるとペルフェットがやってくる。ルトさんの姿がない。
「ルトさんは用事があるようで、こちらには来ませんよ。」
王様のところでも向かったのだろう。それよりも気になることがある。
「その、どこまで聞いた?」
「上着を脱いでください。安心してください。
やらかして怪我をしたとしか聞いてないですよ。
私のご主人様は勘が鋭いですし、それにあの方に私は嘘をつけません。
それを考慮した上でそこまでしか話さなかったのでしょう。」
ペルフェットはそういいながら、俺の背中を見る。
”やらかして”の部分が気になるが。
何やら後ろでクスクス笑い声が聞こえる。おそらくあれだろう。
「いくつか骨が折れているところがありますね。
こんなに普通にしていられるのが不思議です。」
「いや、まあ、痛みには慣れちゃったからな。それより、大丈夫なのか。」
俺は昔のシェーン様とペルフェットの出来事を知っている。
「今更じゃないですか。それにちゃんと加減しますよ。
シェーン様との約束ですから。
ですので、危険な箇所と応急処置だけしておきますね。
あとは人間の医者か、自然治癒でお願いします。」
何回かペルフェットに治してもらったことがある。
今回はそれら以上にひどい状態だった。一応聞いてみたが杞憂だったらしい。
「わかった。でもあの医者苦手なんだよな。自然治癒一択だな。」
また、ペルフェットがクスクス笑っている。
治療が終わったみたいで楽になる。
「ありがとう。助かったよ。」
ペルフェットは「いえ。」と控えめに言う。
「そういえば、ビスはどうだ?やらかしてないか。」
「そんなことはないですよ。
少々シェーン様に怒られていましたが、ディグニ様ほどではありません。」
徐々にあの人に似てきていると感じるのは気のせいだろうか。
「ああ、それと一つ謝らないといけないことがあります。」
珍しいなと思いながら、耳を傾ける。
「今シェーン様と一緒魔法を教えています。」
驚きよりも納得が勝る。ただ、一つ確認しなければいけない。
俺はペルフェットをじっと見る。
「ビスはなんて言ってる?」
「僕は魔法を使いたい、そう申していました。」
「そうか。なら俺から何か言うことはないよ。
無理強いしている別だったけどな。ビスは楽しそうか。」
「ええ、とても。シェーン様とも仲良くしています。
なんだか姉弟みたいで微笑ましいですよ。
シェーン様も久々に楽しいのかはしゃいでいます。」
ペルフェットは、顔も声色もあまり変わっていないが、
なんだか嬉しそうだった。
「そうか、それはよかった。」
「それでは、私はこれで。二人が待っていますから。」
俺はしばらく横になっていた。足音が聞こえて目が覚めてしまったらしい。
体を起こすとそこには王様とルトさんがいた。そして告げられる。
「二週間後、レーグル王国に向かってくれ」と。
――――――――――――――――――――
王様が考え出した答え。それは時間を置くことだった。
ただ、時間を置くだけではない。周辺を少数で警戒しつつ、
集められるだけ情報を手に入れ出発すること。それが最善の策だと。
「俺ならすぐにでも出発できます。」
どうしようもなかったことだとしても、今回の件負い目を感じている。
それにフィロ様が危険な目に遭う可能性もあった。
「負い目を感じているのもわかります。
それに、あなたは今、万全な状態ではないでしょう。
相手の力量もわかっていません。逆に危険です。」
「それでも、俺は・・・」
「黙りなさい!王が決めたことです。」
ルトさんの怒声を久しぶりに聞いた。頭が冷める。
今、モーヴェ王国は綱渡りしている状態だ。一歩間違えれば底に落ちてしまう。
それに、王様の気持ちも考えず発言してしまった。俺は王様に深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。」
王様はゆっくりと静かに問いかけてくる。
「よい。お前の気持ちもわかる。
だがフィロの一件で国民に慌ただしい様子を見せてしまった。
お前がすぐに動いてしまうと余計に国民を不安にさせてしまう可能性がある。
それに捕虜にかけられた魔法、ペルフェット曰く相当高度の魔法らしい。
少なくても一人相当腕の立つ敵がいると思っていい。
お前の怪我が完治するのも二週間程度かかると言っておった。
お前の気持ちを考えると二週間が最低ラインだ。
まあ、お前の気持ちだけで送るわけではないが。
最大の譲歩だということをわかってくれ。
私の命令に従ってくれるか。」
ずるい。こんな自身にも言い聞かせているような言い方。承諾するしかない。
「はい。」
下を向いてしまう。王様に肩をポンと叩かれる。
足音と扉を開閉する音だけがその場に残った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結済】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる