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第一章 出会い
出発
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日が昇り始めた頃、僕たちは城を出発する。
城門にはルトさんがいた。
ルトさんは一言。
「いってらっしゃいませ。お気をつけて。」
そういって深々と頭を下げていた。
久しぶりに国の入り口に来た。最初に来て以来だった。
そこには、ハウ、そしてクラフトがいる。
「おう、英雄は忙しいな。」
ハウは軽口を言う。
「ああ、忙しいんだ。」
今日は噛みつかない。ハウは、ディグニの耳元で何かいっていた。
でも、クラフトがハウと一緒にいるのだろうと疑問に思う。
「王様の命令でな。レーグル王国に行くことは結構前から決まっていたんだ。
俺も一緒に行くから、宜しくな。ビス。」
ディグニは知っていたらしい。教えてくれても良かったのに。
橋を渡り、丘を下っていく。モーヴェ王国が小さくなっていく。
しばらく進むと見知った人たちが立っていた。
一人は仁王立ちして。朝日に照らされ首元が光っている。
そこには、シェーンとペルが立っていた。僕たちは馬から降りる。
「遅かったわね。待ちくたびれたわよ。」
「なぜここに⁉それにその装備。」
「私も連れてって。」
「無理です。今すぐ城に戻ってください!ペルフェットがいながらなんで。」
ディグニはペルに視線を向ける。だが、ペルは口を噤んでいた。
「ペルは悪くないわ。私が勝手に着いてきたの。
ペルはお父様の命令でここにいるの。」
「そうでしたか。それではシェーン様今すぐ城に戻ってください。」
ディグニは、淡々と言う。
「嫌よ。私も連れてって。」
ディグニとシェーンは視線をぶつけ合う。
二人の時が止まっているかのようだった。
「なっ⁉」
沈黙を破ったのはディグニだった。
急に声を出すものだから、シェーンとクラフトは驚いていた。
ただ、僕は驚かない。見ていたからだ。
ペルがディグニに目では見えないくらいの小さな光を飛ばすのを。
その光が頭に吸い込まれた瞬間ディグニは奇声を発した。
「どうかしたの?」
「いや、ちょっと虫がいたもので。」
「虫ぐらいで騒ぐなんて情けない。
それよりわたしも行くからね。ダメって言われても後ろに着いて行くから。」
しばらくディグニは下を向き、顎を触っていた。
「はあ、わかりました。ただ、これだけは覚えていてください。
レーグル王国に遊びに行くわけではありません。
あなたを一人の傭兵として接します。
突然何者かに襲われる可能性があります。
その時は自分の身は自分で守ってください。
絶対に誰かが助けてくれるなんて思いは捨ててください。いいですね。」
ドスの効いた声がシェーンに向かう。
「わ、わかったわよ。」
腰につけている剣に手をやっていた。
「クラフトさんもそれでいいですか?」
「ああ、この小隊のリーダーはお前だ。
王様にも今回はディグニの指示に従ってくれと言われてしまった。
お前を信じるよ。ただ、疑問に思ったことは言わせてもらう。」
「ありがとうございます。少し遅れました。急ぎましょう。」
シェーンが僕に近寄ってくる。
「挨拶していかないなんてひどいじゃない。」
僕を小突いてくる。
「ご、ごめんなさい。」
「ビス。あなたはわかりやすいのよ。
あんなタイミングでプレゼント渡して来るなんて。
魔法の練習への力の入り具合から何かあるとは思っていたけれど。
ペルも休みが欲しいって言いだすし。怪しまない方がおかしいじゃない。
ペルを問い詰めたらあっさり話してくれたわ。
まあ、ペルがレーグル王国に行くってところだけだけどね。
それでペルの荷物に隠れてここまで来たの。
誰かを待つっていうから誰が来るかと思ったけど、予想通りだったわ。」
やっぱり僕はわかりやすいらしい。シェーンにはお見通しだったみたい。
隠すのがうまくならなくちゃと思うばかりである。
「まあ、いいわ。それに私も抜け出す準備をしていたし。
あいつに一言言ってやらないと気が済まないもの。」
目は僕を向いているのに、僕を見ていないような感覚。
それにいつもの雰囲気ではない。
今まで奥底に貯めていたいろんなものが
混座り合って真っ黒くなった何かがシェーンからもれていた。
「おい、二人とも何している。早く行くぞ。」
ディグニに声をかけられていつものシェーンに戻った。
僕はセフォンに駆け寄ると、ディグニが引っ張りあげてくれる。
シェーンは白馬にペルと二人乗りをしていた。
城門にはルトさんがいた。
ルトさんは一言。
「いってらっしゃいませ。お気をつけて。」
そういって深々と頭を下げていた。
久しぶりに国の入り口に来た。最初に来て以来だった。
そこには、ハウ、そしてクラフトがいる。
「おう、英雄は忙しいな。」
ハウは軽口を言う。
「ああ、忙しいんだ。」
今日は噛みつかない。ハウは、ディグニの耳元で何かいっていた。
でも、クラフトがハウと一緒にいるのだろうと疑問に思う。
「王様の命令でな。レーグル王国に行くことは結構前から決まっていたんだ。
俺も一緒に行くから、宜しくな。ビス。」
ディグニは知っていたらしい。教えてくれても良かったのに。
橋を渡り、丘を下っていく。モーヴェ王国が小さくなっていく。
しばらく進むと見知った人たちが立っていた。
一人は仁王立ちして。朝日に照らされ首元が光っている。
そこには、シェーンとペルが立っていた。僕たちは馬から降りる。
「遅かったわね。待ちくたびれたわよ。」
「なぜここに⁉それにその装備。」
「私も連れてって。」
「無理です。今すぐ城に戻ってください!ペルフェットがいながらなんで。」
ディグニはペルに視線を向ける。だが、ペルは口を噤んでいた。
「ペルは悪くないわ。私が勝手に着いてきたの。
ペルはお父様の命令でここにいるの。」
「そうでしたか。それではシェーン様今すぐ城に戻ってください。」
ディグニは、淡々と言う。
「嫌よ。私も連れてって。」
ディグニとシェーンは視線をぶつけ合う。
二人の時が止まっているかのようだった。
「なっ⁉」
沈黙を破ったのはディグニだった。
急に声を出すものだから、シェーンとクラフトは驚いていた。
ただ、僕は驚かない。見ていたからだ。
ペルがディグニに目では見えないくらいの小さな光を飛ばすのを。
その光が頭に吸い込まれた瞬間ディグニは奇声を発した。
「どうかしたの?」
「いや、ちょっと虫がいたもので。」
「虫ぐらいで騒ぐなんて情けない。
それよりわたしも行くからね。ダメって言われても後ろに着いて行くから。」
しばらくディグニは下を向き、顎を触っていた。
「はあ、わかりました。ただ、これだけは覚えていてください。
レーグル王国に遊びに行くわけではありません。
あなたを一人の傭兵として接します。
突然何者かに襲われる可能性があります。
その時は自分の身は自分で守ってください。
絶対に誰かが助けてくれるなんて思いは捨ててください。いいですね。」
ドスの効いた声がシェーンに向かう。
「わ、わかったわよ。」
腰につけている剣に手をやっていた。
「クラフトさんもそれでいいですか?」
「ああ、この小隊のリーダーはお前だ。
王様にも今回はディグニの指示に従ってくれと言われてしまった。
お前を信じるよ。ただ、疑問に思ったことは言わせてもらう。」
「ありがとうございます。少し遅れました。急ぎましょう。」
シェーンが僕に近寄ってくる。
「挨拶していかないなんてひどいじゃない。」
僕を小突いてくる。
「ご、ごめんなさい。」
「ビス。あなたはわかりやすいのよ。
あんなタイミングでプレゼント渡して来るなんて。
魔法の練習への力の入り具合から何かあるとは思っていたけれど。
ペルも休みが欲しいって言いだすし。怪しまない方がおかしいじゃない。
ペルを問い詰めたらあっさり話してくれたわ。
まあ、ペルがレーグル王国に行くってところだけだけどね。
それでペルの荷物に隠れてここまで来たの。
誰かを待つっていうから誰が来るかと思ったけど、予想通りだったわ。」
やっぱり僕はわかりやすいらしい。シェーンにはお見通しだったみたい。
隠すのがうまくならなくちゃと思うばかりである。
「まあ、いいわ。それに私も抜け出す準備をしていたし。
あいつに一言言ってやらないと気が済まないもの。」
目は僕を向いているのに、僕を見ていないような感覚。
それにいつもの雰囲気ではない。
今まで奥底に貯めていたいろんなものが
混座り合って真っ黒くなった何かがシェーンからもれていた。
「おい、二人とも何している。早く行くぞ。」
ディグニに声をかけられていつものシェーンに戻った。
僕はセフォンに駆け寄ると、ディグニが引っ張りあげてくれる。
シェーンは白馬にペルと二人乗りをしていた。
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