ヒレイスト物語

文字の大きさ
58 / 171
第三章 変化

緊張感のある食事

しおりを挟む
稽古も終わり今夕食を取っている。俺は今とても緊張していた。
目の前にシェーンが座っているかじゃない。前とは違う風景。そ
う王様が一緒の食卓にいるのだ。いつになってもなれない。
いつもではないが、時間がある時は一緒の食卓にいるようになったのだ。

「ビス、どうだった。久しぶりにいったハウの宿は?」

「はい。前の宿と変わらない程度になっていました。」

「おう、それは良かった。」

そして、静寂に包まれる。気まずい。どうするべきか。
いつも固く口を閉ざしていたシェーンが口を開いた。何だか嫌な予感がする。
今日は厄日だろうかと思うぐらい嫌な予感しかない。


「はあ、お父様お仕事はいいんですか?」

「まだあるが。それがどうかしたか?」

「そうでしたか。いえただ、王様とあろうお方が仕事をほっぽってこんなところで呑気に食事を取っているなんてと思っただけです。気にしないでください。」

いや、気にしない方が難しいだろ。
俺に言われたわけでもないのにグサっと来たぞ。
それに娘にそんなこと言われたら・・・。
やっぱり、王様は泣きそうな顔になっている。

「んん。王様。急用でお話したい案件が。」

それを見かねたのかルトさんが割って入ってきた。

「そ、そうか。それは残念だ。食事の途中に済まない。
私は失礼する。ビスもゆっくり食事を楽しんでくれ。」

「あら、そうでしたか?それは残念ですね。」

王様はシェーンの言葉を無視、いや反応できず食堂を去っていく。
去っていく王様の背中は哀愁が漂っていた。ルトさんはフォローが大変だろうと思ったが、これに関してはそんなことをしないと思い出す。
逆に追い打ちをかけるはずだ。王様が不便で仕方ない。
そう思っているとルトさんがこちらに向かってきて耳打ちをしてきた。
そして俺の答えを待たず去っていった。





こっちの親子も絶賛喧嘩中であった。
5年前からずっと。良くなるどころか余計悪くなっていっているように感じる。
それを気にしてなのかわからないがシェーンと一緒に食事を取るようにしているみたいだ。まあ、王様とシェーンの会話はあまりないし、あったとしてもシェーンのそっけない言葉ですぐ終わってしまう。気まずいなんてものではない。逃げ出したいくらいだ。一人部屋で食事を取ろうともした。でも、シェーンはそれを許してはくれなかった。


「ビスあなた、早く慣れなさいよ。」

「慣れたくないですよ。あれの雰囲気は。
それに今朝も味わったばかりなんですよ。・・・もう沢山です。」

「あら、そうなの?それは災難だったわね。」

そう思うならどうにかしてくれと思ったが、口には出さない。何を言っても無駄だと分かっているから。ディグニがいた頃は、ディグニが何とかしようと尽力したがどうにもできなかった。あれをそばで見てきたのだ。諦めも肝心である。




食事も終わり食堂から移動しようとした時シェーンに声を掛けられた。
「そうだ、このあと久しぶりに一緒に図書室行かない?
新しい本も今朝入ってきたみたいだし。どう?」


それは気になる。でも、先約がある。残念だけど断るしかなさそうだ。


「申し訳ありません。この後用事がありまして・・・」


「そう。それは仕方ないわね。じゃあ、ここで。」


シェーンは一人で食堂を去っていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界魔法、観察してみたら

猫チュー
ファンタジー
異世界に転生した少年レイは、ある日、前世の記憶を取り戻す。 未知でありながら日常の一部となっている魔法に強い興味を抱いた彼は、村の魔法オババに師事し、修行の日々を送る。 やがてレイは、この世界の魔法が、地球で学んだ知識と多くの共通点を持つことに気づいていく。 師の元を離れ、世界を知っていく中で、少年は魔法を観察し、考え、少しずつ理解を深めていく。 これは、少年レイが世界を、魔法を、科学していく物語。

婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした

宮之みやこ
恋愛
細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルが婚約者のハージェス王子に付けられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。 「一族は皆美形なのにどうして私だけ?」 辛く思いながらも自分にできる努力をしようと頑張る中、ある日ついに公の場で婚約解消を言い渡されてしまう。どうやら、ハージェス王子は弟のクロード王子の婚約者であるモルガナ侯爵令嬢と「真実の愛」とやらに目覚めてしまったらしい。 (この人たち、本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

感情の贈与税 〜光の加護より、確かな契約。没落令嬢による国家再生録〜

しょくぱん
恋愛
「君のような地味な女、僕の隣にふさわしくない」 魔王軍を討伐し、凱旋した公爵令息カシアンが放ったのは、婚約者エレナへの冷酷な決別だった。 彼の傍らには、可憐な「救国の聖女」レティシア。 だがカシアンは忘れていた。彼の眩い金髪も、魔王を圧倒した剣技も、すべてはエレナが十年間「愛の贈与」として捧げ続けた魔力の賜物であることを。 「……承知いたしました。では、滞納分を含め、全魔力を今この場で『徴収』いたします」

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? ********* 以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。 内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。

婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します

黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。 断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。 ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている! 「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」 イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。 前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。 クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。 最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。 やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く! 恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!

処理中です...