ヒレイスト物語

文字の大きさ
83 / 171
第三章 変化

忘れていたこと

しおりを挟む
シェーンの部屋に向かう途中、王様にばったりと出くわした。何だか嫌な予感がする。何だろうかこの胸に突っかかるものは。もう少しで出てきそうなのだが。俺は廊下の端により会釈してやり過ごそうとする。だが、そんな考えは虚しく終わった。


「おう、ビス。食堂に来ないから心配したぞ。ここで合わなければ部屋まで行っていたところだったぞ。・・・それにシェーンも来なかったしな。」


どうやら、今日は本来の時間に食堂にいけていたらしい。いや、王様なりに気を使って時間をつくってくれたのか。ただ、心配とは別の感情が漏れ出ている。何か薄暗いオーラを纏っているように感じた。その姿を見た瞬間すべてを悟った。ああ、あの事かと。そのあとは顔をあげられなかった。そのオーラが俺にのしかかってきたからだ。


「申し訳ありません。一人になる時間が欲しかったもので。」


「ほう、そうであったか。」


疑問が取れたのか、少し軽くなった。ただ、まだオーラは襲いかかっている。まだ何かあるのか。


「して今からお前はどこに向かっているのだ?」


そういうことかといままでの会話で理解した。それにこの場所。この先用事があっていくところなど限られてくる。王様はその帰りだったのだろう。だが、追い返されたそんなところか。俺は嘘をつきたかったが、ここまで来て騙しきれるはずもない。どう転んでもこのオーラにめった刺しにされるだろう。であれば正直に話す方が無難だ。


「シェーン様の部屋に向かっています。午後に約束をしておりましたので。」


「ほう、ほう。そうかそうか。そうであったか。仲がいいことで何よりだ。・・・私は追い返されたというのに。」


目の前からピキピキと何かが引きつっている音が聞こえてくる。俺は何も言い返せない。まあ、言い返したところで返答されることはないだろう。その言葉を言った後王様が俺に近づいている感じがする。そして小声でこう吐き捨てた。


「まあ、仲がいいのはいいことだが。ほどほどにな。周りの目があることを忘れることのないように。」


と、吐き捨て去っていった。





「はあ。」


俺は王様が去ったことに安堵し大きな溜息が出た。あの人は自分の子どものことになると王様の仮面が剥がれる。前に玉座で勇ましくルトさんに“八つ当たりをするのはやめないか”と言っていた王様はどこにいったのやら。

まあ、わかる。わかるのだが、やめていただきたい。生きた心地がしないのだ。殺気が半端ない。声は淡々としているのに、他のところで殺しにかかってくる。今になって汗がトロリと垂れてきた。


「はあ、どうにかならないものか。」



そう言葉にしても変わらないことはわかっていても、微かな願いを込めて発してみる。やはりというべきかその言葉はどこにも届かず消えていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

気弱令嬢の悪役令嬢化計画

みおな
ファンタジー
 事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?  しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?  いやいやいや。 そんなことだから、冤罪で処刑されるんでしょ!  せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。  屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?

まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました

菱沼あゆ
ファンタジー
 妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。  残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。  何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。  後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。 (小説家になろうでも掲載しています)

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

異世界魔法、観察してみたら

猫チュー
ファンタジー
異世界に転生した少年レイは、ある日、前世の記憶を取り戻す。 未知でありながら日常の一部となっている魔法に強い興味を抱いた彼は、村の魔法オババに師事し、修行の日々を送る。 やがてレイは、この世界の魔法が、地球で学んだ知識と多くの共通点を持つことに気づいていく。 師の元を離れ、世界を知っていく中で、少年は魔法を観察し、考え、少しずつ理解を深めていく。 これは、少年レイが世界を、魔法を、科学していく物語。

男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す

天岸 あおい
ファンタジー
久遠の花と呼ばれる優秀な薬師の一族。 そんな彼らを守り続けていた、守り葉と呼ばれし者たち。 守り葉として育てられた子供・みなもだったが、ある日隠れ里を襲われ、生き別れた姉・いずみや仲間たちとの再会を夢見て薬師として生きながら、行方を捜していた。 そんなみなもの元へ現れた、瀕死の重傷を負った青年レオニード。 彼との出会いがみなもの運命の歯車を動かしていく―――。 男装の麗人で、芯が強くて自分の手を汚すことを厭わない主人公と、そんな一筋縄ではいかない主人公を一途に想う、寡黙で真面目な青年の物語。 R18ではありませんが、後半は大人向けの展開になっています。 ※他サイトで公開していたものを改題・改稿しております。 ※今作は非BLです。期間限定で掲載致します。

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します

黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。 断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。 ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている! 「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」 イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。 前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。 クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。 最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。 やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く! 恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...