ヒレイスト物語

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第三章 変化

忘れていたこと

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シェーンの部屋に向かう途中、王様にばったりと出くわした。何だか嫌な予感がする。何だろうかこの胸に突っかかるものは。もう少しで出てきそうなのだが。俺は廊下の端により会釈してやり過ごそうとする。だが、そんな考えは虚しく終わった。


「おう、ビス。食堂に来ないから心配したぞ。ここで合わなければ部屋まで行っていたところだったぞ。・・・それにシェーンも来なかったしな。」


どうやら、今日は本来の時間に食堂にいけていたらしい。いや、王様なりに気を使って時間をつくってくれたのか。ただ、心配とは別の感情が漏れ出ている。何か薄暗いオーラを纏っているように感じた。その姿を見た瞬間すべてを悟った。ああ、あの事かと。そのあとは顔をあげられなかった。そのオーラが俺にのしかかってきたからだ。


「申し訳ありません。一人になる時間が欲しかったもので。」


「ほう、そうであったか。」


疑問が取れたのか、少し軽くなった。ただ、まだオーラは襲いかかっている。まだ何かあるのか。


「して今からお前はどこに向かっているのだ?」


そういうことかといままでの会話で理解した。それにこの場所。この先用事があっていくところなど限られてくる。王様はその帰りだったのだろう。だが、追い返されたそんなところか。俺は嘘をつきたかったが、ここまで来て騙しきれるはずもない。どう転んでもこのオーラにめった刺しにされるだろう。であれば正直に話す方が無難だ。


「シェーン様の部屋に向かっています。午後に約束をしておりましたので。」


「ほう、ほう。そうかそうか。そうであったか。仲がいいことで何よりだ。・・・私は追い返されたというのに。」


目の前からピキピキと何かが引きつっている音が聞こえてくる。俺は何も言い返せない。まあ、言い返したところで返答されることはないだろう。その言葉を言った後王様が俺に近づいている感じがする。そして小声でこう吐き捨てた。


「まあ、仲がいいのはいいことだが。ほどほどにな。周りの目があることを忘れることのないように。」


と、吐き捨て去っていった。





「はあ。」


俺は王様が去ったことに安堵し大きな溜息が出た。あの人は自分の子どものことになると王様の仮面が剥がれる。前に玉座で勇ましくルトさんに“八つ当たりをするのはやめないか”と言っていた王様はどこにいったのやら。

まあ、わかる。わかるのだが、やめていただきたい。生きた心地がしないのだ。殺気が半端ない。声は淡々としているのに、他のところで殺しにかかってくる。今になって汗がトロリと垂れてきた。


「はあ、どうにかならないものか。」



そう言葉にしても変わらないことはわかっていても、微かな願いを込めて発してみる。やはりというべきかその言葉はどこにも届かず消えていった。
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