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第三章 変化
謎の行動(1)
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それにしても、噂とは怖いものだ。この数日で王様の耳に入っている。それに、今にして思えば、使用人とすれ違うたびに変な感じはしていたのだ。ただ、その時の俺はそれどころではなかった。見逃していても当然か。もう遅いと思うが、周辺を気にして部屋の扉をノックする。
「ビスです。入ってもいいですか?」
早く入りたかった。誰かが来るのではないかという緊張感から解放されたい。
「ええ、いいわよ。」
願いが届いたのか今回はすぐに入ることができた。あんまり部屋の様子は変わっていなかったけれども。
俺は前と同じ位置に向かった。
「それにしても、早かったわね。早めに準備しといてよかったわ。」
これで人を迎える準備が終わっているのかと思ったが何も言うまい。言ったところで変わるはずもないし、それ以上に反撃が怖い。
「それで用事って何ですか?」
「ああ、その行く相手は決まったの?」
「え、ええ。決まりましたよ。モルテと一緒に行くことになりました。」
「そう、説得に成功したのね。良かったじゃない。」
「はい。でも、大変だったんですよ。説得に一日中かかってしまいました。いやー、本当に大変ですね。親子の関係ってやつも。」
「そうよ、大変なの。」
なぜか今度はブローが入ったらしい。シェーンは下を向き、何か考え込んでいるみたいだ。だが、それ以上はこの話題を引っ張るつもりはないようである。
「それより、モルテのことちゃんと見てないとダメよ。ビスの方が年上なんだからあなたがしっかりしないと。今回はあなたが引っ張らないといけないんだから。」
世話焼きというかなんというか。その辺はあの時と変わらないな。
「わかってますよ。」
「そう。それならいいのだけれど。」
シェーンの表情は晴れることはなかった。全然いいとは思っていないようだ。俺は気にしない。というか気にしても仕方ないことだ。もう決まったことなのだから。それにしても、それだけでここに呼んだのだろうか。確かにこの件は他人に聞かれてはまずい部分もあるが、今までの会話だけでは別にここでも良かったはずだ。
「あのシェーン様。話はこれだけですか?」
無意識にその言葉を発していた。シェーンの顔は徐々に力が入っていくように感じられた。
「何よ。私と一緒にいたくないの?」
俺が早くここから立ち去りたいように思ったのかシェーンはそう言った。
「い、いえ。そういうわけではないのですが。何か他にも話があるように感じられたのでつい。」
シェーンは顔を背け、鼻を鳴らす。
「ふん。別にいいわよ。・・・ 用はあるわ。魔法を見せなさい。約束したでしょ。」
一瞬何か考え込んだような気がするが気のせいだろうか。まあ、いいかと思い、俺は見回して辺りの状況を確認する。大丈夫なのだろうか。
「ここでですか?」
「ち、違うわよ。いつもの場所よ。」
「で、ですよね。」
危なくここで魔法を出すところだった。そんなことをしたら大惨事になっていたはずだ。それにしても、シェーンの様子がおかしい。さっきからこっちを一瞥すらしてこない。いつもならこっちの様子をくまなく見ているのに。ちょっとカマを掛けてみる。
「だったらここじゃなくてあっちで待ち合せればよかったのではないですか?」
「う、うるさいわね。いいから早く行くわよ。」
シェーンは慌てた様に扉の方に向かう。俺も慌ててシェーンを追った。下に散らばっているものを踏まないように。
「待ってくださいよ。」
俺の言葉も聞かずにスタスタと言ってしまう。そして扉をバンっと開いて部屋から出ていく。
「あーもう。」
慎重にそれでいて早くというのはもどかしさが半端ない。扉に着いた時にはもう締まりきっている。扉を開けても、すでにシェーンは姿がないだろうと覚悟する。
「ビスです。入ってもいいですか?」
早く入りたかった。誰かが来るのではないかという緊張感から解放されたい。
「ええ、いいわよ。」
願いが届いたのか今回はすぐに入ることができた。あんまり部屋の様子は変わっていなかったけれども。
俺は前と同じ位置に向かった。
「それにしても、早かったわね。早めに準備しといてよかったわ。」
これで人を迎える準備が終わっているのかと思ったが何も言うまい。言ったところで変わるはずもないし、それ以上に反撃が怖い。
「それで用事って何ですか?」
「ああ、その行く相手は決まったの?」
「え、ええ。決まりましたよ。モルテと一緒に行くことになりました。」
「そう、説得に成功したのね。良かったじゃない。」
「はい。でも、大変だったんですよ。説得に一日中かかってしまいました。いやー、本当に大変ですね。親子の関係ってやつも。」
「そうよ、大変なの。」
なぜか今度はブローが入ったらしい。シェーンは下を向き、何か考え込んでいるみたいだ。だが、それ以上はこの話題を引っ張るつもりはないようである。
「それより、モルテのことちゃんと見てないとダメよ。ビスの方が年上なんだからあなたがしっかりしないと。今回はあなたが引っ張らないといけないんだから。」
世話焼きというかなんというか。その辺はあの時と変わらないな。
「わかってますよ。」
「そう。それならいいのだけれど。」
シェーンの表情は晴れることはなかった。全然いいとは思っていないようだ。俺は気にしない。というか気にしても仕方ないことだ。もう決まったことなのだから。それにしても、それだけでここに呼んだのだろうか。確かにこの件は他人に聞かれてはまずい部分もあるが、今までの会話だけでは別にここでも良かったはずだ。
「あのシェーン様。話はこれだけですか?」
無意識にその言葉を発していた。シェーンの顔は徐々に力が入っていくように感じられた。
「何よ。私と一緒にいたくないの?」
俺が早くここから立ち去りたいように思ったのかシェーンはそう言った。
「い、いえ。そういうわけではないのですが。何か他にも話があるように感じられたのでつい。」
シェーンは顔を背け、鼻を鳴らす。
「ふん。別にいいわよ。・・・ 用はあるわ。魔法を見せなさい。約束したでしょ。」
一瞬何か考え込んだような気がするが気のせいだろうか。まあ、いいかと思い、俺は見回して辺りの状況を確認する。大丈夫なのだろうか。
「ここでですか?」
「ち、違うわよ。いつもの場所よ。」
「で、ですよね。」
危なくここで魔法を出すところだった。そんなことをしたら大惨事になっていたはずだ。それにしても、シェーンの様子がおかしい。さっきからこっちを一瞥すらしてこない。いつもならこっちの様子をくまなく見ているのに。ちょっとカマを掛けてみる。
「だったらここじゃなくてあっちで待ち合せればよかったのではないですか?」
「う、うるさいわね。いいから早く行くわよ。」
シェーンは慌てた様に扉の方に向かう。俺も慌ててシェーンを追った。下に散らばっているものを踏まないように。
「待ってくださいよ。」
俺の言葉も聞かずにスタスタと言ってしまう。そして扉をバンっと開いて部屋から出ていく。
「あーもう。」
慎重にそれでいて早くというのはもどかしさが半端ない。扉に着いた時にはもう締まりきっている。扉を開けても、すでにシェーンは姿がないだろうと覚悟する。
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