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第三章 変化
凝り固まった表情
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気まずい時間がようやく終わった。階段を降り目的地に着いたのだ。だが、俺の顔は長い時間同じ顔をしていたからか固まって動かない。徐々にほぐれていくが、その変わりに変な顔をしているに間違いないだろう。
「ビス、早く明かりをつけて。」
「はい。・・・すみません。ちょっと離れてもらえますか?魔法が使えませんので」
そう言うとシェーンは何も言わずに離れていく。俺の腕を投げた反動で離れるように。
「目を少し閉じててくださいね。・・・ルチェ・ソラーレ」
辺りが光に包まれる。暗いところにいたためか、目はすぐには開けられなかった。徐々に慣れていき半目は開けたところでシェーンに言われてしまう。シェーンの方が先に光になれたようだ。
「ビス、あなた何て顔しているのよ。」
ほらな。言われてしまった。しかし、やっと見られたシェーンの顔は俺のようにはなっていなかった。ただ、少し赤みがかっているように感じられた。
「何から、出せばいいですか?」
「何でもいいわ。」
そういいながら、シェーンは俺に背中を向けて離れていく。そして十分に距離を取ったのかこちらに振り返り、愛用のレイピアを構えている。いつの間に持っていたのか。今の今まで装備していることすら気付かなかった。
「いつでもいいわよ。」
「はい。それではいきますよ。サンダー」
俺はいつも使い慣れている魔法を使う。そして魔法は一直線にシェーンに向かっていく。シェーンは力を込めている。
「はああああ‼ディファンス」パリン
その言葉でシェーンの周りに薄い膜が出来上がる。しかしそれは一瞬だった。
「シェーン‼」
俺の魔法がシェーンに襲い掛かる。慌てて自分自身の魔法を消し去ろうとした。ただ、それは無駄だったようで、シェーンはレイピアで魔法を弾いた。
「はあ、これもダメだったか。」
シェーンは全然俺の魔法に当たりそうだったのを気にしていないようだった。何だろう何か複雑な気分だ。ただ、何かあると困るので俺はシェーンに駆け寄る。近づくにつれ、何やらブツブツ呟いている。はっきりとは聞こえないが。
「シェーン様。大丈夫ですか?」
何かに夢中だったシェーンは駆け寄ってきた俺に気付いていなかったようで話かけてようやく気付いたみたいだ。
「ん?ええ。大丈夫よ。」
「そうか。よかった。・・・って大丈夫じゃないじゃないか。手から血が出てますよ。」
ホッとし方を撫でおろし視線が下に向いた時目に入ったのだ。左手は握り拳になっておりそこからポトッポトっと血が滴り落ちていた。
「ああ、割れちゃったみたいね。」
何か考え事に夢中だったのか気付いていなかったらしい。そう言ってシェーンは拳を開いた。中には黒い破片があった。いくつか刺さっているものがありそこから血が出てるようだった。
「ビス、早く明かりをつけて。」
「はい。・・・すみません。ちょっと離れてもらえますか?魔法が使えませんので」
そう言うとシェーンは何も言わずに離れていく。俺の腕を投げた反動で離れるように。
「目を少し閉じててくださいね。・・・ルチェ・ソラーレ」
辺りが光に包まれる。暗いところにいたためか、目はすぐには開けられなかった。徐々に慣れていき半目は開けたところでシェーンに言われてしまう。シェーンの方が先に光になれたようだ。
「ビス、あなた何て顔しているのよ。」
ほらな。言われてしまった。しかし、やっと見られたシェーンの顔は俺のようにはなっていなかった。ただ、少し赤みがかっているように感じられた。
「何から、出せばいいですか?」
「何でもいいわ。」
そういいながら、シェーンは俺に背中を向けて離れていく。そして十分に距離を取ったのかこちらに振り返り、愛用のレイピアを構えている。いつの間に持っていたのか。今の今まで装備していることすら気付かなかった。
「いつでもいいわよ。」
「はい。それではいきますよ。サンダー」
俺はいつも使い慣れている魔法を使う。そして魔法は一直線にシェーンに向かっていく。シェーンは力を込めている。
「はああああ‼ディファンス」パリン
その言葉でシェーンの周りに薄い膜が出来上がる。しかしそれは一瞬だった。
「シェーン‼」
俺の魔法がシェーンに襲い掛かる。慌てて自分自身の魔法を消し去ろうとした。ただ、それは無駄だったようで、シェーンはレイピアで魔法を弾いた。
「はあ、これもダメだったか。」
シェーンは全然俺の魔法に当たりそうだったのを気にしていないようだった。何だろう何か複雑な気分だ。ただ、何かあると困るので俺はシェーンに駆け寄る。近づくにつれ、何やらブツブツ呟いている。はっきりとは聞こえないが。
「シェーン様。大丈夫ですか?」
何かに夢中だったシェーンは駆け寄ってきた俺に気付いていなかったようで話かけてようやく気付いたみたいだ。
「ん?ええ。大丈夫よ。」
「そうか。よかった。・・・って大丈夫じゃないじゃないか。手から血が出てますよ。」
ホッとし方を撫でおろし視線が下に向いた時目に入ったのだ。左手は握り拳になっておりそこからポトッポトっと血が滴り落ちていた。
「ああ、割れちゃったみたいね。」
何か考え事に夢中だったのか気付いていなかったらしい。そう言ってシェーンは拳を開いた。中には黒い破片があった。いくつか刺さっているものがありそこから血が出てるようだった。
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