ヒレイスト物語

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第三章 変化

勝手に動く口

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「ふん。そんなことにはならないわよ。」


「そうだといいんですけどね。」


別にシェーンのことを信じていないわけではない。ただの自己満足のためにしているのかもしれない。それをするだけで少しは心が落ち着いたから。


「上着来たわよ。」


振り返るとそこにはほんのり頬を染めたシェーンがいた。


「な、何よ。」


どうやらシェーンを見つめたまま固まってしまっていたみたいだ。


「あ、ああ何でもないよ。ほら、またするんだろう。」


俺は身を翻し元の位置に戻ろうとする。そうしたところでシェーンに腕を握られてしまう。


「やっぱりいいわ。今日はここまで。それよりちょっと話しましょうよ。ほらこっち来て。」


振り返ると、シェーンはその場に座り込み開いた手で地面を叩いていた。俺はそれに従うように手を叩いたところに座り込んだ。




そのあとはたわいもない話をした。主にシェーンの愚痴だが。それでも楽しかった。いや、楽しいとはちょっと別な何か。こう落ち着くというか、それでいてかき乱されるというかそんな相反するものが入り混じっている。それがやけに心地よかった。これがずっと続けばいいのにとすら思えてしまう。そして何を思ったのか俺の口は勝手に動く。



「シェーン様、明日一日付き合ってくれませんか?」



脈絡もなくそんな言葉を発していた。自分で言った言葉なのに困惑してしまう。


「え?明日ってあなたもう・・・」


そんな言葉にシェーンも困惑していた。ただ、俺とは別のところに困惑しているような気がした。そんな姿を見て、俺は慌ててなかったことにしようとする。


「わ、忘れてください。シェーン様も色々忙しいですよね。」


「そ、そんなことないわ。一日ぐらい時間は空けられるわ。」


二人とも混乱していた。シェーンの目は渦巻になっている。自分自身の目は見られないがおそらくシェーンと同じようになっているだろう。


「そ、そうですか。じゃあ、明日町にでも出かけませんか?」



「え、ええ。いいわね。じゃあそれで。・・・私用事を思い出したから先に戻るわね。」


「あ、はい。どこ行くかは考えておきますね。」


シェーンはそそくさと去っていく。シェーンがいなくなり冷静になり何てことを言ってしまったのだと後悔してしまう。シェーンが町を歩くなど目立って仕方ないだろう。もし、町で目撃されれば大事になること間違いなしだ。決して楽しみじゃないわけではない。ただ、それ以上に大事になりそうで心配なのだ。


「はあ、どうしたものか。」


そこら辺はシェーンも何かしら策を練ってくれると信じたい。それかシェーンも冷静になって夕食を食べる頃には考えが変わっているかもしれない。それまで待つことにした。




それにしても不思議だ。昼食の時あれこれ考え込んで悩んでいたのに、この一瞬で明日の予定ができてしまった。あの一人の時間は無駄だったのだろうか。そんなことはないと思いたい。
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