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第四章 不変
旅立ちの第一歩
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俺は今セフォンとともに国の入り口でモルテを待っていた。
「遅いな、あいつ。」
どうしたのかまさかこの後に及んで行きたくなくなったか、それともハウたちに止められたかしているのだろうか。そう思っていると聞き慣れた足音が聞こえてくる。
「す、すみません。遅くなりました。」
怒りはなかったが、心配はあった。
「どうかしたのか?」
「いえ、そのベルに止められてしまいまして。朝早く出ようとしたんですけど、ベルが部屋の入り口に立ってたんですよ。”モルテお兄ちゃん、行っちゃ嫌。”って。気持ちが一番揺れたかもしれません。」
何とも言えなかった。正直俺もモルテの立場に立ったらどうしていたものか。
「それでどうしたんだ?」
「父さんが無理矢理引き剝がしてくれたんです。”今の内に行け”って。それで今ここにいます。」
なんとなく抱き上げられたベルが暴れまくってハウがボコボコ顔や体を殴られているところが想像できた。そのあとのことを想像するといたたまれない。まあ、それよりもモルテと仲直りできたみたいで良かった。
「そうだったのか。それより早く行くぞ。」
「はい。」
俺たちはそれぞれセフォンたちに乗り国を出る。長く帰って来ないだろう国を背に駆けていく。
日が沈みかけてきた頃、俺たちはまだ予定の半分も進んでいなかった。
「ビスさん。魔物の数多くないですか?」
「ああ、そう、だな‼」
魔物を倒しながら返事をする。モーヴェ王国を出た直後はそんなに魔物の数はいつもと変わらなかった。というか、いつもより少なかったかもしれない。
「嵐の前の静けさってやつか。」
「ビスさん何か言いました?」
「独り言だよ。」
「疲れてるんですか?」
「ああ、疲れてる。少し寝るから後は頼む。」
「わかりました。じゃあ、セフォンに括り付けとかないとダメですね。そしたら、セフォンから落ちても引きずってくれるから安心ですよ。」
「冗談に決まってるだろ‼怖いこと言うなよ」
てっきりモルテは突っ込んでくると思っていた。だが、俺の予想とは反し乗っかってきたのだ。いつもなら考えられないことだ。それだけモルテも疲れているのだろう。
「はあ、本当にそうしようかな。」
疲れがピークまでやってきている。避けて通ることも考えた。だが、それは許されなかった。俺たちを探しているかのように大勢の魔物が闊歩し、隠れる場所すらないのだ。なるべく魔物が少ないところを進み、体力の消耗を抑えている。だが、何か嫌な予感がするのだ。まるでどこかに誘いこまれているような感覚。
最初は最短でいける道を選んで進んでいたが、やめた。別に魔物が塞いでいたわけではない。セフォンが急に立ち止まったのだ。最初何事かと思った。だが、その道を見て考えが変わった。”死”その一文字が頭に浮かんだ。ただの勘だがこれ以上進んではいけないと思った。俺は向きを変えた。モルテには”どこ行くんですか?道間違ったんですか?”と小言を言われたが、俺はそれに乗った。
”ああ、間違った。済まない。こっちだった。”と。それからだ。魔物が多くなってきたのは。モルテに小言を言われるかと思ったが何も言ってこなかった。モルテも俺と同じことをあの時感じていたのか、それともただそれを言うタイミングがなかっただけなのか俺にはわからなかった。
「口を開いてる暇があるなら戦ってくださいよ。」
「わかってるよ。」
俺は魔物に向かって剣を振り下ろす。これがいつまで続くのだろう。小言を言っても始まらない。ここはただ進むしかない。
「遅いな、あいつ。」
どうしたのかまさかこの後に及んで行きたくなくなったか、それともハウたちに止められたかしているのだろうか。そう思っていると聞き慣れた足音が聞こえてくる。
「す、すみません。遅くなりました。」
怒りはなかったが、心配はあった。
「どうかしたのか?」
「いえ、そのベルに止められてしまいまして。朝早く出ようとしたんですけど、ベルが部屋の入り口に立ってたんですよ。”モルテお兄ちゃん、行っちゃ嫌。”って。気持ちが一番揺れたかもしれません。」
何とも言えなかった。正直俺もモルテの立場に立ったらどうしていたものか。
「それでどうしたんだ?」
「父さんが無理矢理引き剝がしてくれたんです。”今の内に行け”って。それで今ここにいます。」
なんとなく抱き上げられたベルが暴れまくってハウがボコボコ顔や体を殴られているところが想像できた。そのあとのことを想像するといたたまれない。まあ、それよりもモルテと仲直りできたみたいで良かった。
「そうだったのか。それより早く行くぞ。」
「はい。」
俺たちはそれぞれセフォンたちに乗り国を出る。長く帰って来ないだろう国を背に駆けていく。
日が沈みかけてきた頃、俺たちはまだ予定の半分も進んでいなかった。
「ビスさん。魔物の数多くないですか?」
「ああ、そう、だな‼」
魔物を倒しながら返事をする。モーヴェ王国を出た直後はそんなに魔物の数はいつもと変わらなかった。というか、いつもより少なかったかもしれない。
「嵐の前の静けさってやつか。」
「ビスさん何か言いました?」
「独り言だよ。」
「疲れてるんですか?」
「ああ、疲れてる。少し寝るから後は頼む。」
「わかりました。じゃあ、セフォンに括り付けとかないとダメですね。そしたら、セフォンから落ちても引きずってくれるから安心ですよ。」
「冗談に決まってるだろ‼怖いこと言うなよ」
てっきりモルテは突っ込んでくると思っていた。だが、俺の予想とは反し乗っかってきたのだ。いつもなら考えられないことだ。それだけモルテも疲れているのだろう。
「はあ、本当にそうしようかな。」
疲れがピークまでやってきている。避けて通ることも考えた。だが、それは許されなかった。俺たちを探しているかのように大勢の魔物が闊歩し、隠れる場所すらないのだ。なるべく魔物が少ないところを進み、体力の消耗を抑えている。だが、何か嫌な予感がするのだ。まるでどこかに誘いこまれているような感覚。
最初は最短でいける道を選んで進んでいたが、やめた。別に魔物が塞いでいたわけではない。セフォンが急に立ち止まったのだ。最初何事かと思った。だが、その道を見て考えが変わった。”死”その一文字が頭に浮かんだ。ただの勘だがこれ以上進んではいけないと思った。俺は向きを変えた。モルテには”どこ行くんですか?道間違ったんですか?”と小言を言われたが、俺はそれに乗った。
”ああ、間違った。済まない。こっちだった。”と。それからだ。魔物が多くなってきたのは。モルテに小言を言われるかと思ったが何も言ってこなかった。モルテも俺と同じことをあの時感じていたのか、それともただそれを言うタイミングがなかっただけなのか俺にはわからなかった。
「口を開いてる暇があるなら戦ってくださいよ。」
「わかってるよ。」
俺は魔物に向かって剣を振り下ろす。これがいつまで続くのだろう。小言を言っても始まらない。ここはただ進むしかない。
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