104 / 171
第四章 不変
勝敗
しおりを挟む
「だんまりして、どうかしたか?」
「いや、別に。」
アシオンは振り返り元の位置へと戻っていった。その隙に俺は自分の手首を治す。そうしなければこのあと手合わせできない。一本取られたままで終わるわけにはいかない。そのあとはアシオンの攻撃を避けるのに徹した。同じ轍は踏まない。
「逃げてばっかりだな。」
アシオンに煽られたが、俺は気にしなかった。攻撃の隙を伺っていたのだ。だが、その隙は一向にやってこない。大剣は攻撃モーションが大きい分、振り切ったあとに隙ができると思ったのだが、それが全然ない。一歩踏み込んでしまえば、大剣の餌食になってしまいそうだった。
「オラオラ。そんなんじゃオレは倒せないぜ。」
アシオンは攻撃の手を緩めることはしなかった。俺はアシオンの強さを認める。だが、隙は誰にでもできるものだ。俺はアシオンの手の力が緩まる瞬間を見逃さなかった。
「おりゃああああ‼」
だが、トレーニングルームには俺の叫び声しか響いていなかった。俺は寸でのところで剣を止めたのだ。勝ちを確信して止めたわけではない。むしろその逆だった。
「なんだよ。気付いたか。」
アシオンはわざと隙を作ったようだった俺の腹にはアシオンの大剣が脇腹にあたっていた。もし、これが戦場であれば俺は死んでいただろう。
「完敗だ、強いな。アシオン。」
「ビスもな。ここまでやるとは思わなかったぜ。いい汗掻いたし今日はここまでだな。それに腹が減った。じゃあまた後でな。」
そう言うとアシオンは先にこの部屋を出て行ってしまった。これが敵ということであれば非常にまずいだろう。正直そうであって欲しくなかった。俺はそう願う。
一つ重大なことを忘れていたことを思い出す。そして案の定俺は空き部屋の前で正座をしていた。
「お前、途中で逃げ出したな。」
「いえ、そのつもりはなかったんですが。ちょっと休憩していただけです。」
「言い訳はいい。・・・はあ、やっぱりお客さんに仕事を手伝わせるのは性に合いません。」
ドイボさんは前の姿に戻っている。どこかに切り替えのスイッチがあるのかと思うぐらい切り替えが一瞬だった。
「午後はしっかりやりますから。」
「いえ、もういいです。・・・あっ。別に怒っているわけではないですよ。もうモルテさんがほとんど終わらせてくれましたのでやる仕事がないんです。」
いつの間に。さすがモルテというべきか。俺が言い出したことなのに、ほとんどをモルテにやらせるなんて申し訳ない気持ちで一杯になった。
「すみません。」
「別に謝らなくて大丈夫ですよ。ビスさんもよくやってくれました。なので、午後はゆっくりしてください。どうやらヘトヘトのようなので。」
俺が何をしていたのかもお見通しみたいだ。ここはお言葉に甘えよう。
「ありがとうございます。」
「じゃあ、お昼を部屋に届けますので待っていてください。」
そう言ってドイボさんは足早に去っていった。
「はあ、俺は何をしているのだろう。」
「いや、別に。」
アシオンは振り返り元の位置へと戻っていった。その隙に俺は自分の手首を治す。そうしなければこのあと手合わせできない。一本取られたままで終わるわけにはいかない。そのあとはアシオンの攻撃を避けるのに徹した。同じ轍は踏まない。
「逃げてばっかりだな。」
アシオンに煽られたが、俺は気にしなかった。攻撃の隙を伺っていたのだ。だが、その隙は一向にやってこない。大剣は攻撃モーションが大きい分、振り切ったあとに隙ができると思ったのだが、それが全然ない。一歩踏み込んでしまえば、大剣の餌食になってしまいそうだった。
「オラオラ。そんなんじゃオレは倒せないぜ。」
アシオンは攻撃の手を緩めることはしなかった。俺はアシオンの強さを認める。だが、隙は誰にでもできるものだ。俺はアシオンの手の力が緩まる瞬間を見逃さなかった。
「おりゃああああ‼」
だが、トレーニングルームには俺の叫び声しか響いていなかった。俺は寸でのところで剣を止めたのだ。勝ちを確信して止めたわけではない。むしろその逆だった。
「なんだよ。気付いたか。」
アシオンはわざと隙を作ったようだった俺の腹にはアシオンの大剣が脇腹にあたっていた。もし、これが戦場であれば俺は死んでいただろう。
「完敗だ、強いな。アシオン。」
「ビスもな。ここまでやるとは思わなかったぜ。いい汗掻いたし今日はここまでだな。それに腹が減った。じゃあまた後でな。」
そう言うとアシオンは先にこの部屋を出て行ってしまった。これが敵ということであれば非常にまずいだろう。正直そうであって欲しくなかった。俺はそう願う。
一つ重大なことを忘れていたことを思い出す。そして案の定俺は空き部屋の前で正座をしていた。
「お前、途中で逃げ出したな。」
「いえ、そのつもりはなかったんですが。ちょっと休憩していただけです。」
「言い訳はいい。・・・はあ、やっぱりお客さんに仕事を手伝わせるのは性に合いません。」
ドイボさんは前の姿に戻っている。どこかに切り替えのスイッチがあるのかと思うぐらい切り替えが一瞬だった。
「午後はしっかりやりますから。」
「いえ、もういいです。・・・あっ。別に怒っているわけではないですよ。もうモルテさんがほとんど終わらせてくれましたのでやる仕事がないんです。」
いつの間に。さすがモルテというべきか。俺が言い出したことなのに、ほとんどをモルテにやらせるなんて申し訳ない気持ちで一杯になった。
「すみません。」
「別に謝らなくて大丈夫ですよ。ビスさんもよくやってくれました。なので、午後はゆっくりしてください。どうやらヘトヘトのようなので。」
俺が何をしていたのかもお見通しみたいだ。ここはお言葉に甘えよう。
「ありがとうございます。」
「じゃあ、お昼を部屋に届けますので待っていてください。」
そう言ってドイボさんは足早に去っていった。
「はあ、俺は何をしているのだろう。」
0
あなたにおすすめの小説
感情の贈与税 〜光の加護より、確かな契約。没落令嬢による国家再生録〜
しょくぱん
恋愛
「君のような地味な女、僕の隣にふさわしくない」
魔王軍を討伐し、凱旋した公爵令息カシアンが放ったのは、婚約者エレナへの冷酷な決別だった。
彼の傍らには、可憐な「救国の聖女」レティシア。
だがカシアンは忘れていた。彼の眩い金髪も、魔王を圧倒した剣技も、すべてはエレナが十年間「愛の贈与」として捧げ続けた魔力の賜物であることを。
「……承知いたしました。では、滞納分を含め、全魔力を今この場で『徴収』いたします」
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
異世界魔法、観察してみたら
猫チュー
ファンタジー
異世界に転生した少年レイは、ある日、前世の記憶を取り戻す。
未知でありながら日常の一部となっている魔法に強い興味を抱いた彼は、村の魔法オババに師事し、修行の日々を送る。
やがてレイは、この世界の魔法が、地球で学んだ知識と多くの共通点を持つことに気づいていく。
師の元を離れ、世界を知っていく中で、少年は魔法を観察し、考え、少しずつ理解を深めていく。
これは、少年レイが世界を、魔法を、科学していく物語。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す
天岸 あおい
ファンタジー
久遠の花と呼ばれる優秀な薬師の一族。
そんな彼らを守り続けていた、守り葉と呼ばれし者たち。
守り葉として育てられた子供・みなもだったが、ある日隠れ里を襲われ、生き別れた姉・いずみや仲間たちとの再会を夢見て薬師として生きながら、行方を捜していた。
そんなみなもの元へ現れた、瀕死の重傷を負った青年レオニード。
彼との出会いがみなもの運命の歯車を動かしていく―――。
男装の麗人で、芯が強くて自分の手を汚すことを厭わない主人公と、そんな一筋縄ではいかない主人公を一途に想う、寡黙で真面目な青年の物語。
R18ではありませんが、後半は大人向けの展開になっています。
※他サイトで公開していたものを改題・改稿しております。
※今作は非BLです。期間限定で掲載致します。
婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します
黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。
断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。
ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている!
「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」
イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。
前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。
クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。
最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。
やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く!
恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる