ヒレイスト物語

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第四章 不変

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昼食を食べ終わった後も、モルテは縮こまっていた理由を話してくれることはなかった。なんだか、悔しい気持ちになってしまった。だが、さっき決めたのだ。あれこれ考えるのはやめよう。

それに、俺も隠し事をしているのだ。何も言えない。まあ、俺の隠し事の質はちっぽけでくだらないものなのだが。昼食も終え、何をしたものかと考えているとドアがノックされる音がする。


「ビス。いますか?」


聞き覚えのある透き通った声。俺はドアを開けに行く。そこには背の低い少女がこちらを見上げ立っていた。


「どうかしたのか?メイユ。」


「ちょっとお話しませんか?」


「いや、今はちょっとな。」


そう言うとメイユは一瞬眉をピクッと動いたが、それがなかったかのように微笑みをこちらに向けてきた。


「ふーん。アシオンとはよろしくやったのに、ワタクシはダメなんですね。」


なんだか聞く人が聞いたら誤解するような言い方をしてきた。そして、人差し指を口に当てある方向を向いた。


「ビスがダメならモルテを誘おうかしら。」


その言葉を聞いて安易に想像ができた。俺がアシオンとしていたことをモルテに話す気だろうと。それ単体であれば問題はないのだが、それを話すことによって芋ずる式に知られてしまうことがある。それが問題なのだ。


「わ、わかった。ほら、入ってくれ。」


「あらそうですか。ありがとうございます。」


白々しくメイユはそう言ってきた。俺は無理矢理、理由をつくる。モルテも気晴らしにもなるだろうし、いいだろうと。


「モルテさんもいらしたんですね。」


「なんでこの子が?」


先に部屋に入っていったメイユがモルテの視界に入ったらしい。メイユを一瞥したあとモルテはこちらじっと見ている。”何をしているんですか?”と訴えかけている気がした。


「はははははっ。」


俺は笑う以外何もできなかった。


「ふーん。そういうことですか。」


メイユは何か含んでいる言い方をする。


「そうだ。ワタクシたちも体を動かしましょう。先に行っていますね。」


そう言ってメイユはこちらに振り返り、部屋を出ていく。すれ違う途中メイユは”場所はわかりますよね?”といってきた。ただ、答えは聞いていないようでスタスタと去っていった。

正直助かった。これで本当にモルテは気晴らしになるだろう。それにあの部屋は外の音がしないし最適だと思う。ただ、モルテのメイユの見る目は前以上に怪しいものを見るような力が籠った目だった。その力は周囲に少し漏れ出ている。


「何なんですか、あの子は。来たと思ったらすぐ出ていくなんて。」


「まあ、そう言うな。ほらモルテも行くぞ。」


「なんで、ビスさんはあの子の肩を持つんですか。怪しいですね。」


モルテの怪しいものを見る目は俺にも襲い掛かってきた。ただ、俺は気にすることなくモルテを引きずりだそうとする。


「別に深い意味はないよ。ただ、俺も体を動かしたいと思っただけだ。嫌だったらここで待っててくれてもいいぞ。」


俺は、モルテから視線を外し、部屋を出てようとする。すると、後ろから足音が聞こえてきた。ちょっとずるかったかな。モルテは俺を追ってきたのだ。


「わ、わかりましたよ。僕も行きます。」


部屋を出たあと、あることを思い出した。


「ああ、そうだ。武器持ってこい。ここで待ってるから。」



モルテは訝しげな視線をこちらに送ってきたが、もう何を言っても無駄だと思ったのか何も言わずに自分の部屋へと向かっていく。俺も一応武器を持ってきていた。もしかしたら使うかもしれないから。
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