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第四章 不変
波乱の予感
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何故こうなったのか。隣にはムスッとしているモルテ。そして俺の目の前にはそれを意図にも介さず堂々としている二人の姿があった。確かにわかれるのが寂しいとは思った。だが、こうなるとは微塵も思っていなかった。
それにこの二人が敵だったとしてこんなにも堂々と姿を見せるだろうか。俺だったら、姿を見せずに、機を伺い闇討ちするだろうと考えてしまう。どうしてこうなったのかは少し時間をさかのぼらなければならない。
あの後、なんとかメイユを止め四人で軽く立ち合いをした。重要なことなのでもう一度言う、軽くである。この二人に暴れられたら本当にトレーニングルームを破壊しかねないからだ。本当であれば、あの場で解散としたかったところだが、メイユがだだをこねるので仕方なくそうしたのだ。
説得途中アシオンがメイユに向かって”その年でダダこねるなよ。”と言って半殺しになっていたことも記憶に新しい。ただ、アシオンのおかげなのかそれでメイユは大人しくなってくれたのだ。
そして、立ち合いはドイボさんが夕食を呼びに来るまで続いた。
夕食を食べている最中モルテにこんなことを言われてしまった。
「ビスさん、あの二人に心を許し過ぎじゃないですか?」
「そんなことはないけどな。」
「いや、そんなことありますよ。いつの間にか、あの二人に対して敬語じゃなくなったり、呼び捨てにしてるじゃないですか。」
なぜかモルテは食い下がってきた。
「なんだ。焼きもちか。」
「な、何を言っているんですか。気持ち悪い。」
さすがに気持ち悪いはグサっとくる。こんな時は気持ち悪くても軽く受け流してくれればいいのに。さすがはモルテだ。思ったことを口にしてくる。まあ、だからバディにえらんだのだが。
「それより、お前こそメイユとイチャイチャしていたじゃないか。」
「それこそ、誤解です。なぜか、ことあるごとに突っかかってくるんですよ。」
「ふーん。」
俺は、目を細めモルテを見る。おそらくこれで俺が思っていることをモルテは理解するだろう。
「信じてませんね。別にいいですよ。あの人たちとはここでお別れですしね。それで明日はどうするんです?」
話題を変えてきた。俺を見て反論する気がなくなったのだろう。
「もちろん、出発するぞ。まあ、天気次第だがな。」
「・・・少し荒れているくらいであれば僕は大丈夫ですよ。」
勇気を出して、ひねり出した言葉の様に聞こえた。気持ちはありがたいが、不確定要素過ぎて俺はそうなった場合、待ちを選択するだろう。助けに行く俺たちが途中で死んでしまっては元も子もない。
「まあ、それは明日になってから決めよう。」
心の内は決まっていたが、口に出すことはしなかった。これを言うことでモルテは真面目なので、思い詰めてしまうと思ったから。それに明日、晴れれば何も言う必要がない。これはもう神頼みをするしかなかった。
「そうですね。ビスさんあの今夜・・・」
「ん?ああ、ベッド使っていいぞ。」
「いや、さすがにそれは。僕はソファで寝ます。」
「いいから、ベッド使え。そっちの方が聞こえないだろう。」
「・・・お言葉に甘えさせていただきます。」
こんな風にいつも甘えてくれてもいいのに、と思ってしまう。まあ、そんなことをモルテはしないだろう。
こんな感じでこの夜は更けていった。
それにこの二人が敵だったとしてこんなにも堂々と姿を見せるだろうか。俺だったら、姿を見せずに、機を伺い闇討ちするだろうと考えてしまう。どうしてこうなったのかは少し時間をさかのぼらなければならない。
あの後、なんとかメイユを止め四人で軽く立ち合いをした。重要なことなのでもう一度言う、軽くである。この二人に暴れられたら本当にトレーニングルームを破壊しかねないからだ。本当であれば、あの場で解散としたかったところだが、メイユがだだをこねるので仕方なくそうしたのだ。
説得途中アシオンがメイユに向かって”その年でダダこねるなよ。”と言って半殺しになっていたことも記憶に新しい。ただ、アシオンのおかげなのかそれでメイユは大人しくなってくれたのだ。
そして、立ち合いはドイボさんが夕食を呼びに来るまで続いた。
夕食を食べている最中モルテにこんなことを言われてしまった。
「ビスさん、あの二人に心を許し過ぎじゃないですか?」
「そんなことはないけどな。」
「いや、そんなことありますよ。いつの間にか、あの二人に対して敬語じゃなくなったり、呼び捨てにしてるじゃないですか。」
なぜかモルテは食い下がってきた。
「なんだ。焼きもちか。」
「な、何を言っているんですか。気持ち悪い。」
さすがに気持ち悪いはグサっとくる。こんな時は気持ち悪くても軽く受け流してくれればいいのに。さすがはモルテだ。思ったことを口にしてくる。まあ、だからバディにえらんだのだが。
「それより、お前こそメイユとイチャイチャしていたじゃないか。」
「それこそ、誤解です。なぜか、ことあるごとに突っかかってくるんですよ。」
「ふーん。」
俺は、目を細めモルテを見る。おそらくこれで俺が思っていることをモルテは理解するだろう。
「信じてませんね。別にいいですよ。あの人たちとはここでお別れですしね。それで明日はどうするんです?」
話題を変えてきた。俺を見て反論する気がなくなったのだろう。
「もちろん、出発するぞ。まあ、天気次第だがな。」
「・・・少し荒れているくらいであれば僕は大丈夫ですよ。」
勇気を出して、ひねり出した言葉の様に聞こえた。気持ちはありがたいが、不確定要素過ぎて俺はそうなった場合、待ちを選択するだろう。助けに行く俺たちが途中で死んでしまっては元も子もない。
「まあ、それは明日になってから決めよう。」
心の内は決まっていたが、口に出すことはしなかった。これを言うことでモルテは真面目なので、思い詰めてしまうと思ったから。それに明日、晴れれば何も言う必要がない。これはもう神頼みをするしかなかった。
「そうですね。ビスさんあの今夜・・・」
「ん?ああ、ベッド使っていいぞ。」
「いや、さすがにそれは。僕はソファで寝ます。」
「いいから、ベッド使え。そっちの方が聞こえないだろう。」
「・・・お言葉に甘えさせていただきます。」
こんな風にいつも甘えてくれてもいいのに、と思ってしまう。まあ、そんなことをモルテはしないだろう。
こんな感じでこの夜は更けていった。
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