ヒレイスト物語

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第四章 不変

頑固モノ

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モルテは少しあそこにいたいということだったので、一人でアシオンたちのほうに戻ってきていた。


「おい、何やってるんだ?」


「さっきも言った通りバカにわからせているとこですわ。」


うん言ってた、言ってけれども。まさか実力行使でわからせるとはだれも思わないよな。今メイユはアシオンに四の字固めをしていた。それにしても、そんなんでアシオンが折れるだろうか。


「わ、わかった。俺が悪かったから。やめろ。」


案外簡単に降参するものだ。


「ふん。わかったならいいですよ、わかったなら。」


そう言うとアシオンから離れ俺に近寄ってくる。その途中アシオンが”はあ、腕が取れるかと思った。”と言っていた。そんなにきつかったのだろうか。それにしても、アシオンなら簡単とは言わないが抜けられると思うが。その答えはメイユが俺の耳元で言ってくる。


「あのバカ。内心わかってるのよ。でも、言った手前意地になってたの。だから言葉で言っても無駄なのよ、絶対に反発してくるから。まあ、ビスが来てくれて助かったわ。来なかったらまだ、やってたかもしれないわ。ふふふっ。」


納得はしたが、最後の方怖いことを言っていた。もしかしたら本当にアシオンの腕が取れていたかもしれない。俺が早く戻ってきてよかったなアシオン。言葉には出さないが心の中でそう投げかけた。それに、あの事がもう信じられないのでカマをかけてみる。


「まあ、理由はわかったが、親に向かってバカ連発は良くないんじゃないか。」


そう言うと、二人はポカンと口をあけ、一瞬固まっていた。


「ははははっ。まさかまだ信じてるとはな。それより、モルテのやつはどこにいる?」



やはりというべきか。ただ、バカにされたみたいで癪に障る。何か言い返してやろうと思ったがこのままの方がスムーズに進むと思い、質問にだけ答えた。


「モルテはあっちだよ。少しひとりでいたいようだ。」


「そうか。じゃあ、きたら話す。それまで・・くくくっ。待っててくれ。本当のこと話すから。いいよな、メイユ。」


「ええ、もう意味がないでしょうしね。」


メイユはなんとなくわかっている気がするが、アシオンは俺がまだ騙されていると思い笑いが止まらないらしい。


「メイユ。お願いがあるんだがいいか?」


「何?できることなら何でも聞いてあげるけど。」


俺はメイユに耳打ちをする。アシオンに聞こえないように。


「・・・」


「おい、なんだよ、二人して。また仲間外れかよ。」


俺のお願いを聞き終わったメイユは口角を上げ、無邪気な顔をこちらに向けてくる。


「なんだ、そんなこと。お安い御用ですわ。」


そう言ってメイユはアシオンに向かっていく。仲間に入れるために。


「アシオン心配するな。仲間はずれにはしないから。むしろ俺の方が仲間はずれかもな。」


「な、なんだよ。その含みのある言い方。言いたいことがあるならはっきり言えよ。・・・て、いててててて‼」


アシオンが俺に視線を変えた瞬間、メイユはアシオンの視界から消えるように動いていた。そして、懐に忍び込みさっきと同じことをしたのだ。


「やめろ、メイユ。仲間外れでもから、な。ていうかやめさせろ、ビス。」


「そんな悲しいこと言うなよ。仲間外れにはできないだろ。」


「こ、この野郎。」


何とか本当のことを言わずに仕返しができた。しかし、それは長くは続かなかった。離れたところにいたモルテが戻ってきたのだ。俺と同じような言葉を吐き捨てながら。



「あなたたち何をやってるんですか?」
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