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第四章 不変
思い出す光景
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少しアシオンで遊び、可哀想になってきたので、やめさせた。
「はあ、もう。覚えてろよ。」
そう吐き捨ててはいるが、一向にやり返してくる気配はない。まあ、アシオンにとってはじゃれている程度だったのかもしれない。痛いと言葉には出してはいるがそんな様子が感じられない。ああ入ってはいるが気にしていないのだろう。そう思うことにした。
「あの、すみません。言いづらいんですが、その・・・そろそろさっきの姿に戻ってくれませんか。何か落ち着かなくて。」
「ん?ああ、そうか。わかった。」
モルテの予想は外れたみたいで、アシオンは気にすることなく人間の姿になっていた。
「いいんですか?」
「なんだよ。自分で言っといて。まあいいや。オレもこの姿も気に入ってるからな。オレからすりゃどっちでもいい。」
「ワタクシもこの姿、気に入ってますので別にどっちでもいいですよ。」
アシオンとメイユはあっけらかんとしていた。メイユはともかくアシオンは魔法のことはあんなに突っかかっていたのに。想像でしかないがおそらく、あの時はモルテの態度が気に食わなかったのだと思う。そんなことを考えると、信じかけてしまう。俺も単純だな。
そのあと、俺以外は眠りに着いた。何せ襲ってくるのは魔物だけとは限らないからだ。第三者の存在、このやり取りのなかで断言できる程度の情報が得られた。この二人は誰かに命令されてここにいるのだろう。それがどこの誰かはわからない。
ただ、これはなんとなくだが、この二人に命令したものとこの魔物を操っているものは別の者ではないかと思っている。特にあの魔物の大群。明らかにこれまでのものと違っていた。それまでの魔物たちは襲ってくると言っても、道を塞ぐような行為ばかりで殺意というものはあまり感じられなかった。まあ、だからその流れに身を任せたのだが。
それでも、怪しまれないためなのかそれとも違う理由なのかここでははっきりしないが、殺意を持った魔物も混じっていた。そしてあの大群、あれはその殺意を持った魔物の大群であった。俺はその光景に心当たりがある。無力だった時の光景を。
「覚悟しなきゃな。」
「何が覚悟しなきゃいけないんだ?」
どうやら俺の独り言は誰かに聞かれてしまったらしい。大体声で予想は出来たが、念のため振り返り確認をする。そこには猫背になり大きくあくびをしているアシオンの姿があった。
「いや、別に何も。」
アシオンは一瞬口を大きく開き何か言いかけたが、口を噤み微かに開いた口から一言こぼれてくるように言った。”そうか”と。アシオンは問い詰めることはしなかったのだ。俺から何を感じ、そこから何を思ったのか俺にはわからない。ただ、そうさせる何かを俺は発していたのだろう。それが何なのかはわからない、自分がどのような表情をしているのかさえも。
「それより、交代だ。早く寝ろ。体が持たないぞ。」
「まだ、いいよ。それにまだそんなに時間経ってないだろ。」
その言葉を聞いてアシオンは頭をポリポリ掻いて真っ直ぐな言葉を投げてきた。
「ああ、もういいから。ここは素直に甘えろ。」
不器用な言葉。説得するような言葉は出てこなかったのだろう。それでも、アシオンが俺のことを思って言っている言葉だということは想像できた。
「・・・じゃあ、お言葉に甘えるよ。」
「ああ、そうしてくれ。」
立ち上がり歩を進めると、こちらに視線も向けずに俺が座っていたところにアシオンが座り込む。アシオンの表情は暗いことも相まってあまりはっきりとは見られなかったが少し口角が上がっていたような気がする。
気にはなったが、ここで問い詰めるのは違う気がした。それにアシオンもさっき問い詰めてこなかったからな。ここはやめておこうと思い、休息を取るべく寝床に向かう。このあと待ち受けているであろうことに立ち向かうために。
「はあ、もう。覚えてろよ。」
そう吐き捨ててはいるが、一向にやり返してくる気配はない。まあ、アシオンにとってはじゃれている程度だったのかもしれない。痛いと言葉には出してはいるがそんな様子が感じられない。ああ入ってはいるが気にしていないのだろう。そう思うことにした。
「あの、すみません。言いづらいんですが、その・・・そろそろさっきの姿に戻ってくれませんか。何か落ち着かなくて。」
「ん?ああ、そうか。わかった。」
モルテの予想は外れたみたいで、アシオンは気にすることなく人間の姿になっていた。
「いいんですか?」
「なんだよ。自分で言っといて。まあいいや。オレもこの姿も気に入ってるからな。オレからすりゃどっちでもいい。」
「ワタクシもこの姿、気に入ってますので別にどっちでもいいですよ。」
アシオンとメイユはあっけらかんとしていた。メイユはともかくアシオンは魔法のことはあんなに突っかかっていたのに。想像でしかないがおそらく、あの時はモルテの態度が気に食わなかったのだと思う。そんなことを考えると、信じかけてしまう。俺も単純だな。
そのあと、俺以外は眠りに着いた。何せ襲ってくるのは魔物だけとは限らないからだ。第三者の存在、このやり取りのなかで断言できる程度の情報が得られた。この二人は誰かに命令されてここにいるのだろう。それがどこの誰かはわからない。
ただ、これはなんとなくだが、この二人に命令したものとこの魔物を操っているものは別の者ではないかと思っている。特にあの魔物の大群。明らかにこれまでのものと違っていた。それまでの魔物たちは襲ってくると言っても、道を塞ぐような行為ばかりで殺意というものはあまり感じられなかった。まあ、だからその流れに身を任せたのだが。
それでも、怪しまれないためなのかそれとも違う理由なのかここでははっきりしないが、殺意を持った魔物も混じっていた。そしてあの大群、あれはその殺意を持った魔物の大群であった。俺はその光景に心当たりがある。無力だった時の光景を。
「覚悟しなきゃな。」
「何が覚悟しなきゃいけないんだ?」
どうやら俺の独り言は誰かに聞かれてしまったらしい。大体声で予想は出来たが、念のため振り返り確認をする。そこには猫背になり大きくあくびをしているアシオンの姿があった。
「いや、別に何も。」
アシオンは一瞬口を大きく開き何か言いかけたが、口を噤み微かに開いた口から一言こぼれてくるように言った。”そうか”と。アシオンは問い詰めることはしなかったのだ。俺から何を感じ、そこから何を思ったのか俺にはわからない。ただ、そうさせる何かを俺は発していたのだろう。それが何なのかはわからない、自分がどのような表情をしているのかさえも。
「それより、交代だ。早く寝ろ。体が持たないぞ。」
「まだ、いいよ。それにまだそんなに時間経ってないだろ。」
その言葉を聞いてアシオンは頭をポリポリ掻いて真っ直ぐな言葉を投げてきた。
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「ああ、そうしてくれ。」
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気にはなったが、ここで問い詰めるのは違う気がした。それにアシオンもさっき問い詰めてこなかったからな。ここはやめておこうと思い、休息を取るべく寝床に向かう。このあと待ち受けているであろうことに立ち向かうために。
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