ヒレイスト物語

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第五章 旅立ち

目の前の光景

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アシオン曰くプロウバの森を抜ける一歩手前。そこには異様な雰囲気があった。木々のさざめく音はなく辺りは静まり返っている。そして、唾を飲み込む音が聞こえてきた。ただ、その音さえ目の前の暗闇に飲み込まれ消え去っていく。日はまだ昇っているのにも関わらず真っ黒に感じてしまうのはなぜなのか。

それはなんとなく心のなかで答えは出ていた。目が脳がその先にあるものを想像できないもしくは想像することを拒絶しているのだと、それがどんな理由であれ。恐怖心、好奇心、無関心、そのどれでも脳はそれを拒絶する、そんな気がしてならないのだ。そんな実にもならないことを考えてしまう


「本当にここを通らないといけないのですか?」


「なんだぁ?ここまで来て怖気づいてんのか。なんなら一人ここで待っててもいいぜ。全部済んだら呼んでやっからよ」


「な、何を言っているんですか。僕はただ、ここを避けられるなら、避けた方が今後のためにいいと思っただけで、怖気づいてなんていませんよ」


「あっそ」


アシオンにとってソエルの返答などどうでもよかったようだ。おそらくとしか言えないがアシオンなりに気を使ったのだろう。その言葉とは裏腹に真剣な目でその先をみつめていたのだから。ただ、ソエルはそれに気づいていないのだろう、その証拠に歯を食いしばって何かに耐えている。言葉が出ないのかソエルはそれ以上アシオンに突っかかりはしなかった


「アシオン、この先にいるやつ心当たりはあるのか」


「全然。ただ、これだけはわかる。強いぜ、この奥にいるやつは」


「何をかっこつけているのよ。そんなことここにいる全員がわかっているわ」


「ぷっ」


「誰だ今笑ったの⁉」


誰か笑いをこらえられなくなったのだろう。かくいう俺も笑いをこらえるのに必死で何も言葉が出てこない。なんであんなにすました顔で当たり前のことを言ってのけたのか。まあ、場の空気が多少なりとも明るくなったので良かったんだが。なんとか笑いを耐えることができた。深呼吸をして、また笑いが込み上げてこないよう注意しながら声を発する


「考えていたって始まらないな」


「そうだな、行くか」


「何でアシオンさんが仕切ってるんですか」


「ふぇぇぇ」


「いつでも大丈夫ですわよ」



俺たちはアシオンを先頭に暗闇へと足を踏み入れる。そこに何が待ち受けていようと乗り越えなければならない。暗闇に踏み込んだ瞬間、脳は局所的な思考停止を解き、一つまた一つと目の前の光景を認識していく
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