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第五章 旅立ち
気の緩み
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もう何を言っても無駄だと思ったのか、アシオンの標的はその音を出した者に向けられた。まあ、そんな簡単に出てくることはないと思うが。ただ、その考えは違ったようで、アシオンの言葉に答えたのかはわからないが、ピョコンと木の隙間から何かが飛び出してきた
「・・・アシオン出てきたわよ、相手してやるんじゃなかったの?」
「そんなこと言われてもな。あれは敵じゃないだろ、それにオレがあの時感じたのはこいつじゃないはずだ」
アシオンも困惑している。メイユの言葉に棘があるというのにそれすら気にならないらしい
「アシオンどうするんだ?」
「ビスまで止めてくれよ・・・わかった、わかったからオレが悪かったよ」
そういうとその出てきたものに近づいていき“さっきのは冗談だ”と声をかけ撫でている。一方の出てきたものは、やる気満々なのか鼻を鳴らし今にもアシオンに突進しようとしていた。ただ、それは傍から見るとじゃれているようにしか見えない
「アシオンさん、倒さないんですか」
ソエルのその言葉。さっきのバカにするような言葉ではなく、確認するような言い方、そしてソエルはアシオンをじっと見ていた。ただ、その言葉はその視線はアシオンの考えを変えることはなかった
「おめぇもか、ソエル。いい加減にしろ、謝っただろ」
「いや、そういうわけじゃなくて・・・もういいです」
「・・・意気地なしですぅ」
「パヴィなんか言いましたか?」
「いいえ、何も言ってません~」
ちょくちょくあるこの二人のやり取り。どういう仲なのだろうか、この二人の距離感が全然掴めない
「アシオンそこまでにしておきなさい」
「ん?なにがだよ。もしかしてお前も触りたいのか」
「そうじゃないわよ・・・はあ、どうなっても知らないわよ」
そういうとメイユはその場を離れた。なぜかそいつに触れているのはアシオンだけという状況になっていた。一番こういうのに興味がなさそうなやつがだ。ソエルとパヴィは何か言い合いをしている。というかソエルが一方的にパヴィに何かを言っているようにも思えるが
「アシオンそいつは連れて行けないからな」
「わ、わかってる」
本当にわかっているのか。そう言葉にしているが別れが名残惜しいかのように目一杯撫でている。この目を細めたアシオンの表情、強者が弱者に向ける表情、それがいいものなのか悪いか何て俺にはどうでもよかった。ただ、周りはそんなことは思わないらしい。ただ、一つだけ変わらないものは先を見据えているということ。
まあ、その未来が来るかどうかなんて誰にもわからない、一つの仮定に過ぎないのだ。俺の考えよりはマシなものなんだろうが。あいつらが俺の考えを聞いたらどう思うだろうな、合理的?無慈悲?どう思われようがその考えを変えるつもりはない、そこに負の感情が混ざっていようが
「アシオン、気は済んだかしら?」
「・・・わーったよ。そろそろ行くか」
早くここから去りたい、そんな気持ちがあったのかどうかはわからないが、メイユはアシオンを急かした。それにしても、黒いフードのやつ。俺の頭のなかに浮かぶのはただ一人であった。ディグニと対峙した者、それもこのプロウバの森で。それも二度もここでそいつとディグニと対峙している。
これは偶然なのだろうか。それにあいつを見た瞬間、警告が激しくなり始めたのも気になった。俺が見たやつとディグニが見たやつが同じだろうとなかろうと相当の実力を持っているのは違いないだろう。何せこの場にいる全員が思考を停止するほどの人物なのだから
「ビスさんもあの人影見たんですかぁ?」
いつの間にか俺の近くにパヴィがやってきていた。ソエルはどうしたのだろうかと辺りを見渡すとアシオンのそばにいたのだ。ただ、ここからでは何をやっているのかはわからない。いくら気にしても無駄だろう
「パヴィも見てたのか」
「はいぃ」
「・・・このことはみんなには言うな。言ったところで気を張って疲れるだけだ。なんとなくあいつ今は攻撃してこない、そんな気がする。パヴィもあまり気にするなよ」
パヴィは返事もしなければ頷きもしない。一歩また一歩とこちらに近づき、真顔でじっと俺の目を見つめてきている。先ほどのように体を押し付けるように何か言ってくるものなのかと思いうしろにたじろいだが、その必要はなかった。パヴィは俺の横を通り過ぎていく、何か俺の耳元で囁きながら
「・・・ですぅ」
ただ、声が小さすぎて最後の特徴的な語尾しか聞き取れなかった。パヴィが拒否していたかもしれない。それだけは避けたかった
「おい、パヴィ今何て・・・」
「心配しないでくださいぃ、皆さんには言いませんからぁ」
こちらを振り返らずにパヴィはそう言った。安堵もありつつ何か少し引っかかるような感覚がある
「おい、ビス。そろそろ行こうぜ」
アシオン待ちだった気がするが、いつの間にか俺がみんなを待たせている形になっていたらしい
「ああ、わかった、今行くよ」
「・・・アシオン出てきたわよ、相手してやるんじゃなかったの?」
「そんなこと言われてもな。あれは敵じゃないだろ、それにオレがあの時感じたのはこいつじゃないはずだ」
アシオンも困惑している。メイユの言葉に棘があるというのにそれすら気にならないらしい
「アシオンどうするんだ?」
「ビスまで止めてくれよ・・・わかった、わかったからオレが悪かったよ」
そういうとその出てきたものに近づいていき“さっきのは冗談だ”と声をかけ撫でている。一方の出てきたものは、やる気満々なのか鼻を鳴らし今にもアシオンに突進しようとしていた。ただ、それは傍から見るとじゃれているようにしか見えない
「アシオンさん、倒さないんですか」
ソエルのその言葉。さっきのバカにするような言葉ではなく、確認するような言い方、そしてソエルはアシオンをじっと見ていた。ただ、その言葉はその視線はアシオンの考えを変えることはなかった
「おめぇもか、ソエル。いい加減にしろ、謝っただろ」
「いや、そういうわけじゃなくて・・・もういいです」
「・・・意気地なしですぅ」
「パヴィなんか言いましたか?」
「いいえ、何も言ってません~」
ちょくちょくあるこの二人のやり取り。どういう仲なのだろうか、この二人の距離感が全然掴めない
「アシオンそこまでにしておきなさい」
「ん?なにがだよ。もしかしてお前も触りたいのか」
「そうじゃないわよ・・・はあ、どうなっても知らないわよ」
そういうとメイユはその場を離れた。なぜかそいつに触れているのはアシオンだけという状況になっていた。一番こういうのに興味がなさそうなやつがだ。ソエルとパヴィは何か言い合いをしている。というかソエルが一方的にパヴィに何かを言っているようにも思えるが
「アシオンそいつは連れて行けないからな」
「わ、わかってる」
本当にわかっているのか。そう言葉にしているが別れが名残惜しいかのように目一杯撫でている。この目を細めたアシオンの表情、強者が弱者に向ける表情、それがいいものなのか悪いか何て俺にはどうでもよかった。ただ、周りはそんなことは思わないらしい。ただ、一つだけ変わらないものは先を見据えているということ。
まあ、その未来が来るかどうかなんて誰にもわからない、一つの仮定に過ぎないのだ。俺の考えよりはマシなものなんだろうが。あいつらが俺の考えを聞いたらどう思うだろうな、合理的?無慈悲?どう思われようがその考えを変えるつもりはない、そこに負の感情が混ざっていようが
「アシオン、気は済んだかしら?」
「・・・わーったよ。そろそろ行くか」
早くここから去りたい、そんな気持ちがあったのかどうかはわからないが、メイユはアシオンを急かした。それにしても、黒いフードのやつ。俺の頭のなかに浮かぶのはただ一人であった。ディグニと対峙した者、それもこのプロウバの森で。それも二度もここでそいつとディグニと対峙している。
これは偶然なのだろうか。それにあいつを見た瞬間、警告が激しくなり始めたのも気になった。俺が見たやつとディグニが見たやつが同じだろうとなかろうと相当の実力を持っているのは違いないだろう。何せこの場にいる全員が思考を停止するほどの人物なのだから
「ビスさんもあの人影見たんですかぁ?」
いつの間にか俺の近くにパヴィがやってきていた。ソエルはどうしたのだろうかと辺りを見渡すとアシオンのそばにいたのだ。ただ、ここからでは何をやっているのかはわからない。いくら気にしても無駄だろう
「パヴィも見てたのか」
「はいぃ」
「・・・このことはみんなには言うな。言ったところで気を張って疲れるだけだ。なんとなくあいつ今は攻撃してこない、そんな気がする。パヴィもあまり気にするなよ」
パヴィは返事もしなければ頷きもしない。一歩また一歩とこちらに近づき、真顔でじっと俺の目を見つめてきている。先ほどのように体を押し付けるように何か言ってくるものなのかと思いうしろにたじろいだが、その必要はなかった。パヴィは俺の横を通り過ぎていく、何か俺の耳元で囁きながら
「・・・ですぅ」
ただ、声が小さすぎて最後の特徴的な語尾しか聞き取れなかった。パヴィが拒否していたかもしれない。それだけは避けたかった
「おい、パヴィ今何て・・・」
「心配しないでくださいぃ、皆さんには言いませんからぁ」
こちらを振り返らずにパヴィはそう言った。安堵もありつつ何か少し引っかかるような感覚がある
「おい、ビス。そろそろ行こうぜ」
アシオン待ちだった気がするが、いつの間にか俺がみんなを待たせている形になっていたらしい
「ああ、わかった、今行くよ」
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