ヒレイスト物語

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第五章 旅立ち

眼に宿るモノ

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正気を取り戻したのか、それとも戻されたのか。辺りにパヴィの悲鳴が響いている


「かかかっ、やりますね。それにしても、お仲間だったのでしょう、非情ですね」

「そうか。お前の方が非情だと思うがな」


ラオダムの方を見ず俺はソエルへと近づいていき、首元を触った


「何をなさっているんですか?」

「死んだかどうか確認したんだよ。起き上がられても面倒だからな・・・うん、死んでいる」

「・・・信じていたのにぃ」


パヴィから悲痛の叫びが俺の耳に入ってくる。まあ、信じていた人に裏切られたらそうなるよな


「・・・吾輩も確認してよろしいでしょうか?」

「なんだ、俺を疑うのか?」

「滅相もありません、念のためです。万が一生きていたら大変ですから」

「はあ、わかったよ。ただ、俺を疑ったこと後悔するなよ」


ラオダムがこちらにゆっくりとパヴィを連れて近づいてくる。パヴィは近づいてくる道中ずっとこちらを睨みつけていた。末代まで呪ってやると言わんばかりに。そしてラオダムはソエルの首元を触り、脈を確認している


「・・・脈はありませんね」

「そう言っただろ・・・わかっているな?」

「かかかっ。ええ、ただ今はやることがありますから、これが国に帰ってからにしていただけると助かるのですが」

「・・・いいだろう。ただし、その子を使うな」

「なぜです?そうした方が楽なのですが」

「そんなことをしては死んでしまうじゃないか。後の楽しみを取っておかないとな」

「下衆がぁぁ」


先ほどよりもパヴィの眼力が強くなってくる。それはナイフのように尖り俺を襲ってくる。その目つきで人を殺せるのではないかと思うほど・・・もう何も言うまい


「そういうことですか。そういうことであれば仕方ありませんね。この娘ビス様に献上いたします」


そう言うと、ラオダムはパヴィを俺に渡してきたと思ったが、俺がパヴィの抱えて下がろうとしてもラオダムは力を緩めない


「くっ‼」

「おい、早く離さないか」

「一つお願いをしてもよろしいですか?」


ラオダムはこちらを真顔で見てくる。その表情は何だか奇妙であった


「なんだ?」


平静を装ったつもりであったが、声が少し震えてしまっただろうか


「ビス様が楽しんだ後でよろしいので吾輩にも味見をさせて欲しいのです」

「なんだ、そういうことか。しょうがない、許可しよう」

「有難き幸せ。それでは吾輩は仕事をさっさと終わらせようと思います」


ラオダムはパヴィの首から手を離し、踵を返しラルヘスセルスの方へと向かう。俺はラオダムの背中を見ながら後ろに後ずさる。その途中、パヴィに肩を噛まれてしまった


「っっ」


危うく声を上げてしまう所であった。痛さはあるが、何も言わずラオダムの背中を見続ける。しかし、一定の距離に入っているのにも関わらず、ルミラクムがラオダムを襲わない。妙だな、それとも攻撃されないように無心で近づいて行っているのか。そんなことを思っているとラオダムが目の前から消えた


「ビス様。どこへ行かれるのですか?」
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