アナスタシス・フルム

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プロローグ

御伽話

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 これは、夢を叶えたある男の物語。

 この世界には無数のダンジョンが存在する。
 そのなかで特段難易度が高い5つのダンジョンがあった。

 一つ目は火山の神殿。
 炎の魔物が闊歩し、
 周りはマグマに囲まれ道を踏み外せば跡形もなく溶けてしまう。
 汗すらすぐに蒸発するほど”熱”に苦しめられるダンジョン。


 二つ目は、深海の神殿。
ダンジョン内は水で満たされている。泳ぎの得意な魔物が遊泳し行く手を阻む。いくら肺活量に自信のあるものでも、道具を使おうとも、最深部まで到達することは構わない。しかし、一番の敵は呼吸ではない。下へ下へと進むほどに体が重くなっていく。体が押し潰されるほどの”圧”に苦しめられるダンジョン。


 三つ目は樹海の神殿。
木々に囲まれ、足を進めても同じ風景が続いている。魔物たちは身を潜め攻撃の機会を伺っており、気の休まる時がない。このダンジョンの怖さはこれだけではない。徐々に霧が深くなり、視界を奪われる。虫、鳥の羽ばたき、木々の騒めき、”音”に苦しめられるダンジョン。


 4つ目は、天空の神殿。
このダンジョンは天気がコロコロ変わる。快晴、雨、雷、雪、雹。天気の変化により、気温も一定ではなく、体がついて行かない。それに追い打ちをかけるように魔物が襲い掛かる。しかし、力だけではこのダンジョンは進むことができない。冒険者の知力も試される。様々な”謎”に苦しめられるダンジョン。


 5つ目は地底の神殿。
何の変哲もない魔物が闊歩する洞窟。唯一違うのは、魔法を封じられること。一回でも敵の攻撃を受けてしまえばダンジョンを出るまで魔法は使えなくなってしまう。これまでにない恐怖が襲い掛かる。真っ暗闇で何もできない赤子が魔物の群れの中に放り込まれているような状況に陥る。戦闘を選んでも、逃げを選んでも”力”に苦しめられるダンジョン。




その男がそれらのダンジョンを探し当て攻略に挑んでいた。


男は失敗を繰り返しながら、どうにか5つのダンジョンをすべて攻略することに成功した。


どこからともなく声が聞こえてくる。


「ほう、5つすべて攻略したか。お前が望む魔法はなんだ?どんな魔法でも授けてやろう。」


「私は、お金が無限に手に入る魔法が欲しい。」


他のダンジョンを攻略することでお金を得ることは出来たが、それでは男は満足しなかったのだ。それゆえの願い。


「よかろう。さすればそこの台にお前の本を置け。」


 彼は声の主の言う通りに台に本を置く。


 すると、羽ペンが現れ、彼の本に新たな魔法を書き込んでいく。


「これでしまいじゃ。お前を外まで送り届けよう。」


 彼は光に包まれ、いつの間にかダンジョンの外に出ていた。


「本当に成功するのだろうか。」


 彼は、不安に掻き立てられ、魔法を書いてみる。
 すると、驚くことにお金が地面から湧いて出てきた。



「はははっ。成功だ。これで俺は大金持ちだ。」



彼は、それだけでは満足できずその財力を駆使し、地位と名誉、ありとあらゆるものを手に入れていく。



そして、最終的に一国の王まで成り上がったとかいないとか。
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