アナスタシス・フルム

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第2章 人魚の伝説

人魚の伝説

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ヒルさんの宿屋でダンジョン攻略の祝勝会を行った。まあ、料理は相変わらず豪華なので変わりようがないのだが。一つ変わっていることと言えばリタ先生がいるということだろうか。

「ロガ君たち、おめでとう。まだいっぱいあるからねじゃんじゃん食べてね」

「わ~い。ジャーキーがいっぱいだ~」

「レクスはん。そんなに詰め込んではしたない」

「ほらオーテスも、食べていいんですよ」

「では、いただきやす」

「しゃべった!?」

「それはさすがにひどいですよ、ロガ君」

「は、はは、ごめん」

「お前たちといると退屈しないな」

「何かすみません、リタ先生」

「構わないさ」

食事をしながら、一つ気になることがあった。

「そういえば、ヒルさんとリタ先生ってどこで知り合ったんですか?」

「それはだな・・・」

リタ先生が何か言い淀んでいると、ヒルさんが厨房の奥からやってきて答えてくれた。

「同級生だよ。魔法学校時代のね。それ以上でも、それ以下でもないよ。ほらロガ君。ぼーっとしているとなくなるよ」

「え?あ、おい。レクスそれは俺のだ」

「そんなの誰が決めたの~・・・いてっ」







食事も終わりに近づいた頃、俺はリタ先生に深海の神殿について聞いた。ここの地元の人ということは何かしら知っているかもしれないからだ。

「申し訳ないが、わからない」

「そうですか」

「・・・そうだ、一つこの町に伝わる話をしてやろう。何だ、不服か」

俺はディタに睨みつけられ、そしてしまいには足を蹴られた。

「いっ、いえ、そんなことはありません。ぜひお聞きしたいです」

「私も聞きたいです」

「この町に伝わる話なんでしょう。気になります」

「くすくす」

リタ先生は話始めた。





町のとある青年は、ある夜、海岸で人魚に出会った。その人魚は、岩場に座り込んでいた。青年は、その姿に心奪われた。薄っすらと濡れた白い肌と黒い髪それは、何処か甘美で、また、本来足があるはずの場所には、魚の様に鱗に覆われた肌に足ヒレがついているその歪な姿さえ美しく思え、青年にはその普段は何の変哲もない岩場が光輝いて見えたのだ。人魚は、青年に気付き、すぐに海に逃げようとしたが、青年が”ちょっと待ってくれ、君と話がしたい”と静止した。人魚は、海から顔を出し、”私が怖くないのですか?”と一言。”怖いものか。それどころか君より美しい女性を見たことがない”青年の真っ直ぐな眼差しとその言葉に気を許したのか、人魚は、岩場に戻った。”じゃあ、少しだけ”

それから、毎夜、青年と人魚は会い、たわいもない会話をして過ごした。そして、少しずつ二人は惹かれ合っていった。しかし、そんな時間も長くは続かなかった。毎夜どこかに出かける青年の行動を怪しんだ親はその後をつけ、その現場を見てしまったのだ。そして、親は、青年に”お前は化かされているのだ。会うのを今すぐやめろ”言った。だが、青年はその言葉を聞き入れなかった。それに、激怒した親は、人魚を追い出すべく画策する。

親は、青年を縄で括り付け家から出られなくしたのだ。そして、人魚に会いに行きこう告げた。”お前がここにくる限り、息子は自由になれない。だからさっさと出てってくれ”と。人魚は、葛藤しながらもこう答えた”分かりました”そして、人魚は海へと消えていった。親は、息子を解放した。息子は一目散に浜辺へと向かったが、人魚の姿があるはずはなく打ちひしがれた。それ以降、青年はその岩場に行くことはなくなった。親は、やっと正気に戻ったと大喜びしたのも束の間、その代わり、青年は家に籠り何か作業をしている様子だった。その様はまさに何かに取りつかれているようだった。そして、数年後、”人魚に会いに行く”と言ったきり戻ってこなかったという。







俺は、何もピンとこなかった。何分恋愛話は疎い。その代わり、ディタとシアは興味津々で聞いていた。

「ロガ、そんなにつまらなかったか」

「いえ、そんなことはありません。ものすごくためになりました」

「何がためになったのよ。それにしても、その後、青年と人魚がどうなったか気になりますね」

「そうか。私が知っている話はここまでだが、その後の話で色々な説があるらしい。もし、興味があるなら町の人に聞いてみるといい。面白い話が聞けるかもしれないぞ」

「じゃあ、明日は、町を散策しながら、話を聞いて回りましょう」

「僕も賛成です。ちょっと気になるところがあったんです」

「えー、それよりもダンジョ、いっ、わ、わかったよ。町の散策だろ」


こうして、明日の予定が決まった。はあ、今日も疲れたし、このあとは風呂にでも入ろうかな。
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