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それから、暫くは忙しかった。
フィデロの裁判では私が関与していない事を証明する必要があったし、それと並行してラルゴ家から出て離婚の調停もあった。
捕まった当時、あんなに激昂していたフィデロだが、意外にも裁判では非常に大人しかった。どうやらここ数年は愛人が栽培していた麻薬を常用していたため、気性が荒くなっていたとの事だ。現在は治療も行われ、理性的に裁判を受けていた。
だからと言って、した事が全て水に流れる訳でもない。彼のした事は重罪だ。王命の無視だけでなく、麻薬栽培の斡旋や議会の買収、その他過去の強引な建設による賠償等も積み重なった。
数ヶ月もの裁判の結果、フィデロは爵位剥奪の上、懲役五十年としてフィデリアのはずれの島にある刑務所に送られる事となった。ラルゴ家の当主はフィデロの甥が務める事となったが、前当主の醜聞と残した賠償金で苦悩しているらしい。名家のため一族ごと取り潰しとはならないものの、この国の貴族界や議会では発言権が無い程落ちぶれてしまった。
また彼の愛人は、獄中の中で亡くなったらしい。麻薬による中毒死で、幼い頃から長く服用していた事による弊害だそうだ。愛人の家はそれなりに有名な商家だった様だが、こちらは取り潰しの上麻薬栽培と販売の罪で一族ごと逮捕された。
ただ離婚を望んでいただけの私には重い結末だったが、全ては仕方がない事だ。
そして最後の法廷でフィデロは傍聴席にいた私の方を一瞥した。その瞳には申し訳無さや、後悔の色が滲んでいた。今更私が彼に出来る事は何も無いし、散々されてきた事を許す訳でも無い。しかしこれから迎える刑期の中で、少しでも彼の意識が良い方向に変わっていく事を祈る。
無事に離婚が成立したものの、それでも直ぐに私の周りが落ち着くという事は無かった。案の定国王陛下が別の婚姻相手を私に宛てがおうとし、第二王子殿下が止めて下さったが中々に揉めてしまったが、結果的には私の希望通り、私自身がレアンドロ家の当主の座を降りる事で決着が着いた。元より私の弟たちは優秀であるし、既に両家の娘と結婚して子供もいる。私にどこかのオメガや女性との子供を望むのは難しいため、跡継ぎの問題を含めて弟に席を譲る事で決着した。
もちろん私も、いきなり全ての仕事を放棄する訳では無い。レアンドロ領内に新しい家を建て、そちらで暮らしながら新当主補佐として働く事になった。
また、ミカエルも何度か祖国に帰ったりもした。彼も今やシルスターン内での地位がある。全てを返上して私のために国を出てくれるつもりの様だったが、私とアンドレアス第二王子殿下がそれを阻止するための書状をシルスターンの国王に送った。あちらの国王もミカエルを大層買っている様で、結局は栄誉爵位と時々帰ってきては騎士団の指導をする立場だけは確保出来ることになり、その調整で何度か国に戻る事になった。
そうして慌ただしくしていた事もあり、気が付けばミカエルとの再会から既に五ヶ月近く経とうとしていた。それでもいろいろな事が片付いたおかげで、やっとミカエルがこちらの国に定住できる事になったのだった。
「そろそろお休みになりますか」
「そうだな……その前にハーブ茶を貰えるか」
「承知致しました」
夕食の後、邸宅の二階にある自室で本を読んでいた私に侍従が声を掛ける。新しく移ってきたこの邸宅は、以前のラルゴ家や実家のレアンドロ家と比べると遥かに小さい。住み込みで働いてもらっているのは執事と侍従、コックとメイド長くらいだ。あとは通いの使用人数人でどうにかなるくらい、この屋敷は以前と比べてこじんまりとしている。
だが、私とミカエルが二人で住むには十分だろう。本当はもう少し大きな屋敷を建てるつもりだったが、ミカエルが言ったのだ。
「あんまり広くても、ステファノと一緒に居られる空間が減るのは嫌だな。俺はずっとくっついて抱きしめ合うくらいの生活を想像してたんだが」
「……」
あの時のミカエルの言葉を思い出すと、今でも頬が熱くなる。私が口下手な分、愛を常に表現してくれる彼には感謝しか無いのだが、如何せん耐性がないのもあって、毎回どぎまぎしてしまうのだ。
そして彼の言う通り、もう少し小さな屋敷を建てた。とうとうミカエルと一緒に暮らせる、と思うと、ハーブ茶でも飲まないと落ち着かないくらいだ。
部屋のドアがノックされ、侍従が茶器を載せた盆を手にして入ってくる。そして私の前の机にティーカップを置き、お茶を注ぎながら口を開いた。
「明日漸く愛しい方と会えるからと言って、そんなにそわそわとしていては今夜眠れませんよ」
「……そんなに分かりやすいか、私は」
「ええ、それはもう」
侍従は揶揄する様な笑みを浮かべ、盆を手に部屋を後にした。
色々と良くしてくれる侍従……基、第二王子殿下の側近マッシオは、何故か今でも私の侍従として働いてくれていた。アンドレアス殿下の側近という事は、それなりの家名と地位がある人物だと思われるが、その正体は良く分からない。隠密系の仕事を任されている様で、偶に屋敷から姿を消す事がある。しかし大抵は私の傍に付いて、未だに侍従として働いているのだ。
もう第二王子殿下の元に帰っても構わないと言ったのだが、マッシオは譲らなかった。「表向きの顔としてここは最適ですし、まあ貴方の元で働くのも悪くないですから」と悪びれもせずに言うのだから、私は彼が気に入っている。読めない男だが、変に取り繕わないところが信頼出来る。
ハーブ茶を一口飲んだ。優しい味わいで、口の中がすっきりとする。もう秘密裏に輸入した物の中から自分用に分ける必要も無いし、こうして夜に大好きな小説を読み、目を潤ませたとしても誰に何も言われない。何なら昼間に読んでいても構わないくらいだろう。
望んでいた生活だが、圧倒的に足りないものがある。
それが、ミカエルの存在だ。彼だけが足りないものだから、私の心はいつまでも埋まらない。しかしそんな日々も、明日で終わるのだ。とうとうミカエルが明日、我が家に住まう為にやってくるのだから。浮き足立って、顔が火照っても仕方が無い。とうに諦め、待ち望んだ生活が始まるのだ。
そわそわと落ち着かない気持ちを抑えながら、茶を口にする。最早日課となっている小説も目が滑り、頭に入って来ない。飲み終えたら早々に就寝するか……と考える中、突然窓の外で馬の脚音がした。
こんな夜半に馬が駈ける音がするなんておかしいと思い、私は立ち上がって窓辺に近寄った。
「ステファノ!」
「……ミカ!?」
真っ黒な馬に乗った大柄の男性が、二階の窓辺に立つ私に向かって微笑んだ。私は慌てて上着を手にすると、一階の玄関へと降りて行った。心臓がバクバクと無駄に煩いのを無視して、玄関の扉を開ける。
「ステファノ……」
馬を繋いでいたミカエルが、私の方に向かって歩いてくる。家の灯りが近付くにつれてはっきりと見えてくる彼の顔に、胸がいっぱいになった。離れていたのは精々、数ヶ月だ。再会する前は二年も会えていない。それなのに、永遠にも思える程辛く長く感じた。もうこの人の腕の中で無ければ、生きていく事は難しい。
思わず目の前の人に抱き着くと、ミカエルは喉の奥で笑い私の体に腕を回してくれた。
「……おかえり、ミカエル」
「ただいま」
「どうしてここに?明日来る予定では無かっただろうか」
「だって、待てないだろ。荷物があったら馬車を使う必要があるし明日になる。でも馬に乗って単独で来れば、すぐに来れる」
「荷物はどうするんだ」
「明日取りに行くさ」
二度手間じゃないか、と笑う私に、ミカエルが目を細めた。その瞳にありありと私への想いが篭っていたから、私の胸は高鳴って仕方が無かった。
そして見つめ合ううちに、どちらからともなくキスをした。あの牢屋のような部屋でして以来だ。再会してから、何となくお互い忙しい上に、片付けるべき事が多すぎた。気付けば暗黙の了解の様に、二人で過ごせる事になったらこういう事はしよう、という雰囲気がお互いに感じ取れていた。
だからこそ、タガが外れた。
「う、……あっ、ミカ……」
「はあ、ステファノ……」
ここが玄関先だという事も忘れて、私とミカエルは深い口付けに没頭した。彼の熱い舌が私の中を蹂躙し、それでも足りないという様に後頭部に手を添えられ、角度を変えて深く唇を合わせられた。
ぞくぞくとした感覚が身体を走り、身を捩る私をミカエルは許さない。ぐっと腰を押し付けられて、二人の昂りが布越しに合わさる。まるであの地下室での再現の様だが、あの時に感じていた穏やかな性欲とは違い、激しくて身を焦がしそうな熱さに私は頭が沸騰しそうだった。
とりあえず、息を乱しながら私はミカエルの胸を押し返す。
「ミカ、駄目だ……部屋に行こう」
「……」
ここではいつ侍従が来るか分からないから、と言えば、ミカエルは渋々私から離れた……と思いきや、何と突然私の膝裏から手をすくい上げ、ひょいと私を抱き抱えてしまった。
声も無く目を白黒とさせる私を他所に、ミカエルが「部屋はどっちだ?」と聞くので、私は慌てて「二階の一番奥だ」と答える。
全く揺らぎもない足取りですたすたとそのまま私を抱きかかえ、ミカエルは階段を上って私の部屋……ではなく、私とミカエルの寝室となる予定の部屋に入っていく。
何度も言うが、私はアルファである。体格は並のベータよりも遥かに良いし、それなりに筋肉質だから重い筈だ。しかし全くそれを感じさせないくらい軽々と運ばれて、私は寝室のベッドに仰向けに寝かされた。
すかさず覆いかぶさってくるミカエルと目が合う。
最早私の心臓は飛び出てしまうのでは無いかという位、早鐘を打っている。こんな……いつも私が読んでいる小説のような展開が、本当に自分の身に起きるだなんて思いもよらなかった。
まるで私を捕食するかの如く射貫くその瞳に、情欲が浮かんでいる。それを見た瞬間、私も我慢がきかなくなった。思わず彼の首に手を回せば、玄関での続きが始まる。
「んっ、……」
「はあ……」
再び始まった深いキスに、陶然としてしまう。意図的に擦り付けられる下腹部の熱は、解放される事を待ち望むかのようにお互い膨らんでいく。
ミカエルの唇が、私の首元に移る。その節榑立つ大きな手が私の上の寝巻きの裾から這い上がり、胸元を掠めた。
「あっ……」
「……」
思わず高い声が漏れてしまい、私は慌てて口を塞いだ。こんな声をいきなり聞かされても、ミカエルも萎えてしまうのでは無いか。羞恥で全身が熱くなる中彼を見遣れば、表情の見えない顔で私を見下ろしていた。
その指が、私の胸の頂点を再び掠める。指の腹で触るか触らないか分からないような加減で触れられて、私の身体が跳ねた。
次第にその指の動きも大胆になる。ゆっくりと指先で摘まれて、こりこりと優しく捻り上げられた。
「あっ!……ミカ……っ駄目だ……」
「ダメそうには見えない」
容赦なく両方の胸を責められながら、ミカエルは密着させた腰を私に押し付ける。厭らしく上下に動かすものだから、私の昂りきったそこから粘着質な音が響き、私の顔は火照った。
恥ずかしくて顔を隠そうとしたが、ミカエルの手でやんわりと制止された。視線で抗議を投げかければ、ミカエルの唇があやす様に降ってくる。
「隠すなよ。全部見たいんだ、俺は」
「……幻滅しないか」
アルファがこんな風に乱れて喘いでも、普通なら気持ちが悪いと一蹴される位のものだろう。アルファはアルファらしく、誰かを喘がせる事はあっても、自分が組み敷かれて喘ぐ事を良しとはしない。今更になって不安が襲ってきたが、ミカエルは苦笑いを浮かべて私の頭を撫でた。
「幻滅?する筈がない。俺の手で乱れるステファノなんて、可愛い以外の何者でも無いだろう」
「でも……」
「俺はアルファとかオメガとか、男とか女とか関係なくステファノに惚れてる。だからどんな姿でも好きだし、みっともない所なんて知れば知る程可愛いと思える。だから安心してくれ」
「ミカ……」
「それに」
ぐいっと再び押し付けられたそこは、私よりも随分と大きく育っていると感じた。体格の良いミカエルなので、私のへそにまで届きそうな程大きい。思わず身震いすれば、ミカエルの腰が前後に動いた。
「ああ、待ってくれ……っ」
「待てない。愛してるんだ、ステファノ。こんなになるくらい」
ミカエルが性急に私の上と下の寝間着を脱がせ、下着まで剥ぎ取ってしまった。そして彼は自身のスラックスの前を寛げて、直接触れ合い、その熱を私に伝えてくる。
ぬちゃ、と厭らしい音が聞こえて、思わず足を閉じそうになった私を彼は許さず、私の足を掴んで大きく開かせてしまった。
ミカエルの大きな手で、二本纏めて上下に動かされる。しかも彼の裏側が私の裏側と擦れて、思わず身体が仰け反った。
「ん、あ……っ!そんな、動かさないで……っ」
「分かるか?ステファノ……もうこんなになってる。愛してるから、俺がこうなっている事を……っ」
「分かる、分かるから……ああっ!」
更に足を広げさせられた私は、あまりの恥ずかしい体勢に泣きそうになった。しかしミカエルは微笑むばかりで、ベッドの脇に置いてあった鞄から軟膏の様なものを取り出す。
そして私の許可も無く、そっと後孔にその軟膏を塗り込んだ。少しひやりとした感覚はあったものの、ミカエルの指が優しく孔を撫でるので、私は震えた。
アルファやベータの男は、勝手に後ろが濡れたりはしない。きっとミカエルはそんな相手とした事も無いだろうが、私のために用意してくれていたのだろう。優しく指で解してくれようとする彼にも、嬉しくて涙が零れそうだった。
しかしミカエルは、少し眉根を寄せた様な顔で私を見下ろしている。
何かしてしまったのか、と頭が冷えそうになる中、彼が口を開いた。
「ステファノ……確認だが、ステファノはこういう事を誰かとした事は無いよな?」
「無い。殿下とも、夫とも……」
「そうだろうなと思ってるが。ただ、ここがあまりにも柔らかいから……さっきも思ったが、乳首もかなり感じるみたいだし」
今度こそ、私は全身が真っ赤に燃えた。
そうだ。私は本当に清らかな身で、誰とも寝所を共にした事なんて無い。浮気を疑われてはいないと思うが、そうなると何故こんなにも開発済みなのかという疑問が湧いてもおかしくない。
ああ、言いたくない。でも、どこかの娼館にでもまた赴いたなんて疑われたくもない。私はおずおずと口を開いた。
「それは、自分で……その、ミカのは大きそうだから……」
「明日俺が帰ってくるから、慣らしておいてくれたのか?」
「それもある、が……もう、ミカと出会ってからずっと、そうして……自分で、たまにだが、慰めていた……」
「……」
「だって、ミカが言ったんだ、次に会う時は抱くと……」
自分で言っておきながら、恥ずかしくて死にそうだった。一人でミカを思ってしていたという事を自白するのは、こんなにも恥ずかしいのか。ただ一つ弁明させて貰えるとしたら、私は元々淡白な人間だったという事だ。ただミカエルを思えば、そうなっただけで……。
そもそも、彼との地下室での最後の日、ミカエルが言ったのだ。「次に会う時は、抱かせてくれ。思う存分」と。そんな熱を託されたら、私だって耐えられない。
最早人生で一番と言ってもいいくらい屈辱的で、私はまともにミカエルの方を見れなかった。
ややあってから、ミカエルがため息をついた。はしたない私に呆れられてしまったのかと青ざめそうになったが、突然孔の中に指を入れられてしまい、私は喘ぐ他無かった。
「ま、待って、いきなりそんな……あっ、」
「なんだよ、本当に……何なんだ、可愛すぎるだろう」
「んっ、中で指を、曲げないで……あ、ああっ!」
「はあ、無理だ。堪らない」
曲げられた指で、私の中の上側をぐにぐにと押された。その度に喘ぎ声を上げる私に、ミカエルの指は容赦が無かった。孔を広げるような動作を見せる指は気付けば二本、三本と増やされていく。
知られてしまった私の感じるところ……中の奥の上側を時折押され、はしたなく私は喘ぐしか出来ない。気が付けば前のものはだらだらと汁を零し、広げた足の間でそそり立っていた。
その汁と軟膏が混ざり、私の内部からとんでもなく恥ずかしい音がする。耳を塞ぎたいが、そちらに気を配る余裕も無い。四本に増やされた指が私の中を蹂躙し、私の孔は厭らしく収縮する以外出来なくなっていた。
「ああっ、ミカ……っ、もう、駄目……出てしまうし、何かきそうだ……」
「来そう?もうイくか?」
「あっ、だから、……早く、挿入て欲しい……」
「……」
その瞬間、目の前の男の理性の糸が切れるのが分かった。
ミカエルは早急に指を引き抜き、私の太腿を掴むとその自身の昂りを孔に押し付けてきた。期待と不安で揺らめくそこに、彼は容赦なく己の熱を突き立てる。
「ああああっ!ミカ……っ!」
「ステファノ、っ……愛してる」
言われる度に、私の心が解けていく。すっかり泥濘んだそこは、ミカエルの熱くて大きすぎる怒張もゆっくりと飲み込んでいった。
苦しい。圧迫感に押し潰されそうだが、同時に嬉しくて仕方が無かった。私達の間に子供は生まれないし、この行為に生物的な生産性は無い。しかしだからこそ、愛があるのだ。
ずぷり、という音と共に、臀部にミカエルの足の付け根が当たる。その長大なものを最後まで受け入れた事に感極まり、私は軽く達してしまった。
その締め付けにミカエルが唸り、眉根を寄せる。男らしい苦渋の表情に、私の胸は高鳴った。
ミカエルは私の頬に手を添えて言った。
「苦しくないか?」
「っ、苦しい……でも、それだけじゃない」
「……気持ち良い?」
「……気持ち良い」
「俺もだ」
ゆっくりと、ミカエルが腰を進める。緩やかに前立腺を擦られているのが、まるで焦らされている様に感じてしまう。ミカエルの先端が私の中を押し潰す度に、一人では到底得られない快楽が腰から頭まで駆け抜ける。
身を捩る私を逃がすまいとミカエルが私の腰を掴むものだから、余計に私は髪を振り乱して喘いだ。
「あっ!、ミカ……っ意地が悪い……」
「悪い、優しくしたいんだけど、喘いでいるステファノがあんまりにも可愛いから……」
「ん、う……っそこ、嫌だ……っ」
「イイの間違いだろう」
段々と早くなる腰使いに、私はただ喘いで翻弄されるしか無かった。ミカエルも私を穿つ度に吐息を漏らし、感じてくれている事の嬉しさで私は脳から溶けそうだ。
更に激しく中の感じるところを狙われて、私は痙攣した。
「ああっ!もう、駄目だっ……っ!」
「はぁ、ステファノ……俺も……」
「あ、あっ……!あああっ……、!」
「っく……」
自分の意思とは関係なく、快感が背筋を駆け抜けて身体が仰け反った。頭が真っ白になり、気が付けば私の前が白い液体を漏らしている。……一人でするのなんて比にならない程の快楽に、わたしは息も絶え絶えだ。
しかも、普段ならただ達して終わりだ。何故か中をミカエルに抉られて得た快楽は後を引き、息を整えながらもびくびくと身体が動いてしまった。
私が達した事で中を締め付けてしまい、ミカエルも小さな呻き声を上げ、私の中に熱い液体を放った。その熱さに陶然となり、私は目の前の人に抱き着いた。
「ミカ……」
「ステファノ。本当に可愛かったし最高だった……もう一回いいか?」
「……」
愛する人に求められる事は、こんなにも素晴らしい体験なのか。何もかも知らない私は、こくりと頷きながら涙が零れた。
そんな私にミカエルは笑い、「ステファノは本当に泣き虫だな」と言って頭を撫でてくれるものだから、少しだけ涙腺がおかしくなってしまった。二回目はずっと彼に密着し、成る可く泣き顔を隠そうと必死になるのだった。
フィデロの裁判では私が関与していない事を証明する必要があったし、それと並行してラルゴ家から出て離婚の調停もあった。
捕まった当時、あんなに激昂していたフィデロだが、意外にも裁判では非常に大人しかった。どうやらここ数年は愛人が栽培していた麻薬を常用していたため、気性が荒くなっていたとの事だ。現在は治療も行われ、理性的に裁判を受けていた。
だからと言って、した事が全て水に流れる訳でもない。彼のした事は重罪だ。王命の無視だけでなく、麻薬栽培の斡旋や議会の買収、その他過去の強引な建設による賠償等も積み重なった。
数ヶ月もの裁判の結果、フィデロは爵位剥奪の上、懲役五十年としてフィデリアのはずれの島にある刑務所に送られる事となった。ラルゴ家の当主はフィデロの甥が務める事となったが、前当主の醜聞と残した賠償金で苦悩しているらしい。名家のため一族ごと取り潰しとはならないものの、この国の貴族界や議会では発言権が無い程落ちぶれてしまった。
また彼の愛人は、獄中の中で亡くなったらしい。麻薬による中毒死で、幼い頃から長く服用していた事による弊害だそうだ。愛人の家はそれなりに有名な商家だった様だが、こちらは取り潰しの上麻薬栽培と販売の罪で一族ごと逮捕された。
ただ離婚を望んでいただけの私には重い結末だったが、全ては仕方がない事だ。
そして最後の法廷でフィデロは傍聴席にいた私の方を一瞥した。その瞳には申し訳無さや、後悔の色が滲んでいた。今更私が彼に出来る事は何も無いし、散々されてきた事を許す訳でも無い。しかしこれから迎える刑期の中で、少しでも彼の意識が良い方向に変わっていく事を祈る。
無事に離婚が成立したものの、それでも直ぐに私の周りが落ち着くという事は無かった。案の定国王陛下が別の婚姻相手を私に宛てがおうとし、第二王子殿下が止めて下さったが中々に揉めてしまったが、結果的には私の希望通り、私自身がレアンドロ家の当主の座を降りる事で決着が着いた。元より私の弟たちは優秀であるし、既に両家の娘と結婚して子供もいる。私にどこかのオメガや女性との子供を望むのは難しいため、跡継ぎの問題を含めて弟に席を譲る事で決着した。
もちろん私も、いきなり全ての仕事を放棄する訳では無い。レアンドロ領内に新しい家を建て、そちらで暮らしながら新当主補佐として働く事になった。
また、ミカエルも何度か祖国に帰ったりもした。彼も今やシルスターン内での地位がある。全てを返上して私のために国を出てくれるつもりの様だったが、私とアンドレアス第二王子殿下がそれを阻止するための書状をシルスターンの国王に送った。あちらの国王もミカエルを大層買っている様で、結局は栄誉爵位と時々帰ってきては騎士団の指導をする立場だけは確保出来ることになり、その調整で何度か国に戻る事になった。
そうして慌ただしくしていた事もあり、気が付けばミカエルとの再会から既に五ヶ月近く経とうとしていた。それでもいろいろな事が片付いたおかげで、やっとミカエルがこちらの国に定住できる事になったのだった。
「そろそろお休みになりますか」
「そうだな……その前にハーブ茶を貰えるか」
「承知致しました」
夕食の後、邸宅の二階にある自室で本を読んでいた私に侍従が声を掛ける。新しく移ってきたこの邸宅は、以前のラルゴ家や実家のレアンドロ家と比べると遥かに小さい。住み込みで働いてもらっているのは執事と侍従、コックとメイド長くらいだ。あとは通いの使用人数人でどうにかなるくらい、この屋敷は以前と比べてこじんまりとしている。
だが、私とミカエルが二人で住むには十分だろう。本当はもう少し大きな屋敷を建てるつもりだったが、ミカエルが言ったのだ。
「あんまり広くても、ステファノと一緒に居られる空間が減るのは嫌だな。俺はずっとくっついて抱きしめ合うくらいの生活を想像してたんだが」
「……」
あの時のミカエルの言葉を思い出すと、今でも頬が熱くなる。私が口下手な分、愛を常に表現してくれる彼には感謝しか無いのだが、如何せん耐性がないのもあって、毎回どぎまぎしてしまうのだ。
そして彼の言う通り、もう少し小さな屋敷を建てた。とうとうミカエルと一緒に暮らせる、と思うと、ハーブ茶でも飲まないと落ち着かないくらいだ。
部屋のドアがノックされ、侍従が茶器を載せた盆を手にして入ってくる。そして私の前の机にティーカップを置き、お茶を注ぎながら口を開いた。
「明日漸く愛しい方と会えるからと言って、そんなにそわそわとしていては今夜眠れませんよ」
「……そんなに分かりやすいか、私は」
「ええ、それはもう」
侍従は揶揄する様な笑みを浮かべ、盆を手に部屋を後にした。
色々と良くしてくれる侍従……基、第二王子殿下の側近マッシオは、何故か今でも私の侍従として働いてくれていた。アンドレアス殿下の側近という事は、それなりの家名と地位がある人物だと思われるが、その正体は良く分からない。隠密系の仕事を任されている様で、偶に屋敷から姿を消す事がある。しかし大抵は私の傍に付いて、未だに侍従として働いているのだ。
もう第二王子殿下の元に帰っても構わないと言ったのだが、マッシオは譲らなかった。「表向きの顔としてここは最適ですし、まあ貴方の元で働くのも悪くないですから」と悪びれもせずに言うのだから、私は彼が気に入っている。読めない男だが、変に取り繕わないところが信頼出来る。
ハーブ茶を一口飲んだ。優しい味わいで、口の中がすっきりとする。もう秘密裏に輸入した物の中から自分用に分ける必要も無いし、こうして夜に大好きな小説を読み、目を潤ませたとしても誰に何も言われない。何なら昼間に読んでいても構わないくらいだろう。
望んでいた生活だが、圧倒的に足りないものがある。
それが、ミカエルの存在だ。彼だけが足りないものだから、私の心はいつまでも埋まらない。しかしそんな日々も、明日で終わるのだ。とうとうミカエルが明日、我が家に住まう為にやってくるのだから。浮き足立って、顔が火照っても仕方が無い。とうに諦め、待ち望んだ生活が始まるのだ。
そわそわと落ち着かない気持ちを抑えながら、茶を口にする。最早日課となっている小説も目が滑り、頭に入って来ない。飲み終えたら早々に就寝するか……と考える中、突然窓の外で馬の脚音がした。
こんな夜半に馬が駈ける音がするなんておかしいと思い、私は立ち上がって窓辺に近寄った。
「ステファノ!」
「……ミカ!?」
真っ黒な馬に乗った大柄の男性が、二階の窓辺に立つ私に向かって微笑んだ。私は慌てて上着を手にすると、一階の玄関へと降りて行った。心臓がバクバクと無駄に煩いのを無視して、玄関の扉を開ける。
「ステファノ……」
馬を繋いでいたミカエルが、私の方に向かって歩いてくる。家の灯りが近付くにつれてはっきりと見えてくる彼の顔に、胸がいっぱいになった。離れていたのは精々、数ヶ月だ。再会する前は二年も会えていない。それなのに、永遠にも思える程辛く長く感じた。もうこの人の腕の中で無ければ、生きていく事は難しい。
思わず目の前の人に抱き着くと、ミカエルは喉の奥で笑い私の体に腕を回してくれた。
「……おかえり、ミカエル」
「ただいま」
「どうしてここに?明日来る予定では無かっただろうか」
「だって、待てないだろ。荷物があったら馬車を使う必要があるし明日になる。でも馬に乗って単独で来れば、すぐに来れる」
「荷物はどうするんだ」
「明日取りに行くさ」
二度手間じゃないか、と笑う私に、ミカエルが目を細めた。その瞳にありありと私への想いが篭っていたから、私の胸は高鳴って仕方が無かった。
そして見つめ合ううちに、どちらからともなくキスをした。あの牢屋のような部屋でして以来だ。再会してから、何となくお互い忙しい上に、片付けるべき事が多すぎた。気付けば暗黙の了解の様に、二人で過ごせる事になったらこういう事はしよう、という雰囲気がお互いに感じ取れていた。
だからこそ、タガが外れた。
「う、……あっ、ミカ……」
「はあ、ステファノ……」
ここが玄関先だという事も忘れて、私とミカエルは深い口付けに没頭した。彼の熱い舌が私の中を蹂躙し、それでも足りないという様に後頭部に手を添えられ、角度を変えて深く唇を合わせられた。
ぞくぞくとした感覚が身体を走り、身を捩る私をミカエルは許さない。ぐっと腰を押し付けられて、二人の昂りが布越しに合わさる。まるであの地下室での再現の様だが、あの時に感じていた穏やかな性欲とは違い、激しくて身を焦がしそうな熱さに私は頭が沸騰しそうだった。
とりあえず、息を乱しながら私はミカエルの胸を押し返す。
「ミカ、駄目だ……部屋に行こう」
「……」
ここではいつ侍従が来るか分からないから、と言えば、ミカエルは渋々私から離れた……と思いきや、何と突然私の膝裏から手をすくい上げ、ひょいと私を抱き抱えてしまった。
声も無く目を白黒とさせる私を他所に、ミカエルが「部屋はどっちだ?」と聞くので、私は慌てて「二階の一番奥だ」と答える。
全く揺らぎもない足取りですたすたとそのまま私を抱きかかえ、ミカエルは階段を上って私の部屋……ではなく、私とミカエルの寝室となる予定の部屋に入っていく。
何度も言うが、私はアルファである。体格は並のベータよりも遥かに良いし、それなりに筋肉質だから重い筈だ。しかし全くそれを感じさせないくらい軽々と運ばれて、私は寝室のベッドに仰向けに寝かされた。
すかさず覆いかぶさってくるミカエルと目が合う。
最早私の心臓は飛び出てしまうのでは無いかという位、早鐘を打っている。こんな……いつも私が読んでいる小説のような展開が、本当に自分の身に起きるだなんて思いもよらなかった。
まるで私を捕食するかの如く射貫くその瞳に、情欲が浮かんでいる。それを見た瞬間、私も我慢がきかなくなった。思わず彼の首に手を回せば、玄関での続きが始まる。
「んっ、……」
「はあ……」
再び始まった深いキスに、陶然としてしまう。意図的に擦り付けられる下腹部の熱は、解放される事を待ち望むかのようにお互い膨らんでいく。
ミカエルの唇が、私の首元に移る。その節榑立つ大きな手が私の上の寝巻きの裾から這い上がり、胸元を掠めた。
「あっ……」
「……」
思わず高い声が漏れてしまい、私は慌てて口を塞いだ。こんな声をいきなり聞かされても、ミカエルも萎えてしまうのでは無いか。羞恥で全身が熱くなる中彼を見遣れば、表情の見えない顔で私を見下ろしていた。
その指が、私の胸の頂点を再び掠める。指の腹で触るか触らないか分からないような加減で触れられて、私の身体が跳ねた。
次第にその指の動きも大胆になる。ゆっくりと指先で摘まれて、こりこりと優しく捻り上げられた。
「あっ!……ミカ……っ駄目だ……」
「ダメそうには見えない」
容赦なく両方の胸を責められながら、ミカエルは密着させた腰を私に押し付ける。厭らしく上下に動かすものだから、私の昂りきったそこから粘着質な音が響き、私の顔は火照った。
恥ずかしくて顔を隠そうとしたが、ミカエルの手でやんわりと制止された。視線で抗議を投げかければ、ミカエルの唇があやす様に降ってくる。
「隠すなよ。全部見たいんだ、俺は」
「……幻滅しないか」
アルファがこんな風に乱れて喘いでも、普通なら気持ちが悪いと一蹴される位のものだろう。アルファはアルファらしく、誰かを喘がせる事はあっても、自分が組み敷かれて喘ぐ事を良しとはしない。今更になって不安が襲ってきたが、ミカエルは苦笑いを浮かべて私の頭を撫でた。
「幻滅?する筈がない。俺の手で乱れるステファノなんて、可愛い以外の何者でも無いだろう」
「でも……」
「俺はアルファとかオメガとか、男とか女とか関係なくステファノに惚れてる。だからどんな姿でも好きだし、みっともない所なんて知れば知る程可愛いと思える。だから安心してくれ」
「ミカ……」
「それに」
ぐいっと再び押し付けられたそこは、私よりも随分と大きく育っていると感じた。体格の良いミカエルなので、私のへそにまで届きそうな程大きい。思わず身震いすれば、ミカエルの腰が前後に動いた。
「ああ、待ってくれ……っ」
「待てない。愛してるんだ、ステファノ。こんなになるくらい」
ミカエルが性急に私の上と下の寝間着を脱がせ、下着まで剥ぎ取ってしまった。そして彼は自身のスラックスの前を寛げて、直接触れ合い、その熱を私に伝えてくる。
ぬちゃ、と厭らしい音が聞こえて、思わず足を閉じそうになった私を彼は許さず、私の足を掴んで大きく開かせてしまった。
ミカエルの大きな手で、二本纏めて上下に動かされる。しかも彼の裏側が私の裏側と擦れて、思わず身体が仰け反った。
「ん、あ……っ!そんな、動かさないで……っ」
「分かるか?ステファノ……もうこんなになってる。愛してるから、俺がこうなっている事を……っ」
「分かる、分かるから……ああっ!」
更に足を広げさせられた私は、あまりの恥ずかしい体勢に泣きそうになった。しかしミカエルは微笑むばかりで、ベッドの脇に置いてあった鞄から軟膏の様なものを取り出す。
そして私の許可も無く、そっと後孔にその軟膏を塗り込んだ。少しひやりとした感覚はあったものの、ミカエルの指が優しく孔を撫でるので、私は震えた。
アルファやベータの男は、勝手に後ろが濡れたりはしない。きっとミカエルはそんな相手とした事も無いだろうが、私のために用意してくれていたのだろう。優しく指で解してくれようとする彼にも、嬉しくて涙が零れそうだった。
しかしミカエルは、少し眉根を寄せた様な顔で私を見下ろしている。
何かしてしまったのか、と頭が冷えそうになる中、彼が口を開いた。
「ステファノ……確認だが、ステファノはこういう事を誰かとした事は無いよな?」
「無い。殿下とも、夫とも……」
「そうだろうなと思ってるが。ただ、ここがあまりにも柔らかいから……さっきも思ったが、乳首もかなり感じるみたいだし」
今度こそ、私は全身が真っ赤に燃えた。
そうだ。私は本当に清らかな身で、誰とも寝所を共にした事なんて無い。浮気を疑われてはいないと思うが、そうなると何故こんなにも開発済みなのかという疑問が湧いてもおかしくない。
ああ、言いたくない。でも、どこかの娼館にでもまた赴いたなんて疑われたくもない。私はおずおずと口を開いた。
「それは、自分で……その、ミカのは大きそうだから……」
「明日俺が帰ってくるから、慣らしておいてくれたのか?」
「それもある、が……もう、ミカと出会ってからずっと、そうして……自分で、たまにだが、慰めていた……」
「……」
「だって、ミカが言ったんだ、次に会う時は抱くと……」
自分で言っておきながら、恥ずかしくて死にそうだった。一人でミカを思ってしていたという事を自白するのは、こんなにも恥ずかしいのか。ただ一つ弁明させて貰えるとしたら、私は元々淡白な人間だったという事だ。ただミカエルを思えば、そうなっただけで……。
そもそも、彼との地下室での最後の日、ミカエルが言ったのだ。「次に会う時は、抱かせてくれ。思う存分」と。そんな熱を託されたら、私だって耐えられない。
最早人生で一番と言ってもいいくらい屈辱的で、私はまともにミカエルの方を見れなかった。
ややあってから、ミカエルがため息をついた。はしたない私に呆れられてしまったのかと青ざめそうになったが、突然孔の中に指を入れられてしまい、私は喘ぐ他無かった。
「ま、待って、いきなりそんな……あっ、」
「なんだよ、本当に……何なんだ、可愛すぎるだろう」
「んっ、中で指を、曲げないで……あ、ああっ!」
「はあ、無理だ。堪らない」
曲げられた指で、私の中の上側をぐにぐにと押された。その度に喘ぎ声を上げる私に、ミカエルの指は容赦が無かった。孔を広げるような動作を見せる指は気付けば二本、三本と増やされていく。
知られてしまった私の感じるところ……中の奥の上側を時折押され、はしたなく私は喘ぐしか出来ない。気が付けば前のものはだらだらと汁を零し、広げた足の間でそそり立っていた。
その汁と軟膏が混ざり、私の内部からとんでもなく恥ずかしい音がする。耳を塞ぎたいが、そちらに気を配る余裕も無い。四本に増やされた指が私の中を蹂躙し、私の孔は厭らしく収縮する以外出来なくなっていた。
「ああっ、ミカ……っ、もう、駄目……出てしまうし、何かきそうだ……」
「来そう?もうイくか?」
「あっ、だから、……早く、挿入て欲しい……」
「……」
その瞬間、目の前の男の理性の糸が切れるのが分かった。
ミカエルは早急に指を引き抜き、私の太腿を掴むとその自身の昂りを孔に押し付けてきた。期待と不安で揺らめくそこに、彼は容赦なく己の熱を突き立てる。
「ああああっ!ミカ……っ!」
「ステファノ、っ……愛してる」
言われる度に、私の心が解けていく。すっかり泥濘んだそこは、ミカエルの熱くて大きすぎる怒張もゆっくりと飲み込んでいった。
苦しい。圧迫感に押し潰されそうだが、同時に嬉しくて仕方が無かった。私達の間に子供は生まれないし、この行為に生物的な生産性は無い。しかしだからこそ、愛があるのだ。
ずぷり、という音と共に、臀部にミカエルの足の付け根が当たる。その長大なものを最後まで受け入れた事に感極まり、私は軽く達してしまった。
その締め付けにミカエルが唸り、眉根を寄せる。男らしい苦渋の表情に、私の胸は高鳴った。
ミカエルは私の頬に手を添えて言った。
「苦しくないか?」
「っ、苦しい……でも、それだけじゃない」
「……気持ち良い?」
「……気持ち良い」
「俺もだ」
ゆっくりと、ミカエルが腰を進める。緩やかに前立腺を擦られているのが、まるで焦らされている様に感じてしまう。ミカエルの先端が私の中を押し潰す度に、一人では到底得られない快楽が腰から頭まで駆け抜ける。
身を捩る私を逃がすまいとミカエルが私の腰を掴むものだから、余計に私は髪を振り乱して喘いだ。
「あっ!、ミカ……っ意地が悪い……」
「悪い、優しくしたいんだけど、喘いでいるステファノがあんまりにも可愛いから……」
「ん、う……っそこ、嫌だ……っ」
「イイの間違いだろう」
段々と早くなる腰使いに、私はただ喘いで翻弄されるしか無かった。ミカエルも私を穿つ度に吐息を漏らし、感じてくれている事の嬉しさで私は脳から溶けそうだ。
更に激しく中の感じるところを狙われて、私は痙攣した。
「ああっ!もう、駄目だっ……っ!」
「はぁ、ステファノ……俺も……」
「あ、あっ……!あああっ……、!」
「っく……」
自分の意思とは関係なく、快感が背筋を駆け抜けて身体が仰け反った。頭が真っ白になり、気が付けば私の前が白い液体を漏らしている。……一人でするのなんて比にならない程の快楽に、わたしは息も絶え絶えだ。
しかも、普段ならただ達して終わりだ。何故か中をミカエルに抉られて得た快楽は後を引き、息を整えながらもびくびくと身体が動いてしまった。
私が達した事で中を締め付けてしまい、ミカエルも小さな呻き声を上げ、私の中に熱い液体を放った。その熱さに陶然となり、私は目の前の人に抱き着いた。
「ミカ……」
「ステファノ。本当に可愛かったし最高だった……もう一回いいか?」
「……」
愛する人に求められる事は、こんなにも素晴らしい体験なのか。何もかも知らない私は、こくりと頷きながら涙が零れた。
そんな私にミカエルは笑い、「ステファノは本当に泣き虫だな」と言って頭を撫でてくれるものだから、少しだけ涙腺がおかしくなってしまった。二回目はずっと彼に密着し、成る可く泣き顔を隠そうと必死になるのだった。
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