転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第二章

12

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「あり得ない、本当にあり得ないわっ!」

 激怒しているホリアムット男爵令嬢を無視して私は荷解きをする。
 そろそろ包帯とか予備が必要かもしれない。
 私は紙に必要な消耗品を書いていく。

「ちょっと、聞いているのっ!」
「……。」

 これで、よさそうね。
 私は満足すると、荷物を纏め、そして、お金を持って部屋から出ようとする。

「ちょっと、あんたわたしに断りもなくどこに行こうとするのよっ!」

 いつの間にかホリアムット男爵令嬢は私の服を掴む。
 ギチギチと服から嫌な音がする。

「消耗品を買いに行こうと思っております。」
「買い物だったら、わたしが行くわよっ!」
「いえ。」

 私が否定の言葉を言えば、ホリアムット男爵令嬢は眉間にしわを寄せる。

「何よ、何か問題でもある?」

 はっきり言えば大有りである。
 彼女がついて行けば確実に欲しいものは買えない上に、余計な店によって余計なものを購入して資金が減ってしまう。
 資金が減れば確実にどこかでお金を稼がなくてはならない。
 無駄なくしなければならないけれども、きっと、それも無理だろうから、最初だけでも切り詰めたいと思っている。

「頂いたお金は限りがあります。」
「で?」
「必要最低限の買い物となります。」
「で?」
「なので、私ひとりで行こうと思っております。」
「で?」
「で?とは?」
「そんなの別にいいじゃない。」
「はい?」
「どうせ、魔族を倒せばお金が入るでしょ?」
「……どのような手段で?」
「普通に落とすでしょ?」
「……。」
「それにミニゲームとかでも手に入るでしょ?」
「魔族を倒しても何もありませんよ。」
「はあ?」

 顔を顰めるホリアムット男爵令嬢に私は天を仰ぎそうになった。
 どうして、ここまで来てゲームと現実を理解しないのだろう。

「彼らを倒して身をぐるみをはぐのですか?」
「何でそんな事をするのよ。」
「それを換金する気なのか思ったのでお聞きしました。」
「何を言っているのよ、倒せば財布に直接お金が入るでしょ?」
「そのような奇術は存じません。」
「普通でしょうっ!」
「そのような現象をこの目で見た事はありません、貴女様は見たことがあるのですか?」
「……。」

 私の質問に彼女は自分の財布を見る。

「――っ!」

 そして、思いっきり私を睨む。

「あんた、わたしのお金を盗んだんでしょっ!」

 どうしてそうなるのかと、私はもう呆れるしかなかった。

「あり得ません。」
「だったら何で増えていないのよっ!」
「普通の事でしょう。」
「あり得ない、この道中にバトルパートがあったのに、普通なら五千は確実でしょ。」
「存じません。」

 私は冷めた目で見れば彼女は激昂する。

「あんたがやったんでしょっ!」
「やっておりません。」
「嘘おっしゃいっ!」

 彼女は私の胸倉を掴み、扉に押し付ける。

「ぐっ…。」

 苦しかった。
 だけど、それも、すぐに終わる。

「何をしている。」

 扉が開き、私の肩を優しく包み込み、ホリアムット男爵令嬢の手を掴む彼の姿がそこにあった。
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