転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第二章

52 《メイカ》

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 怒りで頭がどうにかなってしまいそうだった。
 彼女を救えなかった自分。
 死なせることでしか彼女を救えなかった。
 もっとああしていれば、こうしていればと後悔しながら彼女の亡骸を抱えて進んでいった。
 そして、その原因を作った奴を目の前にしてジッとしている事なんて出来なかったのは当然だろう。
 奴を殺したい。
 目の前が怒りで真っ赤になる。
 無意識に力が漏れ出る。
 周りの事なんて考える余裕なんて当の昔になくなっていた。
 どうせ、主たちは自分よりも強い、自分の炎何て目じゃないだろう。
 彼女の亡骸が心配だったが、下手な奴に触れるよりもいっその事自分の炎で焼いてしまった方がいい気がする。
 彼女に触れていいのは自分だけだ、主やあの方でも触れて欲しくない。

「考え事とは余裕だな。」
「……。」

 激しい攻防のはずなのに相手は涼しい顔をして全て捌いている。
 怒りで攻撃が単調になってしまっていたのかもしれない。
 怒りを殺す必要などない。
 どうせ、ここですべてを終わらせるんだ。
 こいつも、自分も。
 地獄の業火を纏い、相手を攻撃する。
 ここでこいつを逃がす気なんてない。
 どうせ、彼女がいないこの世界に未練なんてない、だからもういいんだ。
 この身がどうなろうと、この後の事は全て主たちに任せる。
 自分たちはあくまでもまがい物だ、本物に全てを託しても問題なんてないだろう。
 さあ、最後に弔いの炎を燃やしてやろうじゃないか。
 口角を上げ、笑う。

 ああ、もっともっと触れていたかった。
 いやがっても、放してやるんじゃなかった。
 しがらみなんて、考える必要なんてなかったのにな。
 てを掴んでいればよかったのに、何でだろうな。
 るーるなんて関係なかったのに、ああ、もったいない事をしたな。
 みな、みな、もっとお前の名前を呼んでいればよかった。
 なあ、もし、あの世と言うものがあったのなら、ちゃんと聞いてくれよな。
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