逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

美女の眼

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「あら、まだ何かありまして?」
「わ、わたしは適性を見ただけです。」
「……。」

 まだ言うのかと彼女は呆れたような顔をしている。

「適正ね。」
「はい、このような幼い子どもがこんな薬草を採れるはずがありません、きっと誰かのを盗んだに違いありません。」
「……盗品と言いたいの?」
「可能性はあると思いますが。」
「……そう。」

 静かな声で彼女がそう言えば、ギルド職員はホッとしたような顔をしている。
 私は思わずこの人は馬鹿なのではないのかと思った。
 彼女は先ほどから自分の娘と同じ年ごとの少女である私を気にかけてくれてていた、それなのに、さらにその少女である私に疑いをかけるなんて、殺されたいんだろうか?

「貴方の言い分は、というよりも、貴方の目が節穴だという事が十分に理解いたしました。」
「えっ?」
「まず、一つ目、もし、それが盗品だとしてそれ程の物が盗まれたのならば今頃その届け出が出ているはずですよ?」
「そ、それは…。」
「それに、彼女は地の精霊に好かれているようですからね。」
「えっ?」
「精霊に好かれている者は加護されていますので、その薬草に僅かに彼女の力が宿っている事くらい、力を持っている者は分かりますから。」
「………。」
「それにしても…。」

 美女は嫌やかな目でギルド職員を睨む。

「貴方は自分の言葉に気づいていないのかしら?」
「えっ?」
「貴方は確かそれを保存状態が悪いと言っていましたよね。」
「……。」
「それなのに、価値があるなんて矛盾していますよね?」
「……。」
「まあ、言えば切れがありませんが、一言で言えば貴方は彼女に対して嘘を吐いて騙そうとした、それは間違いありませんよね。」
「ですが…。」
「わたしは多少の事でしたら目を瞑ろうかと思っている所もあるんですよ?」
「えっ?」

 私は彼女の見た目からしたらそんな不正など許さないタイプに見えるのだが、やはり彼女はギルド長なのか腹黒い一面もありそうだ。

「人は一度や二度過ちを犯します、でも、貴方のそれは人として犯してはいけないラインであり、それに、もうすでにイエローゾーンまで行っていましたしね。」
「そんな。」
「残念でしたね、隠すのならもっと狡猾に隠さないと。」

 美女は目を眇め、夫を見る。
 彼は小さく頷き、ギルド職員の首根っこを掴み外に放り出す。

「今月のお給料はお支払いいたしますが、もう明日からは結構です。」
「ぎ、ギルド長っ!」
「あら、そう言えば、言い忘れておりましたね、一応ここに雇う時に契約書に書いておりましたよね?」
「何を。」
「解雇時、一つの「呪」を施すと。」

 ニッコリと微笑む彼女の足元に黄色の陣が現れる。

「わたし、エメーリエ支部のギルド長クレーティアの名の元に。
 その命潰えるまでここで知り得た情報を誰にも話せない事を、そして、その情報があらゆる手段で手放した時、拡散した時、それに応じた罰を追う事を、今ここで地の精霊に誓う。」
「ぐっ…。」

 ギルド元職員は急に自分の胸を押さえ苦しむ。

「はい、皆さんは仕事に戻ってくださいな。」
「「「はい。」」」」
「さて、そちらのお嬢さんには申し訳ないけれども、奥で少しお話をさせていただけないかしら、色々ありそうですしね?」

 心配そうにジェダイドが私を見てくるが、この状況ではどうする事も出来ないので、大人しく彼女の言葉に私は頷く事しか出来なかった。
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