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第一章
偽の龍
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真っ白な衣装に身を包み、私たちは湖まで歩かされた。
逃げられないように十人ほどの男性に見張られている。
実際どうにかしようと思えば逃げられるのですけれども、今はその気がないので、何もしません。
「……。」
「……。」
どこか心配そうにジェダイドは何度も私を見ている。
セラフィナイトを抱いている彼に私は手を伸ばし、その服を掴む。
「マラカイト。」
「大丈夫。」
貴方は私が守るから。
真っ白な衣装は地面に擦れるほどのワンピースで、動きにくかったが、一つだけ利点があった。
大丈夫。
目を瞑り、その存在を思い浮かべる。
そして、目の前に青い、蒼い湖が広がっている。
今は凪いでいる水面に私は懐かしさを覚える。
「来たか、贄の娘よ。」
私が記憶している教会の男性の着る服に身を包んだ男は嫌な笑みを浮かべ私を見ている。
「怖いか?」
私が黙り込んでいるのが恐怖でだと思っているのか本当に嫌な笑みと猫なで声で私に話しかける。
「大丈夫だ、その恐怖もすぐに終わるよ。」
スッと手を上げると湖から何かが現れる。
大きなそれは水しぶきを上げながら姿を現す。
大きなトカゲ。
それが私の感想だ。
だけど、本物の龍を見た事のない村人たちは龍だ、神龍さまだと口々に言う。
「……マラカイト。」
あまりの大きさにかジェダイドも凍り付いたような顔をしている。
ああ、何て馬鹿なんだろう。
私の中で冷めた感情が溢れ出す。
「………け……な。」
「何だ?」
ようやく私が他とは違う事に気づいたのか、男は不審そうな顔を渡しに向かる。
「ふざけるなっ!」
「ま、マラカイト。」
激怒した私を初めて見たのか、ジェダイドが驚く。
そして、私を鼓舞するかのように水の精霊、風の精霊、地の精霊、そして、この場に少ないはずの火の精霊が力を貸してくれる。
「何を。」
「それが神龍だなんて笑わせないで。」
「なっ!」
絶句している男に私はスッと手を湖のトカゲに向ける。
「水よ
風よ
我が魔素を糧とし
彼の者を捕えよ」
精霊は私の中の力を半分ほど使い、トカゲを湖から引きずり出し、そして、地面に下す。
「何をーー。」
何か言いかける男に私はスカートの下に忍ばしていたそれを抜き出す。
「……。」
私が抜き出したのは一振りの剣というよりは脇差と呼ばれる刀。
これはあのジェダイドを狙っていた暗殺者、金剛からもらったものだ。
幼い自分の身では普通の剣や刀は大きい事が分かっていたからか、彼は護身用にと私にこれを渡したのだ。
私は意外にもしっくりとくる武器をこの時初めて握った。
「トカゲモドキ。」
トカゲはジッと私を睨み、そして、精霊たちの呪縛を力で薙ぎ払う。
「きゃあああああああっ!」
「うわああああああっ!」
叫び惑う村人たちを無視して私は地面を蹴る。
「マラカイトっ!」
後ろでジェダイドが叫んでいるが、私は気にせずに走り出した。
トカゲは尻尾で向かってくる私を狙うが、バレバレの大ぶりの攻撃に私は横に飛び避ける。
「甘い。」
脇差を振るい、トカゲに切りかかる。
トカゲの尻尾は私の脇差に触れる前に自ら切り離されてしまった。
「……。」
自分の攻撃がダメージとしてトカゲを傷つける事が出来ず、思わず私は舌打ちをする。
「大人しく…。」
私の怒りに同調するように精霊たちが動き出す。
「斬られなさいっ!」
水の精霊は細い針のような水をトカゲに浴びせ。
風の精霊は風の刃を奔らせ。
地の精霊はトカゲが動けないように盛り上がり、地に縛り付け。
火の精霊は火の玉を弾丸のように乱れ打っていた。
そして、私はというとーー。
精霊たちが攻撃する間をすり抜け、トカゲの背後に回り込む。
風で足場を作り、そして、頭の上にたどり着いた私は両手で脇差を握り、私の頭の上から一気に突き刺すようにして下ろした。
「光よ
浄化の光よ
どうか 迷いし魂を導きたまえ」
私の祈りは光となってトカゲを包み込む。
役目を終えた私はトカゲの頭を蹴って下へと降り立つ。
トカゲの体液は光となって私の脇差の刃に付着していたので、それをふるい落とし、鞘に仕舞う。
「……。」
そして、私はジッと男を見た。
「まだ、何かやります。」
「か、神の冒涜だっ!」
「……。」
男は私を指さし唾を飛ばしながら喚く。
「何が神の冒涜ですか、冒涜しているのはそちらでしょう。」
「何を証拠に。」
「神龍の名を汚し、その上、この湖を穢そうとしたっ!」
“その通りだ”
「えっ?」
脳内に直接話しかけられるようなこの感じに身に覚えがあった、だけど、周りはこんな訳の分からない出来事に不安になっている。
“愚かな人の子よ 我は水を司るモノ”
「し、神龍様ですか?」
村人の一人が恐る恐るというように口を開く。
“人の子はそのように我の事を呼ぶな”
肯定する神龍に周りはそれぞれの反応を示す。
驚く者
怯える者
畏怖する者
祈る者
そして、怒る者
「嘘だっ!」
そう怒鳴るのは自称教会関連者の男だった。
“何を嘘だという 穢れを纏いし人の子よ”
「神龍だというのなら姿を見せろ、どうせ、そこの小娘が何か仕出かしているんだろうっ!」
「……。」
私を指さす男に複数の目が鋭くなる。
しかし、いくつかの目は疑惑を孕む目を私に向けている。
“よかろう”
その言葉と同時に湖から青白いうろこを持つ龍が現れる。
「……。」
「嘘だろう…。」
私は違和感を抱く、しかし、その違和感が何なのかすぐには分からないでいた。
一方周りの人たちは私と違って動揺している。
特に顕著なのはあの男だった。
男は神龍の放つ殺気をもろに当てられ、震えて失禁までしている。
“何だ その程度か”
虫けらを見るように鼻で笑うその龍に私はハッとなる。
「水を司る神龍よ、どうか、脆弱な人の子である私の問いに応えてはくれませんか。」
“脆弱とな”
私の言葉の何が可笑しいのか神龍はクツクツと笑っている。
“そなたが脆弱というのなら我らも弱いとなるな”
「えっ?」
“まあ、よい、そなたの疑問とは何の事だ?”
「はい。」
神龍の許可を貰った私は一つの疑問を口に出す。
「最近のこの湖の時化や凪はあなた様のお力ですか?」
“……………………”
黙り込む神龍に村人たちは固唾を呑んでいるが、私はまるで神龍が決まり悪そうに黙り込んでいるように思えた。
「いかがですか?」
“それは我らの所為だろうな”
「……。」
神龍の言葉に私はようやく一つの点が線となり繋がった。
「天罰というものですか?」
“…分かって行っているのだろう、癒しのモノよ”
やはり、この神龍はーー。
「って、あの、私は癒しのモノではありませんよ。」
否定する私に神龍は呆れたような顔をしている。
“自覚がないのか?”
「癒しのモノと彼の人は一族の血によって縛られているはずです、どこの血脈を持っている孤児がそんな大それたもののはずがありません。」
“人とは何とも厄介なものか”
盛大な溜息を零す神龍は何処が人間じみている。
“まあ、よかろう。さて、娘先ほど天罰かと問うたが、それは否だ”
「それではーー。」
“理由は言えぬが、人がこの湖を血や穢れで染めぬ限り 我らは手出しはせぬ”
「自然災害のようなものですか?」
“まあ そのような ところだ”
どこか歯切れの悪い神龍に私はこっそりと肩を竦める。
「村の皆さま、神龍様はお怒りではないようです、どうか、贄など出さず、今後もこの湖を穢す事無くお守りになってください。」
私はそっと膝を折り、祈りを捧げるように胸の所で手を組む。
「神子様だ。」
「天使様だ。」
「神子様、万歳。」
「天使様、万歳。」
村人は何故か私に対し仰々しい敬称で万歳をしている。
膝を折ったままの私は訳も分からず彼らが落ち着くまで目を白黒させ続けていた。
逃げられないように十人ほどの男性に見張られている。
実際どうにかしようと思えば逃げられるのですけれども、今はその気がないので、何もしません。
「……。」
「……。」
どこか心配そうにジェダイドは何度も私を見ている。
セラフィナイトを抱いている彼に私は手を伸ばし、その服を掴む。
「マラカイト。」
「大丈夫。」
貴方は私が守るから。
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大丈夫。
目を瞑り、その存在を思い浮かべる。
そして、目の前に青い、蒼い湖が広がっている。
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大きなトカゲ。
それが私の感想だ。
だけど、本物の龍を見た事のない村人たちは龍だ、神龍さまだと口々に言う。
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「………け……な。」
「何だ?」
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そして、私を鼓舞するかのように水の精霊、風の精霊、地の精霊、そして、この場に少ないはずの火の精霊が力を貸してくれる。
「何を。」
「それが神龍だなんて笑わせないで。」
「なっ!」
絶句している男に私はスッと手を湖のトカゲに向ける。
「水よ
風よ
我が魔素を糧とし
彼の者を捕えよ」
精霊は私の中の力を半分ほど使い、トカゲを湖から引きずり出し、そして、地面に下す。
「何をーー。」
何か言いかける男に私はスカートの下に忍ばしていたそれを抜き出す。
「……。」
私が抜き出したのは一振りの剣というよりは脇差と呼ばれる刀。
これはあのジェダイドを狙っていた暗殺者、金剛からもらったものだ。
幼い自分の身では普通の剣や刀は大きい事が分かっていたからか、彼は護身用にと私にこれを渡したのだ。
私は意外にもしっくりとくる武器をこの時初めて握った。
「トカゲモドキ。」
トカゲはジッと私を睨み、そして、精霊たちの呪縛を力で薙ぎ払う。
「きゃあああああああっ!」
「うわああああああっ!」
叫び惑う村人たちを無視して私は地面を蹴る。
「マラカイトっ!」
後ろでジェダイドが叫んでいるが、私は気にせずに走り出した。
トカゲは尻尾で向かってくる私を狙うが、バレバレの大ぶりの攻撃に私は横に飛び避ける。
「甘い。」
脇差を振るい、トカゲに切りかかる。
トカゲの尻尾は私の脇差に触れる前に自ら切り離されてしまった。
「……。」
自分の攻撃がダメージとしてトカゲを傷つける事が出来ず、思わず私は舌打ちをする。
「大人しく…。」
私の怒りに同調するように精霊たちが動き出す。
「斬られなさいっ!」
水の精霊は細い針のような水をトカゲに浴びせ。
風の精霊は風の刃を奔らせ。
地の精霊はトカゲが動けないように盛り上がり、地に縛り付け。
火の精霊は火の玉を弾丸のように乱れ打っていた。
そして、私はというとーー。
精霊たちが攻撃する間をすり抜け、トカゲの背後に回り込む。
風で足場を作り、そして、頭の上にたどり着いた私は両手で脇差を握り、私の頭の上から一気に突き刺すようにして下ろした。
「光よ
浄化の光よ
どうか 迷いし魂を導きたまえ」
私の祈りは光となってトカゲを包み込む。
役目を終えた私はトカゲの頭を蹴って下へと降り立つ。
トカゲの体液は光となって私の脇差の刃に付着していたので、それをふるい落とし、鞘に仕舞う。
「……。」
そして、私はジッと男を見た。
「まだ、何かやります。」
「か、神の冒涜だっ!」
「……。」
男は私を指さし唾を飛ばしながら喚く。
「何が神の冒涜ですか、冒涜しているのはそちらでしょう。」
「何を証拠に。」
「神龍の名を汚し、その上、この湖を穢そうとしたっ!」
“その通りだ”
「えっ?」
脳内に直接話しかけられるようなこの感じに身に覚えがあった、だけど、周りはこんな訳の分からない出来事に不安になっている。
“愚かな人の子よ 我は水を司るモノ”
「し、神龍様ですか?」
村人の一人が恐る恐るというように口を開く。
“人の子はそのように我の事を呼ぶな”
肯定する神龍に周りはそれぞれの反応を示す。
驚く者
怯える者
畏怖する者
祈る者
そして、怒る者
「嘘だっ!」
そう怒鳴るのは自称教会関連者の男だった。
“何を嘘だという 穢れを纏いし人の子よ”
「神龍だというのなら姿を見せろ、どうせ、そこの小娘が何か仕出かしているんだろうっ!」
「……。」
私を指さす男に複数の目が鋭くなる。
しかし、いくつかの目は疑惑を孕む目を私に向けている。
“よかろう”
その言葉と同時に湖から青白いうろこを持つ龍が現れる。
「……。」
「嘘だろう…。」
私は違和感を抱く、しかし、その違和感が何なのかすぐには分からないでいた。
一方周りの人たちは私と違って動揺している。
特に顕著なのはあの男だった。
男は神龍の放つ殺気をもろに当てられ、震えて失禁までしている。
“何だ その程度か”
虫けらを見るように鼻で笑うその龍に私はハッとなる。
「水を司る神龍よ、どうか、脆弱な人の子である私の問いに応えてはくれませんか。」
“脆弱とな”
私の言葉の何が可笑しいのか神龍はクツクツと笑っている。
“そなたが脆弱というのなら我らも弱いとなるな”
「えっ?」
“まあ、よい、そなたの疑問とは何の事だ?”
「はい。」
神龍の許可を貰った私は一つの疑問を口に出す。
「最近のこの湖の時化や凪はあなた様のお力ですか?」
“……………………”
黙り込む神龍に村人たちは固唾を呑んでいるが、私はまるで神龍が決まり悪そうに黙り込んでいるように思えた。
「いかがですか?」
“それは我らの所為だろうな”
「……。」
神龍の言葉に私はようやく一つの点が線となり繋がった。
「天罰というものですか?」
“…分かって行っているのだろう、癒しのモノよ”
やはり、この神龍はーー。
「って、あの、私は癒しのモノではありませんよ。」
否定する私に神龍は呆れたような顔をしている。
“自覚がないのか?”
「癒しのモノと彼の人は一族の血によって縛られているはずです、どこの血脈を持っている孤児がそんな大それたもののはずがありません。」
“人とは何とも厄介なものか”
盛大な溜息を零す神龍は何処が人間じみている。
“まあ、よかろう。さて、娘先ほど天罰かと問うたが、それは否だ”
「それではーー。」
“理由は言えぬが、人がこの湖を血や穢れで染めぬ限り 我らは手出しはせぬ”
「自然災害のようなものですか?」
“まあ そのような ところだ”
どこか歯切れの悪い神龍に私はこっそりと肩を竦める。
「村の皆さま、神龍様はお怒りではないようです、どうか、贄など出さず、今後もこの湖を穢す事無くお守りになってください。」
私はそっと膝を折り、祈りを捧げるように胸の所で手を組む。
「神子様だ。」
「天使様だ。」
「神子様、万歳。」
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