逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

真綿の記憶1

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「マラカイト。」
「はーい。」

 この時の私は出来るだけ、子どもらしく振舞おうと思っていたと思う。

「なあに?おかあさん。」
「お買い物に行くけど一緒に行く?」

 子どもの目線に合わせてしゃがみ込む義母に私は首を横に振った。

「ううん、いかない。」

 否定の言葉に彼女は悲しげに表情を曇らせる。
 私は決して彼女と買い物に行かなかった。
 否、行けなかった。

 だって、私はこの容姿からか、村の人には邪険にされていた。
 義母や義父の前では取り繕う姿を見せるが、それでも、義母や義父はそれを見抜いていていつも悲し顔をする。
 私はそんな顔をさせたくなかった。
 だから、一人で出歩く事はしても彼女たちと一緒に外に出る事はほとんどなかった。

「マラカイト。」

 悲しむ義母や義父の顔を見るのは正直凍り付いているはずの私の胸が痛んだ。

「……貴女は悪くないのよ?」

 義母の言葉に私は何も知らない無垢な幼子の姿を思い浮かべそれをなぞる。

「なにが?」
「……。」

 義母は何とも言えない顔をしたと思ったら私を抱きしめる。

「どうしたの?」
「…………ごめんね。」
「……。」

 何で義母が謝るのか私には理解できなかった。
 村の人に恨まれるような見た目で生まれて来た私が悪いのに。
 表情もがちがちで偽物の子どもの私なのに…。
 何故、彼女は私に謝るのか理解できなかった。

「わからない。」

 ポツリと呟いてしまった言葉。
 そして、彼女の腕の力が強まった。
 ああ、聞かれてしまったのか。
 私は他人事のように思いながら、その腕に包まれた。
 ……まさか、この暖かな腕に包まれるのは後二回だけだとはこの時の私は予想していなかった。
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