86 / 136
第一章
終わる旅路
しおりを挟む
私たちが出会ってから一月以上の日が過ぎた。
着実に終わりが見えて来た。
今私たちがいるのは彼の家のある王都ルビアンに向か道を歩いていた。
この道は商人とかがよく通る道なので、地がならされているので今までの中で歩きやすいだろう。
ジェダイドも終わりを理解しているのか少し前から私の顔を伺うように見ている。
だけど、私は何も言わない。
「……。」
刹那、私は足を止めた。
「マラカイト。」
私が無意味に足を止める事がないと分かっているのか、ジェダイドは警戒しながら腕に抱くセラフィナイトを守るようにしっかりと抱きしめている。
「……。」
空気が動く。
誰かが合図をしたのだろう。
瞬く間に、姿を現した騎士にジェダイドは体を強張らせる。
「マラカイト。」
「……。」
「ジェダイドっ!」
感極まったような女性の声にジェダイドは弾かれたようにそちらに顔を向ければ、貴族の女性がそこにはいた。
「は、母上?」
「本当に、本当に良かった。」
口元を隠すが、その眼は確かに泣いていた。
ジェダイドは混乱したようだったが、すぐに、この事態が私の所為だと悟ったのかジトリと睨み、そして、無言で説明を求める。
「……。」
私はサッと膝を折り、その場で礼を取る。
「……。」
騎士たちは私を警戒していつでも抜刀できるように剣に手を掛けている。
「……。」
女性は私が動いた事で、現状を思い出し、スッと手を上げ、騎士に攻撃するなと合図を送る。
騎士たちは戸惑いながらも私に向かっていた殺気を押さえた。
「顔を上げて頂戴。」
私はゆっくりと女性を見つめる。
記憶にあるお姿よりずっと若く、風に吹かれれば折れてしまう花のようなお姿なのに、その実芯が強く、夫を尻に敷くという一面を持っていた。
「――っ!」
ジェダイドの母上は息を呑み、そして、ゆっくりと私に近づく。
「………やはり…本当だったのですね。」
「……。」
私の頬に触れ、今にも泣き出しそうな顔をする美しいその人に私はどうしたものかと悩む。
「ねえ、ペリドット。」
「……私の名前はマラカイトと申します、奥様。」
「……。」
その名を聞き彼女は私が誰なのか気づいたのだろう、だけど、幸いにも彼女は私にフードを取る事を要求しなかった。
でも、騎士団の中には私の顔を見て息を呑む人もいた。
「母上?」
ジェダイドの呟きに私はハッとなり、彼女から距離を置く。
「……。」
「……。」
私たちは互いに視線を交わし、そして、彼女はそっと私の肩を掴み、ジェダイドに対しては手招きをする。
「……。」
ジェダイドは不思議がりながら自分の母親に近づく。
「母上?」
数歩で母の元にたどり着くような場所でジェダイドは立ち止まった。
「ジェダイド?」
「母上、何を企んでいるんですか?」
「まあ、企んでいるなんて人聞きの悪い。」
私はその言葉を聞いて天を仰ぎそうになった。
彼女は気づいていないがその眼はまるで、獲物を狙う獣のように煌めいている。
多分、今までのジェダイドだったら気づかなかっただろうが、今のこの旅を通して色々と見て来たジェダイドは気づいてしまったのだろう。
だから、警戒するように距離を置いている。
「…もう、ちょっと見ない間に警戒心が強くなってしまって。」
残念そうな顔をしながらも、息子の成長に彼女は嬉しさを隠さないでいた。
「大丈夫よ、貴方に悪い事ではないわ。」
「……。」
それでも、警戒心を抱いているジェダイドに彼女は笑い、そして、指を鳴らす。
すると、騎士たちがジェダイドを拘束する。
「ジェダイドっ!」
反射的に私も動こうとするが、私の肩に爪が刺さる。
「ねえ、逃げ出さないでね、マラカイトちゃん。」
「……。」
ああ、逃げられないのだと私は察してしまった。
こうして、私は予定外にジェダイドのお宅に上がる事になってしまったのだ。
着実に終わりが見えて来た。
今私たちがいるのは彼の家のある王都ルビアンに向か道を歩いていた。
この道は商人とかがよく通る道なので、地がならされているので今までの中で歩きやすいだろう。
ジェダイドも終わりを理解しているのか少し前から私の顔を伺うように見ている。
だけど、私は何も言わない。
「……。」
刹那、私は足を止めた。
「マラカイト。」
私が無意味に足を止める事がないと分かっているのか、ジェダイドは警戒しながら腕に抱くセラフィナイトを守るようにしっかりと抱きしめている。
「……。」
空気が動く。
誰かが合図をしたのだろう。
瞬く間に、姿を現した騎士にジェダイドは体を強張らせる。
「マラカイト。」
「……。」
「ジェダイドっ!」
感極まったような女性の声にジェダイドは弾かれたようにそちらに顔を向ければ、貴族の女性がそこにはいた。
「は、母上?」
「本当に、本当に良かった。」
口元を隠すが、その眼は確かに泣いていた。
ジェダイドは混乱したようだったが、すぐに、この事態が私の所為だと悟ったのかジトリと睨み、そして、無言で説明を求める。
「……。」
私はサッと膝を折り、その場で礼を取る。
「……。」
騎士たちは私を警戒していつでも抜刀できるように剣に手を掛けている。
「……。」
女性は私が動いた事で、現状を思い出し、スッと手を上げ、騎士に攻撃するなと合図を送る。
騎士たちは戸惑いながらも私に向かっていた殺気を押さえた。
「顔を上げて頂戴。」
私はゆっくりと女性を見つめる。
記憶にあるお姿よりずっと若く、風に吹かれれば折れてしまう花のようなお姿なのに、その実芯が強く、夫を尻に敷くという一面を持っていた。
「――っ!」
ジェダイドの母上は息を呑み、そして、ゆっくりと私に近づく。
「………やはり…本当だったのですね。」
「……。」
私の頬に触れ、今にも泣き出しそうな顔をする美しいその人に私はどうしたものかと悩む。
「ねえ、ペリドット。」
「……私の名前はマラカイトと申します、奥様。」
「……。」
その名を聞き彼女は私が誰なのか気づいたのだろう、だけど、幸いにも彼女は私にフードを取る事を要求しなかった。
でも、騎士団の中には私の顔を見て息を呑む人もいた。
「母上?」
ジェダイドの呟きに私はハッとなり、彼女から距離を置く。
「……。」
「……。」
私たちは互いに視線を交わし、そして、彼女はそっと私の肩を掴み、ジェダイドに対しては手招きをする。
「……。」
ジェダイドは不思議がりながら自分の母親に近づく。
「母上?」
数歩で母の元にたどり着くような場所でジェダイドは立ち止まった。
「ジェダイド?」
「母上、何を企んでいるんですか?」
「まあ、企んでいるなんて人聞きの悪い。」
私はその言葉を聞いて天を仰ぎそうになった。
彼女は気づいていないがその眼はまるで、獲物を狙う獣のように煌めいている。
多分、今までのジェダイドだったら気づかなかっただろうが、今のこの旅を通して色々と見て来たジェダイドは気づいてしまったのだろう。
だから、警戒するように距離を置いている。
「…もう、ちょっと見ない間に警戒心が強くなってしまって。」
残念そうな顔をしながらも、息子の成長に彼女は嬉しさを隠さないでいた。
「大丈夫よ、貴方に悪い事ではないわ。」
「……。」
それでも、警戒心を抱いているジェダイドに彼女は笑い、そして、指を鳴らす。
すると、騎士たちがジェダイドを拘束する。
「ジェダイドっ!」
反射的に私も動こうとするが、私の肩に爪が刺さる。
「ねえ、逃げ出さないでね、マラカイトちゃん。」
「……。」
ああ、逃げられないのだと私は察してしまった。
こうして、私は予定外にジェダイドのお宅に上がる事になってしまったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
お妃さま誕生物語
すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。
小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる