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第一章
水面に映る月
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目が冴えた。
私はそっと体を起こし、周りを見渡す。
いつもと変わらない洞窟、でも、決定的に違うものがある。それは私の横で眠る人たちがいる。
私の右横にはぐっすりと眠るセラフィナイトがいて、セラフィナイトはきっと夜泣きも、ぐずる事もなく朝まで目が覚める事はないだろう。
そして、セラフィナイトを挟んだ向うに眠るジェダイドも健やかな寝息を立てていた。
寝た方がいい事は分かっているけれど、このまま横になったとはいえ眠気が来ない気がしたので、そっと溜息を吐いた。
そして、不意に水浴びをしたくなった。
いつもはセラフィナイトの傍を離れるのは心配だからと体を軽く拭くくらいで済ませていたが、今ならば大丈夫だと思った。
念には念を入れて風の結界を張っておくつもりなので、例え、野生の獣が間違って現れたとしても二人は大丈夫だろう。
私は着替えと布を掴み、泉へと足を向けた。
今日は満月のようで十分に歩く事が出来た。
途中、獣の気配を感じる取る事が出来たが、殺気を飛ばせば逃げていくので、幸いにも戦闘になる事はなかった。
生い茂る木々の間をすり抜け、そして、水の匂いが私の鼻に届く。
獣道を抜けると、そこには月明かりで照らされる暗い泉があった。
私はそっと荷物を置き、着ていた服に手をかかる。シャツを脱ぎ、ズボンを降ろす。
一つ、一つ、無防備になっていく私だが実際は別に服を着て居なくたって敵を倒す術などいくらでも持っていたので無防備とは程遠いかと何となく考えるのだった。
そして、生まれたままの姿になり、そのまま泉に向かって歩き出す。
夜で水温までも下がっているのか、冷たく感じたが、それでも、我慢できない程でもなかったので、私はそのまま水中に潜った。
(…………………………………綺麗。)
深くまで潜っていた私は水面を見上げるとそこには白い光を発する月が見えた。
数分、潜っていた私だったが、私の認知範囲に何かが入った。いや、かなり前から気づいていたが、それでも、危険がないので放置していた。
そう、悪意はない。
だけど、放っておけない何かに私は水面に向かって水を蹴る。
そして、勢いよく、顔を出すと、いつの間にか近づいていた「彼」と目が合う。
「…………。」
「…………。」
ああ、そっか、中に入るのは難しくとも、出るのは簡単だったのかと、盲点に気づき、改善しないと、と呑気に考える。
目の前意にいる彼――ジェダイドは硬直して、そして、何故か凄い勢いで顔を赤く染め、顔を背けた。
何なのか分からず、私は無防備に首を傾げる。
「ふ、ふく、をきろっ!」
私は二、三度瞬き、ああ、彼は貧相な体を見て恥ずかしかったのだろう。
「ごめんなさい、貧相な物をみせてしまって。」
「はぁっ!」
ジェダイドは急に振り返り、私の体を見てまた顔を赤くさせた、何か、鼻から赤いものが見えたような?
確か、暑かったりしたら、鼻血が出たりするって、聞いた事があるけれど…でも今日はそんなに暑くない気もするけど……、念のために治癒術でも掛けといた方がいいかしら?
と考えているが、頭と同時に体も動かす。
水分を布でふき取り、服を着替える。
「貧相なものをお見せしてごめんなさい。」
「い、いや、綺麗……じゃなく………意外に、発達……いや……。」
口ごもるジェダイドに私は首を傾げる事しか出来ない。
こんなにも切り傷や下手をすれば肉がえぐれた跡がある体を綺麗だと言えるのか不思議だった。
それに、「前」旅に出ていた女性よりもかなり貧相というか、幼児体型よりも少し成長したくらいなので、彼が顔を背ける理由が分からなかった。
そして、ふっとある人の言葉を思い出す。
「ロリコン?」
「違うっ!」
私の言葉に彼は全力で否定してきた。
「ロリコンって、お前、何でそんな言葉をというか、お前俺の年齢は離れていないだろうっ!」
「……。」
そう言えば、彼は私の体と同じく、まだ子どもだった。
「お前は……本当に…。」
何故か脱力するジェダイドに私はますます分からなくなり首を傾げる。
「何か可笑しな事を言いました?」
「……はぁ。」
深く溜息を吐き、ジェダイドは髪を掻き上げる。
「もういい。」
「そうですか。」
別にこの話題にこだわる気はなかったので、私は頷き、別の疑問を口にする。
「何で出てきたのですか?」
「……。」
黙り込むジェダイドに私は自然と睨むような顔をする。
理由はいくつかあるが、一番の理由は彼自身が己の危機感を抱いていない事だ。
「危険じゃないですか。」
「マラカイト?」
「夜は獣も魔物も活性化していて、どんなに腕のいい方でも命を落とすのですよ。」
「それはお前も一緒だろうが。」
「私は慣れています。」
私の言葉にジェダイとは眉を寄せている。でも、それよりも、彼の事が重要だ。
「貴方は狙われているのですよ。あんなに簡単に捕まった貴方が逃げられるのですか?」
「……。」
私の言葉にジェダイドは黙り込む。
シンと静まり返ってからしばらく経って、私の頭がスッと熱が冷めていき、ようやく言い過ぎた事に気づいた。
彼はまだ、保護されるべき子どもなのに、頭ごなしに彼はダメで私は良いと言われれば癇癪を起しても可笑しくもないのに、彼は癇癪どころか、言葉を飲み込んでいる。
それは聡いから彼自身の力量と私の力量をしっかりと理解し、何も言えなくなっているのだ。
申し訳ない気持ちと、それでも、彼を心配していった言葉なのだからと自分を守る気持ちが鬩ぎ合う。
でも、私の心は片方に倒れる。
「ごめんなさい。」
ポツリと紡がれた私の言葉にジェダイドは弾かれたように顔を上げる。
「私には貴方の行動を咎める資格なんてないのに。」
「……。」
私は下を見て己の未熟さを呪う。
そして、ふっと頭に暖かい何かが触れた。
それは害何てない事は分かったので、のろのろと顔を上げるとそこには温かい目をした彼がいた。
「ジェダ…イド?」
「お前は十分、俺を心配する資格はある。」
言葉と共に頭に乗っていた彼の手が私を宥めるようにポンポンと頭を叩く。
「言っておくが、お前だから俺は心配をする。お前だからお前の言葉に耳を傾けたいと思う。他の他人だったらここまで俺は動かない。」
「……。」
私は彼の言葉を聞き、そっとジェダイドに気づかれないように笑う。
「前」のジェダイドは確かに彼が言うような人だった。
自分の信じない人の意見は決して聞こうとしない。
信じた人の言葉だって彼は自分の信念と違えば謝る事さえしない。
でも、ジェダイドとは優しかった。
素性の知れない「前」の自分を渋々と言えどパティ―に入れてくれた。
他人にも厳しかったけど、それ以上に自分に厳しかった。
何度も足手纏い、と言われたけれど、それ以上に、私が傷つくと彼が悲しみ、そして、こっそりと剣の鍛錬をしていた。
「おい…。」
焦ったような声がしてジェダイドを見れば彼の顔がかなり近い位置にあった。
抱きしめられている、否、いつの間にか自分から彼を抱きしめていた。
カッと頬が熱くなる。
絶対に顔が赤くなっている、何で私は彼を抱きしめてしまったのだろう、絶対に変に思われる。
でも、離れたくなかった。
触れる所から彼の温もりを感じる、心音が、鼓動が、彼が生きている事を教えてくれている。
あの時の冷たさはない。
二人きりになり、初めて私は彼が生きている事にようやく実感が湧いた。
私は胸にある羞恥、安堵、悲しみ、怒り、様々な感情を隠すように彼の同じような身長の為、肩口に顔を押し当てる。
「大丈夫か?」
ジェダイドは私が気分を悪くなったのではないかと心配してくれている。実際は違うのだが、それを口にする事ない。
柔らかな月明かりに包まれながら私は強く決意する。
もう、二度と、彼を、ジェダイドを、失いたくない。
失わせはしない。
命に代えても、私が彼を守る。
生命の温もりを感じながら私は目を閉じ、もう少しだけ、彼の温もりを感じていた。
私はそっと体を起こし、周りを見渡す。
いつもと変わらない洞窟、でも、決定的に違うものがある。それは私の横で眠る人たちがいる。
私の右横にはぐっすりと眠るセラフィナイトがいて、セラフィナイトはきっと夜泣きも、ぐずる事もなく朝まで目が覚める事はないだろう。
そして、セラフィナイトを挟んだ向うに眠るジェダイドも健やかな寝息を立てていた。
寝た方がいい事は分かっているけれど、このまま横になったとはいえ眠気が来ない気がしたので、そっと溜息を吐いた。
そして、不意に水浴びをしたくなった。
いつもはセラフィナイトの傍を離れるのは心配だからと体を軽く拭くくらいで済ませていたが、今ならば大丈夫だと思った。
念には念を入れて風の結界を張っておくつもりなので、例え、野生の獣が間違って現れたとしても二人は大丈夫だろう。
私は着替えと布を掴み、泉へと足を向けた。
今日は満月のようで十分に歩く事が出来た。
途中、獣の気配を感じる取る事が出来たが、殺気を飛ばせば逃げていくので、幸いにも戦闘になる事はなかった。
生い茂る木々の間をすり抜け、そして、水の匂いが私の鼻に届く。
獣道を抜けると、そこには月明かりで照らされる暗い泉があった。
私はそっと荷物を置き、着ていた服に手をかかる。シャツを脱ぎ、ズボンを降ろす。
一つ、一つ、無防備になっていく私だが実際は別に服を着て居なくたって敵を倒す術などいくらでも持っていたので無防備とは程遠いかと何となく考えるのだった。
そして、生まれたままの姿になり、そのまま泉に向かって歩き出す。
夜で水温までも下がっているのか、冷たく感じたが、それでも、我慢できない程でもなかったので、私はそのまま水中に潜った。
(…………………………………綺麗。)
深くまで潜っていた私は水面を見上げるとそこには白い光を発する月が見えた。
数分、潜っていた私だったが、私の認知範囲に何かが入った。いや、かなり前から気づいていたが、それでも、危険がないので放置していた。
そう、悪意はない。
だけど、放っておけない何かに私は水面に向かって水を蹴る。
そして、勢いよく、顔を出すと、いつの間にか近づいていた「彼」と目が合う。
「…………。」
「…………。」
ああ、そっか、中に入るのは難しくとも、出るのは簡単だったのかと、盲点に気づき、改善しないと、と呑気に考える。
目の前意にいる彼――ジェダイドは硬直して、そして、何故か凄い勢いで顔を赤く染め、顔を背けた。
何なのか分からず、私は無防備に首を傾げる。
「ふ、ふく、をきろっ!」
私は二、三度瞬き、ああ、彼は貧相な体を見て恥ずかしかったのだろう。
「ごめんなさい、貧相な物をみせてしまって。」
「はぁっ!」
ジェダイドは急に振り返り、私の体を見てまた顔を赤くさせた、何か、鼻から赤いものが見えたような?
確か、暑かったりしたら、鼻血が出たりするって、聞いた事があるけれど…でも今日はそんなに暑くない気もするけど……、念のために治癒術でも掛けといた方がいいかしら?
と考えているが、頭と同時に体も動かす。
水分を布でふき取り、服を着替える。
「貧相なものをお見せしてごめんなさい。」
「い、いや、綺麗……じゃなく………意外に、発達……いや……。」
口ごもるジェダイドに私は首を傾げる事しか出来ない。
こんなにも切り傷や下手をすれば肉がえぐれた跡がある体を綺麗だと言えるのか不思議だった。
それに、「前」旅に出ていた女性よりもかなり貧相というか、幼児体型よりも少し成長したくらいなので、彼が顔を背ける理由が分からなかった。
そして、ふっとある人の言葉を思い出す。
「ロリコン?」
「違うっ!」
私の言葉に彼は全力で否定してきた。
「ロリコンって、お前、何でそんな言葉をというか、お前俺の年齢は離れていないだろうっ!」
「……。」
そう言えば、彼は私の体と同じく、まだ子どもだった。
「お前は……本当に…。」
何故か脱力するジェダイドに私はますます分からなくなり首を傾げる。
「何か可笑しな事を言いました?」
「……はぁ。」
深く溜息を吐き、ジェダイドは髪を掻き上げる。
「もういい。」
「そうですか。」
別にこの話題にこだわる気はなかったので、私は頷き、別の疑問を口にする。
「何で出てきたのですか?」
「……。」
黙り込むジェダイドに私は自然と睨むような顔をする。
理由はいくつかあるが、一番の理由は彼自身が己の危機感を抱いていない事だ。
「危険じゃないですか。」
「マラカイト?」
「夜は獣も魔物も活性化していて、どんなに腕のいい方でも命を落とすのですよ。」
「それはお前も一緒だろうが。」
「私は慣れています。」
私の言葉にジェダイとは眉を寄せている。でも、それよりも、彼の事が重要だ。
「貴方は狙われているのですよ。あんなに簡単に捕まった貴方が逃げられるのですか?」
「……。」
私の言葉にジェダイドは黙り込む。
シンと静まり返ってからしばらく経って、私の頭がスッと熱が冷めていき、ようやく言い過ぎた事に気づいた。
彼はまだ、保護されるべき子どもなのに、頭ごなしに彼はダメで私は良いと言われれば癇癪を起しても可笑しくもないのに、彼は癇癪どころか、言葉を飲み込んでいる。
それは聡いから彼自身の力量と私の力量をしっかりと理解し、何も言えなくなっているのだ。
申し訳ない気持ちと、それでも、彼を心配していった言葉なのだからと自分を守る気持ちが鬩ぎ合う。
でも、私の心は片方に倒れる。
「ごめんなさい。」
ポツリと紡がれた私の言葉にジェダイドは弾かれたように顔を上げる。
「私には貴方の行動を咎める資格なんてないのに。」
「……。」
私は下を見て己の未熟さを呪う。
そして、ふっと頭に暖かい何かが触れた。
それは害何てない事は分かったので、のろのろと顔を上げるとそこには温かい目をした彼がいた。
「ジェダ…イド?」
「お前は十分、俺を心配する資格はある。」
言葉と共に頭に乗っていた彼の手が私を宥めるようにポンポンと頭を叩く。
「言っておくが、お前だから俺は心配をする。お前だからお前の言葉に耳を傾けたいと思う。他の他人だったらここまで俺は動かない。」
「……。」
私は彼の言葉を聞き、そっとジェダイドに気づかれないように笑う。
「前」のジェダイドは確かに彼が言うような人だった。
自分の信じない人の意見は決して聞こうとしない。
信じた人の言葉だって彼は自分の信念と違えば謝る事さえしない。
でも、ジェダイドとは優しかった。
素性の知れない「前」の自分を渋々と言えどパティ―に入れてくれた。
他人にも厳しかったけど、それ以上に自分に厳しかった。
何度も足手纏い、と言われたけれど、それ以上に、私が傷つくと彼が悲しみ、そして、こっそりと剣の鍛錬をしていた。
「おい…。」
焦ったような声がしてジェダイドを見れば彼の顔がかなり近い位置にあった。
抱きしめられている、否、いつの間にか自分から彼を抱きしめていた。
カッと頬が熱くなる。
絶対に顔が赤くなっている、何で私は彼を抱きしめてしまったのだろう、絶対に変に思われる。
でも、離れたくなかった。
触れる所から彼の温もりを感じる、心音が、鼓動が、彼が生きている事を教えてくれている。
あの時の冷たさはない。
二人きりになり、初めて私は彼が生きている事にようやく実感が湧いた。
私は胸にある羞恥、安堵、悲しみ、怒り、様々な感情を隠すように彼の同じような身長の為、肩口に顔を押し当てる。
「大丈夫か?」
ジェダイドは私が気分を悪くなったのではないかと心配してくれている。実際は違うのだが、それを口にする事ない。
柔らかな月明かりに包まれながら私は強く決意する。
もう、二度と、彼を、ジェダイドを、失いたくない。
失わせはしない。
命に代えても、私が彼を守る。
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