逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

暁の光

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「マラカイト。」

 名前を呼ばれて、ようやく私は足を止める。
 まだ、馬小屋まで距離はあるが、急ぐ必要はないし、それに、ここは人がいないので、私たちが気に掛ける必要はなかった。

「何で、何も言わなかったんだよ。」
「言う必要がないから。」
「誤解されたままだろうが。」
「……。」

 怒ったような、否、怒った顔をしているジェダイドに私は苦笑する。

「仕方ない事…。」
「仕方ないって、何でだよ。」
「あの人たちにとって今回はイレギュラーな事、そして、そのイレギュラーと同時に怪しい私がここに来たのだから、きっと偶然ではなく必然だと思うでしょ?」
「偶然だろうがっ!」
「世の中には偶然というものはないけどね、私たちの出会いだって、ここでの出来事だって後々にこれは必然だったと気づかされる事だってあるかもしれない。」
「……それとこれは別だろう。」
「ええ、別の話かもしれない、けど、あの人たちにとっては私は「邪」で「悪魔」つまりは異物なの。」
「…お前は普通の子どもだろう。」
「……。」

 ジェダイドの言葉に私は目を大きく見開く。

「普通?ジェダイドは本気でそう思っているの?」
「それ以外に何があるんだよ。お前は実は神の子だったとか?」
「いえ、一応人から生まれているけど。」
「一応ってなんだよ。」
「……。」

 前回は精霊でした、なんてこの場では言う必要はないのだが、明らかに私は普通とは程遠い存在だと思う。

「私は普通じゃないと思うけど?」
「何処がだ?」
「疑問を疑問で何で返すのかな……。」

 私のボヤキに対しジェダイドはキッと睨んできた、なんか、私に対して対応が変わっているような。

「お前が俺に遠慮するからな、それならもう構っていられるものか、俺は言いたい事はいうようにする。そうじゃないと、お前は何も言わず先に行くだろう。」
「……。」
「そんな顔をするな、というか、結構無表情だと思ったけど、よくよく見ると感情が出てたんだな、安心した。」

 ジェダイドの言葉に私は首を傾げる。

「話を戻すが、お前のどこが普通じゃないというんだ。」
「だって、この髪。」
「はっ、白雪みたいで綺麗じゃないか。」
「……何を考えているのか分からない所とか。」
「お前は難しく何でもかんでも考えすぎだし、つーか、思っている事をもう少し口にすればいいじゃないか。」
「子どもらしくないし。」
「それを言うなら俺だって子どもらしくないと母上に嘆かれるぞ。」
「普通じゃない。」
「普通の定義ってなんだ。」
「それは…。」
「他の人と違うところがない事か?それだと、どの人だって普通じゃない事になる。」
「ラインを逸脱している事。」
「ラインって何だよ、他人が勝手に線引きをしているんだろ。」
「……。」

 何でジェダイドは私を肯定しているのか分からなくって、私は混乱する。

「何で……。」
「お前はさ、出会う人間人間よくない奴らにしか会ってないんだろうな。」
「そんな事は。」
「世界は広いんだ……、俺だって、、お前みたいな奴がいるなんて知らなかった、でも、俺はお前が……す……………嫌いじゃない。」
「……。」

 ああ、受け入れてはいけない言葉がすんなりと入り込んでくる、可笑しい、気づきたくなかったのに。

 私は気づいてしまった。

 本当はまえから気づいていた部分があったけど、それでも、私は見なかったことにしていた。

 彼が私を肯定している事、そして、私を大切に思っている事をーー。

 私は鍵を何度も、何度も掛けたのに、あの時自分を見る冷たい目でタガが外れてしまったのか、今、こんなにもすんなり入ってきてしまった。

「…………………。」

 私は気づいた感情をどうするか決めかねた。

 もう一度蓋をするか、でも、きっとまた外れてしまうだろう。

 育てるか、………苦笑するしかなかった。

 私はジェダイドには勝てない、そう、それは「前」から知っていたじゃないか。

 闇が明ける。

 心情と景色が一致して、私は小さく笑う。

「ありがとう、ジェダイド。」
「マラカイト?」

 何故、行き成りお礼を言われたのか分からないのか戸惑いを見せるジェダイドに私はクスクスと笑う。
 それを見たジェダイドは呆気に取られた顔をする。
 そして、私はジェダイドの間抜け顔にとうとう声をあげて笑った。
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