私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香

文字の大きさ
33 / 122
幽霊少女サイド

カップ麺をすする

しおりを挟む
 ズズズ、と音を立てて北斗はカップ麺をすすっていた。

「……。」
「……。」

 寮にたどり着いた時にはやはり食堂は閉まっていた、だから、北斗は手持ちのカップ麺の一つを開け、五分待って食べていた。
 そして、その前には数枚の書類が乗っていて、食べながら時々器用に書類にサインをしていた。

「北斗。」
「何だ?」
「食べながらって行儀悪いよ。」
「……。」
「それに、仕事終わったって言ってなかったっけ?」
「……。」

 都合が悪いからか黙り込んでいる北斗に私は頬を膨らませる。

「ほーくーとー。」
「………嘘は吐いてない。」
「ふーん。」
「あの山の書類は明後日までの提出だ。」
「で、明後日までの書類を自室に持ち込んで言い訳?」
「……ギリギリセーフなものを持ち込んでいる。」
「……。」

 という事は、普通はいけないんじゃないか、と私は思いながら胡乱な目つきになっている。

「北斗。」
「……明日朝一に戻しに行く。」
「……。」

 社畜な北斗に私はもし体があったら問答無用で彼から書類を取り上げ、ベッドに放り込むのにと本気で思う。
 あっ、でも、私の腕力だと、本当に北斗をベッドに放り込むことはできないだろうけど、まあ、背中を押すくらいはできるだろう。

「……分かった、分かったから、そんなに見るな。」

 私の視線が痛かったのか、北斗はさっと書類を仕舞い、残りのカップ麺を完食するために食べ進める。

「北斗さ、何でそこまで自分を追い込むわけ?」
「そんな事ねぇぞ。」
「……。」

 無自覚なのか、私は深くため息を零す。

「自分だけでしょい込んで、どうするの?」
「どうするって、何だよ。」
「そのうち北斗、重たすぎる荷物で自滅するよ。」
「……。」
「自分では気づいていないけど、北斗、結構いっぱいいっぱいまで抱え込んでいる。
 見ている方が辛いくらい、北斗は無理しているんだよ。」
「……。」
「何で、そこまで自分を追い込むの?」
「……俺はいずれ、家督を継ぐことになる。」
「うん。」
「多くの人の命を、生活を背負う事になるんだ。」
「うん。」

 ぽつぽつと零れる言葉に私は相打ちを打つことしか出来なかった。

「俺がこんなところでへばっていたら、下の奴らは不安になるだろう。」
「そんな事ないよ。」
「あるさ、小さい頃、俺は親父の後について色んな所を見てきた。」
「……。」
「俺はあれを背負わないといけないんだよ。」

 私には分からなかった。
 彼の背負うべきものが、彼が何を恐れているのか。

「それは先の話でしょ?」
「早ければ数年先だ。」
「ねぇ、北斗。」
「何だ。」
「私はもっと北斗に頼ってほしいと思うよ。」
「スピカ?」

 突然何を言うのだと訝しむ北斗に私は思いのまま口にする。

「北斗が頑張っているのは誰が見ても分かるよ。
 でも、北斗が頑張りすぎると、私は自分が情けなくなるんだよ。
 だって、北斗が私を頼らないという事は信用ならないって言っているみたいだから。
 北斗が頑張れば頑張るほど、私は心配になるんだよ。
 北斗の周りには北斗を手伝おうという人がいるのに、貴方はそれを無視して自分でやり切ろうとする。
 無理や無茶をしてでも、頑張ろうとする。
 それは美徳ともいえるかもしれないけど、悪い面でもあるんだよ。
 北斗が頑張れば、その分、下の人に北斗の仕事内容が伝わらない、もしも、北斗がここで倒れてしまったら、他の人はどこまで北斗の仕事をすればいいのか分からなくなるんだよ。
 今は北斗の先輩ばっかりだから、大丈夫だけど、来年、再来年には北斗の後輩が入ってくるんだよ。
 そうなると、北斗一人が頑張っていたら下は育たないんだよ。」
「……。」
「北斗の重荷を少しでも、私に頂戴。
 愚痴も聞くし。
 北斗の負担を少しでも減らしたいんだよ。」
 北斗は無言になって、私に近づく。
「なら、少し、肩を貸してくれ。」

 そう言うと、北斗は私の肩に額を押し当て、深く息をする。

「北斗?」
「少しだけ、少しだけいいんだ。」
「うん、北斗が回復するまで、肩でも胸でもなんでも貸すよ。」

 私は北斗の熱のお陰で、彼に触れる事が出来た。
 だから、その形のいい頭を撫でた。
 そして、北斗がありがとうというまで、その行為は続いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

処理中です...