私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香

文字の大きさ
59 / 122
幽霊少女サイド

初デート

しおりを挟む
「ど、どうしよう…。」

 私は前日服を決めていたのにも関わらず、当日になって本当にこれでいいのかと悩んでしまっている。
 だって、だって、生まれて初めてのデートなんだよ。
 ううう、いや、最初の服だってそんなに変じゃないんだけど、それでも、ううう。
 私が呻いていると、扉の方から呆れたようなため息が聞こえた。

「……。」

 私が顔を上げてみると、そこにはお母さんがいた。

「何?」
「時間大丈夫なの?」
「……。」

 机の上にある置時計を見れば、約束の時間の三十分前だった。

「いっ、いやあああああああああああっ!」

 急いで着替えて出かけないと間に合わない。
 結局初めに決めていた服になり、私は用意してあったカバンを引っ掴む。

「本当にこの子は…。」

 一体誰に似たのかと、ため息を零すお母さんだけど、多分私はお母さんに似ているよ。
 そう言い返したかったけど、本当に時間がなかったので、私は怒鳴るように行ってきますと言って外に飛び出した。
 待ち合わせの場所までゆっくり歩いて三十分、急げば多分、二十分で行ける。
 待ち合わせのモニュメントにたどり着くと、そこにはすでに北斗がいた。
 彼は手にカップの飲み物を二つ持っていた。
 一つはコクコクと飲んでいるので、彼のだろう、もう一つはもしかして飲み終わっているのではないのか、つまり、結構前から待っていたのではないのかとすっと血の気が引く。

「ほ、北斗っ!」
「スピ…彩実。」

 いまだに彼は私をスピカと呼びそうになる。
 私としてはペンネームとかハンドルネームみたいで別に気にしないのだけど、彼はちゃんと私の名前を呼びたいと思っているのか、いつも言いなおしてくれる。

「ごめんね、遅れて。」
「いや、そんなに待っていない。」
「うそ、絶対その飲み物冷たいでしょ。」

 私は口をひん曲げて、彼の手にあるカップを睨みようにしてみる。

「そんな事ねぇぞ。」

 北斗はそう言うと、先ほど彼が飲んでいない方のカップを私に渡す。
 それは確かにまだ温かった。

「温かい。」
「ほら、お前用のココア。」
「えっ、何で。」
「どうせ、お前の事だからわたわたして喉乾いているんじゃないかと思ってな。」
「……。」

 あたりです。
 急いできたから喉は乾いている。

「ありがとう…。」
「ん。」

 私がお礼を言えば、北斗は小さく頷く。

「今日はどうするの?」
「指輪を買う。」
「へ?」

 何で指輪、というか、北斗あんまり装飾品とかしてなかったよね。
 私は思わず北斗の手を見る。
 やっぱり、北斗はその手には何も付けていない。

「……言い訳で許嫁がいる事を言った事を覚えているか?」
「あー、そんな事があったね。」
「つまりはそう言う事だ。」

 ってどういう事よ。
 全然訳が分からなくて私は眉間にしわを寄せる。

「……お前は俺にとってなんだ?」
「うーん、恋人(仮)。」
「(仮)は余計だ。」
「えー、でも実感ないんだよ。」
「……。」
「あの時からずっと北斗の側にいたから、本当に恋人になるのかな~、って、というか、私北斗にちゃんと言ってもらってないよね、うわ、凄い痛い子な気がしてきた。」
「……。」

 北斗は額に手を当て、なんか呆れているような、自嘲しているような。

「俺はお前が…………~~~~~~~っ!」

 何か言おうとしている北斗だったけど、なんか顔を真っ赤させて、黙り込む。

「北斗?」
「時間がもったいない、行くぞ。」
「へ?」

 北斗は顔を真っ赤にさせたまま私の腕を掴んで目的の場所に向かって歩き出した。
 もう、本当に何なのよ。
 私は少し不満に思いながらも大人しく北斗の後を追った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

男女比5対1の女尊男卑の世界で子供の頃、少女を助けたら「お嫁さんになりたい!」と言って来た。まさか、それが王女様だったなんて……。

楽園
恋愛
「将来、あなたのお嫁さんになりたい」 10年前、俺は魔法の力で一人の少女を救った。 ……そして現在。ここは男女比5:1の女尊男卑の世界。 男は女に「選ばれる」ためだけの存在する。   俺、アルトは、前世の記憶と女でさえ持っていない無限の魔力を隠し、父と静かに暮らす「モブ」になるはずだった。 「待っていましたわ、アルト」 学園で再会したあの時の少女は、驚くべきことにリリアーナ王女だった。 どうやら彼女、あの日の「約束」を本気で果たしに来たらしい。 (俺の平穏なモブ生活が……!) 最強を隠したい男と、その秘密ごと彼を手に入れたい王女の、すれ違い学園ファンタジー!

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

処理中です...