私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香

文字の大きさ
92 / 122
北斗サイド

あっという間に運動会が来ました

しおりを挟む
 毎日会議、話し合い、色んな場所に駆けずり回り、本当に嫌になる毎日だったが、唯一の癒しがスピカとの時間だった。
 スピカの顔を見て癒され、笑顔に勇気づけられた。
 もし、スピカがいなければ絶対に乗り越えられなかっただろう。
 そして、今現在自分たちがやっていた成果が目の前にあった。

「あっ。」
「どうしたんだ?」

 突然声を上げた彼女に俺は首を傾げる。

「何でもないよ?」
「……。」

 苦笑しながらそんな事を言う彼女。
 本人は気づいてないようだがじゃ間目が泳いでいる。
 この馬鹿は…、と思わず口に出しそうになるが、ぐっとそれを飲み込む。
 だけど、何かが漏れ出ていたのか、スピカは頬を引きつらせ、観念したように大人しく口を開いた。

「うん、二学期に入って、北斗が残業続きだった理由が、運動会や文化祭の為だったのかなって、今更ながらに気づいて。」
「……凄い今更だな。」
「ですよね。」

 自分でも呆れているのか苦笑を浮かべるスピカに俺はこぼれ出そうなため息をぐっと飲み込む。
 何とかして取り繕うが、どうしても呆れたような顔しか出来なかった。
 スピカはますます苦笑を深いものにする。
 これ以上何か変な方向に向かう前に俺は軌道修正する事にした。

「何で行事を一気に詰め込むのか訳が分からない。」
「五月で運動会するところもあるもんね。」
「まあ、五月でも熱中症とかあるから、正直度の季節でもいいんだけど、立て続けに行事が入るのだけはマジ死ぬかと思った。」
「ははは、お疲れ様。」

 本当に疲れたあまりの忙しさで昨日久しぶりに体重計に乗って思わず二度見してしまったほどだ。
 覚えている体重よりも軽くなっていた時は眩暈がした。
 そして、鏡を見ればやつれた顔がそこにあったので、思わずこんなんになるまで俺が働く必要はないんだから辞めてしまおうかと本気で思ってしまった。
 だが、ここまでやって辞めるのは色んな意味で無理なので、俺はこの事に気づかない振りをして今日までやってきた。
 忙しいばかりだったが、悪い事ばかりではないはずだ、一応メリットはあった。

「まあ、生徒会に入っているから、運動会の競技は全員参加のみで済んでるのだけが、救いだよな。」

 もし、他の競技なんかさせられたら発狂してしまう。
 ただでさえ、当日にもやる事は山のようにあるのに、そんなんに体力を奪われるのなんてまっぴらだ。

「全体って、何だっけ。」

 スピカの問いに、俺は即答する。

「一年は百メートル走。」
「ふんふん。」
「学年全体は応援合戦だな。」
「へー。」

 感心した声を出していたスピカだったが何か気にかかる事があったのか首を傾げる。

「北斗練習に出てなかったけど、大丈夫なの?」
「体育の授業の時に少しやっているから、大丈夫だ。」
「……。」

 何故が絶句しているスピカだったが、すぐに俺を睨んできた。

「何だよ。」

 どこかふてくされているスピカ、訳が分からない。

「万能の人は違うなー、と思っただけ。」
「何だよ、それ。」

 本気で意味が分からない。

「天才様には凡人の気持ちなんて分かりませんよーだ。」
「誰が天才だ、誰が。」

 呆れたように俺がそう言ば、スピカは噛みつくように言う。

「北斗でしょ。」
「俺が本当に天才ならばもっと効率よくできたんだろうな。」

 スピカに言うようにと言うよりは心の何かを吐露すように俺はそんな言葉を口にしていた。

「どうしたの?」

 心配そうといいよりは怪訝な顔で聞いてくるスピカに俺は何となくここまま彼女に長年のそれを吐き出していた。

「俺は天才じゃないさ、そう見えるのなら、人よりほんの少し出来がいいだけで、不出来の部分を必死で隠しているだけだ。」

 俺の言葉に何を思ったのか、スピカはその形のいい唇を噛んでいた。
 何か言葉を紡がないといけないと思いながらも、言葉が出ず、先にスピカの方が口を開く。

「ごめん、言いすぎた。」
「いや、平気さ。」

 もっと違う言葉があるはずなのに結局自分の口から出たのは何とも微妙な言葉だった。

「……………私、馬鹿だからさ、ついつい、目先の事でしか物事を見ないんだ。」
「スピカ?」

 自嘲するスピカの纏う空気が可笑しくなる。

「いつもそう、目の前の問題ばかりを見て、本質を見抜こうとしない。
 だから、ゲームに逃げて。
 全てを後回しにして、高校に入ったら、変わろうと思ったのに、全然変わらないや。」
「スピカ?」
「お母さんが怒る理由も。
 お父さんが呆れる意味も。
 先生が口を酸っぱく言ってくる事も。
 ちゃんと理由があったのに、私は気づくことなく、自分の事ばかりしか考えていなくって。
 だから、私はあの日、周りを見ていなくて、気づいたら――。」

 ぼんやりと虚空を見つめて喋り続ける彼女は異常だった。
 まるで何かに取りつかれているようで、ぞっと寒気を感じた。
 どうすれば彼女を取り戻せるのかと考えるが、答えを出す前に、彼女はハッとしたように現実に戻ってきた。

「スピカ?」

 本当に大丈夫なのか、とそう思いながら彼女の仮の名を呼ぶ。

「何でもないよ。そろそろ、一年の競技だよ。」
「あ、ああ。」

 笑顔で何かを隠す彼女に俺は何も言う事が出来なかった。
 ただただ、やせ我慢をする彼女を刺激しないように見ている事しか出来なかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

男女比5対1の女尊男卑の世界で子供の頃、少女を助けたら「お嫁さんになりたい!」と言って来た。まさか、それが王女様だったなんて……。

楽園
恋愛
「将来、あなたのお嫁さんになりたい」 10年前、俺は魔法の力で一人の少女を救った。 ……そして現在。ここは男女比5:1の女尊男卑の世界。 男は女に「選ばれる」ためだけの存在する。   俺、アルトは、前世の記憶と女でさえ持っていない無限の魔力を隠し、父と静かに暮らす「モブ」になるはずだった。 「待っていましたわ、アルト」 学園で再会したあの時の少女は、驚くべきことにリリアーナ王女だった。 どうやら彼女、あの日の「約束」を本気で果たしに来たらしい。 (俺の平穏なモブ生活が……!) 最強を隠したい男と、その秘密ごと彼を手に入れたい王女の、すれ違い学園ファンタジー!

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...