もう一度君と…

弥生 桜香

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第六章

第六章「体育祭」12

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「……。」

 項垂れる碧に涼也は何とも言えない顔をしている。
 それもそうだろう、碧は競技が終わったら早々に着替える気満々だった。
 しかし、彼のその考えは甘いというように、実行委員に止められた。

「……。」

 どんよりとした影を背負っている碧に涼也はどうするかと悩んでいると。

「これ着ろ。」

 樹が来ていたジャージを碧の頭の上にかぶせる。

「……いらない。」
「あん?」

 突き返す碧に樹の額に青筋が浮かぶ。
 それもそうだろう、親切心でやった事を突き返されているのだから。
 涼也は碧が突き返す理由が分かっているので、額を押さえている。

「意地を張るな。」
「張ってねぇ。」
「いや、張っている。」
「んだと。」

 もう少ししたら取っ組み合いしそうな二人に涼也は溜息を吐く。

「碧、お前言葉足りねぇぞ。」
「そうか?」

 先ほどの睨み合いは何だったという風にケロリとした碧に涼也は溜息を零す。

「ああ、実行委員から上にはおるのも着替えるのも禁止されている、って言えばいいじゃねぇかよ。」
「……本当か?」
「ああ、そうだけど。」

 涼也の言葉を疑っているのか、樹は碧に確認し、周りを見れば、周りも頷いていた。

「……。」
「見せしめか。」
「そーだろうな。」

 うんざりとした顔をする碧に涼也は苦笑いを浮かべる。

「まあ、娯楽が少ないからだろうけどな。」
「そんなら自分たちでバニーガールでもなんでもやっとけよ。」
「ははは…。」

 ぶつくさと文句を言う碧に涼也はごつめの実行委員がバニーガールの格好をして実況したり、白線のラインを引いている想像をして青ざめながら苦笑いを浮かべる。

「何言っているのよ。」
「ぶっ!」

 碧は近くにいた女子に殴られ、涙目で彼女を見る。

「何するんだよ……。」
「あんたが変な事言うからでしょう。」
「変って。」
「あんたみたいな似合う奴がしているんならいいけど、今回の実行委員を考えてよ、もう、ギャグを通り過ぎてホラーよ。」
「……あっ…。」

 碧は彼女の言う意味が分からず周りを見渡す事でようやく納得する。

「確かに……。」
「まあ、今回障害物に出場したメンバーはまだ見目がいい方だからこうやってできているけど、あいつみたいな奴だったらやばいじゃん。」
「……。」

 彼女は他のクラスの障害物競争に出場したと思われるガタイのいいナース服を着た男子生徒を指さした。

「確かにな。」
「まあ、一人、二人ならギャグで済むんだけどね。」
「うん…。」
「そうそう、碧写真撮らせて。」
「何でだよ。」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。」
「いやいや、減るし。」
「何がよ。」
「男のギョウジとか。」
「矜持ね。」

 間違っている言葉を訂正され、碧は首を傾げる。

「あれ?」
「あんたって本当に馬鹿ね。」
「うっせー。」
「大丈夫なの、勉強。」
「……。」
「碧。」

 ポンと碧の肩に樹の手がのる。

「終わったら勉強な。」
「いやだああああああぁぁぁぁーー。」

 碧の絶叫が上がるが、体育祭は順調に進んでいった。
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