もう一度君と…

弥生 桜香

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第八章

第八章「クリスマス」9

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「あの馬鹿…。」

 悪態を吐く樹に涼也は苦笑する。

「あんな事をすればあいつはああするに決まっているじゃないか。」
「……。」
「何であんな態度をするんだよ。」

 あっ、つい言ってしまった、と涼也は顔を顰めるが、樹の言葉を聞いて絶句する事になる。

「何でだろうな。」
「……………えっ?」
「気づいたらあんな態度をしてしまう。」
「……。」
「別に怒らせたいとかはないんだがな……。」

 ああ、と涼也は頭を抱えたくなった。
 まさか、まさか、樹が無自覚だとは思いたくなかった。
 いや、普通の恋愛対象は異性だから気づかないのか、でも、でも、普通違和感とかあるよな。
 と脳内で叫びつつも、そんな事はおくびにも出さず。

「そっか。」

 涼也は何とかそれだけを絞り出す。

「それにしてもあの馬鹿はあんな馬鹿な回答ばかりして高校に行けるのか。」
「……。」

 樹の言葉に涼也は複雑な感情を抱く。
 涼也は『知っている』碧がどんな道を歩むか。
 多分、それはここでも変わらないだろう。
 頑なな彼はきっとその道を信じひたすら歩く。
 だけど、それは涼也の口から出してはいけない。

「そろそろ碧を追いかけなくていいの?」
「そうだな。」

 樹は少し汚れてしまったスーツを叩いて汚れを落とす。
 涼也は樹を嗾ける事で、この話題を止めた。
 もし、彼がこの話題を出した時、碧はどんな答えを出すだろう。

 正直に話すか。

 それとも隠すか。

 涼也には分からないけれども、それでも、涼也は碧の出す答えを否定するつもりはなかった。

 悩んで、出した結果ならば、とやかく部外者が言えるはずがない。
 それがたとえ傍から見れば間違いだと分かっていても。
 涼也は口に出さないと心に決めていた。

「それじゃな。」
「ああ。」

 碧を追いかける彼は「前」ではありえなかった。
 変わっていく未来。
 それはこの先どう変わっていくのだろうか。
 残念ながら神ではない涼也が分かるはずがなかった。
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