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第三章
第三章「焦りと出会い」1
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昼は真面目に学校に通い、夜は夜歩きをする生活を涼也は続けていた。
涼也は前の時よりもあまり身長が伸びないかもしれないと危惧していたのが、適度な運動がよかったのか、双子である京也よりも筋肉がつき、そして、身長も京也よりも拳一つ分大きくなった。
そして、中学二年の夏休み、涼也は特に部活は入っていなかったので自由な時間をかなり持つ事が出来た。
前の自分なら間違いなく友達と遊びまくっていただろうが、涼也は後二、三年という残された時間をどこか焦ったような面持ちで過ごしていた。
そして、今日は図書館に来ていた。
前の自分ならばレポートの作成のためにしか来た事がなかっただろうが、今はかなりの頻度で図書館を利用するようになっていた。
今回涼也が行こうと思っている場所は普通の高校ではない。
様々な業種の両親や祖父母たちを持つ、未知なる存在と渡り歩くには普通の知識では頼りなく、涼也はその為にも自主的に勉強をしていた。
そして、今日もと本を探していると、どこぞの少女漫画かと疑いたくなるようなベタな状況が発生した。
「あっ…。」
「……。」
涼也が手を伸ばしたら、丁度一人の男、男と言っても涼也と年は対して変わらない外見をしているのだが、彼の発する空気がどこか落ち着いたというような空気を纏っていた。
しばらく彼と見つめ合っていた涼也だったが、ハッとなり手をひっこめる。
「借りるんじゃないのか?」
「別に急ぎじゃないし。」
「ありがとうな。」
どこか知っているような空気に涼也は不意に泣きそうになった。
「お、おい、大丈夫か?」
何故か慌てている彼に涼也は不思議そうな顔をしたが、すぐに彼が驚いている理由を知る。
頬に暖かいものが伝い、涼也は自分が泣いている事にようやく気付く。
「あ、あれ…。」
慌てて拭うがあふれ出る涙は止まらない。
彼は何を思ったのか彼は涼也の手を引いて、誰もいない死角になるような席に涼也を座らせ黙っていなくなる。
涼也は何で自分が泣きだしたのか理解出来なかった。
そして、彼が混乱していると冷たい何かが涼也の頬に触れる。
「大丈夫か?」
「えっ?」
頬に触れたのは濡らされたハンカチだった。彼は涼也にそれを差出し、涼也はそれをぼんやりと見つめた。
そうして、本の僅かの沈黙が二人の間に落ち、不意に彼は笑った。
「これで、目元を拭いたらどうだ?」
「あっ…。」
ようやく彼の意図を理解して、涼也はあまりにも自分がぼんやりとし過ぎていた事に恥ずかしくなり、頬を赤くさせる。
「……と。」
涼也が小さくお礼を言うと彼はフッと笑ったような気配がした。
「……。」
「……。」
彼はジッと涼也を見ていたが、しばらくして、涼也の隣に座る。
「……時間いいんですか?」
沈黙に耐えきれなくなった涼也が訊く。
「今日一日は休めってお目付け役に言われてな、何をしていいのか分からないから、大丈夫だ。」
「……お目付け役?」
「お前の方こそ時間は大丈夫なのか?」
「えっ、ああ、大丈夫……。」
突然の事で涼也が狼狽えるが、彼はそんな涼也を無視して彼の手を引いた。
「それなら付き合ってくれ。」
「えっ!」
「それじゃ、行こう。」
手を引かれるままに涼也は彼と共に図書館を出る事になった。
涼也は前の時よりもあまり身長が伸びないかもしれないと危惧していたのが、適度な運動がよかったのか、双子である京也よりも筋肉がつき、そして、身長も京也よりも拳一つ分大きくなった。
そして、中学二年の夏休み、涼也は特に部活は入っていなかったので自由な時間をかなり持つ事が出来た。
前の自分なら間違いなく友達と遊びまくっていただろうが、涼也は後二、三年という残された時間をどこか焦ったような面持ちで過ごしていた。
そして、今日は図書館に来ていた。
前の自分ならばレポートの作成のためにしか来た事がなかっただろうが、今はかなりの頻度で図書館を利用するようになっていた。
今回涼也が行こうと思っている場所は普通の高校ではない。
様々な業種の両親や祖父母たちを持つ、未知なる存在と渡り歩くには普通の知識では頼りなく、涼也はその為にも自主的に勉強をしていた。
そして、今日もと本を探していると、どこぞの少女漫画かと疑いたくなるようなベタな状況が発生した。
「あっ…。」
「……。」
涼也が手を伸ばしたら、丁度一人の男、男と言っても涼也と年は対して変わらない外見をしているのだが、彼の発する空気がどこか落ち着いたというような空気を纏っていた。
しばらく彼と見つめ合っていた涼也だったが、ハッとなり手をひっこめる。
「借りるんじゃないのか?」
「別に急ぎじゃないし。」
「ありがとうな。」
どこか知っているような空気に涼也は不意に泣きそうになった。
「お、おい、大丈夫か?」
何故か慌てている彼に涼也は不思議そうな顔をしたが、すぐに彼が驚いている理由を知る。
頬に暖かいものが伝い、涼也は自分が泣いている事にようやく気付く。
「あ、あれ…。」
慌てて拭うがあふれ出る涙は止まらない。
彼は何を思ったのか彼は涼也の手を引いて、誰もいない死角になるような席に涼也を座らせ黙っていなくなる。
涼也は何で自分が泣きだしたのか理解出来なかった。
そして、彼が混乱していると冷たい何かが涼也の頬に触れる。
「大丈夫か?」
「えっ?」
頬に触れたのは濡らされたハンカチだった。彼は涼也にそれを差出し、涼也はそれをぼんやりと見つめた。
そうして、本の僅かの沈黙が二人の間に落ち、不意に彼は笑った。
「これで、目元を拭いたらどうだ?」
「あっ…。」
ようやく彼の意図を理解して、涼也はあまりにも自分がぼんやりとし過ぎていた事に恥ずかしくなり、頬を赤くさせる。
「……と。」
涼也が小さくお礼を言うと彼はフッと笑ったような気配がした。
「……。」
「……。」
彼はジッと涼也を見ていたが、しばらくして、涼也の隣に座る。
「……時間いいんですか?」
沈黙に耐えきれなくなった涼也が訊く。
「今日一日は休めってお目付け役に言われてな、何をしていいのか分からないから、大丈夫だ。」
「……お目付け役?」
「お前の方こそ時間は大丈夫なのか?」
「えっ、ああ、大丈夫……。」
突然の事で涼也が狼狽えるが、彼はそんな涼也を無視して彼の手を引いた。
「それなら付き合ってくれ。」
「えっ!」
「それじゃ、行こう。」
手を引かれるままに涼也は彼と共に図書館を出る事になった。
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