今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

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第二章

《一人じゃない》

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 図書館の裏には庭があった。
 セイラは背伸びをして少し凝り始めた肩をほぐすように背伸びをする。

「んー…。」

 背伸びをしながら深呼吸をすれば緑の良い匂いがセイラの鼻孔をくすぐる。

「悪魔の子…か。」

 セイラはそうポツリと呟き自分の髪を引っ張る。
 髪が黒いとかそうじゃないかで、人を悪魔呼ばわりするのは間違っていると彼女は思った。

 でも、それはあくまでもセイラの価値観であり、それを他人に押し付ける事が出来ない。

「……仕方のない事…何だよね。」

 自分の両親が偶々そう言うものを忌み嫌う人たちだった。
 だから、セイラはレミラによって育てられた。

 自分を不幸だとはセイラは思っていない、でも、偶に自分が捨てられなかったらと考える時がある。
 そうすれば、レミラは生きていたのかもしれない。

 レラ、ミラも孤児にならなくて済んだかもしれない。

「……仕方のない事だもんね。」

 セイラはごちゃごちゃと考えそうになる寸前で思考を止める。
 否、彼女がごちゃごちゃと考える前に彼女を心配してついてきた人物が姿を現したのだった。

「セイラ。」
「カルム。」

 唇を真っ直ぐにした彼にセイラは彼がどこまで自分の聞いていたのかと苦笑する。

「ごめんね、黙って出ちゃって心配したよね。」
「……。」

 セイラの言葉にカルムは首を横に振る。

「違う、確かに心配で追いかけて来たけど…お前が謝る事じゃない。」
「……。」
「なあ、さっきから「悪魔の子」とか言っていたけど、どういう意味だよ。」
「……。」

 直球を投げかけてくるカルムにセイラは苦笑いを浮かべる。

「カルム、私だからいいけど、普通はもっとオブラートに包んで話そうよ。」
「お前だからだよ、お前は直球で言わないとはぐらかすだろう。」
「……。」

 心当たりがあるのかセイラは黙り込む。

「セイラ。」
「……レラとミラには秘密にしてほしいんだけど。」

 そう言えば、カルムは黙って頷く。

「黒い色を持って生まれた子は闇属性の可能性が強くて、闇は悪魔とかそう言うのを連想させるから、地域によっては悪魔の子と呼ばれるみたい。」
「……。」
「そういう文化で育った両親だったら仕方ないよね、って。」
「仕方なくないじゃねぇかよ。」

 怒りで震えるカルムにセイラはただただ彼を見つめる。

「もし、お前が悪魔の子だっていう奴がいるのなら俺は違うと言ってやる、お前は俺たちと同じ人間だ。」
「カルム。」
「感情がある、知性がある、生きている、何が違うんだ。髪の色が黒い?そんなの探せば世の中にはたくさんいるだろう。セイラだけが耐え忍ぶなんておかしいじゃねぇか。」
「……。」
「闇属性だって、ただの属性じゃねぇかよ。闇属性が全員悪魔と呼ばれるって言われるなんておかしいじゃねぇかよ。」
「……あっ…。」

 何故、カルムがここまで怒るのかセイラはようやく思い至る。
 彼の母親は闇属性だと自己申告していた。
 つまりは彼の母親を悪魔呼ばわりしているのと同じだと気づき、セイラは慌てる。

「カルム、貴方のお母さんは立派な方よ。」
「はぁ?」
「素敵な方だと私も思っているし、ああ、もう、なんかごめんなさい。私が余計な事を言ったばかりに。」
「ちょ…お前落ち着けよ。」
「……。」

 あまりに慌てるセイラにカルムはようやく冷静になり、そして、セイラの話を聞き終わりポツリと呟く。

「そう言えば、そうだったな。」
「えっ?」
「あー、別にあの人が悪魔だと言われても今さら感があるし。」
「えっ、ちょっと、それはそれで酷いんじゃないかな。」
「だって、あの親父の妻をしている時点で鬼嫁とか言われる人だぞ。」
「……。」

 何だか頭が痛くなったセイラは頭を押さえる。

「そ、そうなんだ。」
「狂狼の一族の嫁何だから二つ名が出来ても気にしないとか言っていたしな。」
「きょうろう?」
「親父の家系でそう呼ばれているらしい。」
「へー。」

 セイラは少し恐ろしい名前のそれに首を捻りながらも、カルムが気づいていないようなので、ホッとする。

「…もし、お前が気にするのなら、俺だって悪魔の子の子ってなるんだし、気にするな。」
「えっと。」
「別にいいだろう。」
「いいのかな?」

 釈然としないセイラだったが、すぐにパタパタとこちらに向かってくる足音に気を取られる。

「セイラ様~。」
「ちょっと、お願いだから痛い、痛い、せめて手を緩めて。」
「まあ。」

 引きずるミラと引きずられるレラを見てセイラは目を丸くさせた。
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