今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

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第二章

《学ぶ 9》

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「誰?」
「……お昼に今日伺うと約束させていただいた、セイラと申します、勝手に入り込んでしまってすみません。」

 中から聞き覚えのあるシスターの声にセイラはホッとしながらそう言う。
 扉は恐る恐るというように開き、そして、昼間会ったシスターが姿を見せる。

「あっ、本当にこられたの?」
「はい。」
「えっと、一人は昼間の子よね、もう一人は?」
「セイラ様のメイドをしております、ミラと申します。」

 頭を下げるミラにシスターは顔色を悪くさせる。

「えっ、メイド……つまり、セイラちゃんは貴族なの?」
「いえ、違います、私自身はただの子どもですし、親は商人なので。」
「そうなの?」

 まだ警戒をしているシスターにセイラはニッコリと微笑む。

「約束通り、患者さんの様子を見ますね。」
「……ええ。」

 まるで、藁をもつかむようなシスターにセイラは覚悟をして臨んだ。

「この子がウノちゃん?」
「はい。」

 まるで、やせ細った子どもは木の棒のような手足をしているおり、あまりの姿に、セイラはぞっとした。

『ひどい状態だな。』
『ええ。』
「……。」
『方法は二つか。』
『一つはこのまま見捨てる事。』
「――っ!」

 無慈悲な言葉にセイラは思わず、後ろを振り向く。
 彼らは冷めた目で幼子を見ていた。

『この状況、そして、それを受け入れる器が伴っていない時点で、唯一の方法、それは。』
『依り代。』
『紙でその娘の身代わりを作り、そして、火か光かで焼くか浄化するかで何とかなるだろう。』
「直接浄化は出来ないのですか?」

 セイラは声を殺し尋ねる。

『無理だな。』
『貴女の体が持ちません、浄化には呪いを覆う力が必要とします、ですが、貴女のその体はそれに耐えられないのです。』
『依り代ならば、移すのみ、浄化よりは少量の力でなすことが出来るだろう。』
「……。」

 彼らの言葉を聞いて、セイラはその方欲しかないのだと悟った。

「あの、ここに紙はありますか?」
「ええ。」

 シスターは棚から色紙を取り出す。
 セイラはそこから黄色い紙を抜き出し、そして、奴を折る。

『娘にその紙を擦り付け、そして、娘の息を吹きかけろ。』

 セイラは言われた通り行い、ひゅーひゅーと苦しそうな息遣いを聞きながら、なんとしてでも助けたいと思った。

『………詠唱などない、ただ、祈れ。』
「……。」

 セイラは手を組み、そして、ウノから悪いものがこの紙に写るようにと念じる。
 しばらくは何も起きなかった。
 二分ほど経ち、セイラは焦る。
 しかし、精霊王の二人は何も言わないし、外野もただただ息をのんでセイラの動作を見ていただけだった。
 そして、さらに二分経ち、黒い靄が少女の体から漏れ出し、さ迷うように蠢く。

「……。」

 セイラはそれを見て、怯みそうになるが、すぐに気合を入れなおし、紙にそれが乗り移るように念じる。
 さ迷っていた靄はセイラが強く念じれば、その通り動き出す。
 セイラはそれが依り代から逃げないように強く、強く念じる。
 額から玉のような汗が流れるが、セイラはそれを拭うことなく、ただ、じっと紙と靄を見ていた。
 十分くらい経ち、靄が依り代に移り切った。

『……………思ったよりも主の消耗がひどいようだな。』
『ええ、固定は難しいようですね。』
『浄化も無理なようだな。』
「浄化せねばどうなりますか?」
『……呪いはさ迷い、違うものに乗り移る。』
「――っ!」

 セイラはどうするべきか頭を働かせる、今どうにかして呪いをこの紙に移しているが、長時間は持たない。
 紙を焼いてしまえば、逃げられるかもしれない。

「………紙を焼く。」

 セイラはポツリと呟き、そして、一か八か賭けに出る事にした。
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