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9-4.弱い人間だったが(須佐視点)
しおりを挟む*・*・*(須佐視点)
最初の印象は、意思の弱そうな人間の女にしか見えなかった。
素戔嗚尊と呼ばれる己の、妻である比売よりもか弱い女。
そんな女が、かつて天孫降臨に携わるきっかけとなった、十束の剣を宿しているとは思わず。
それから次第に、姉を降ろすことの出来る達川笑也と生活するようになって。
弱かった自分の意思を変えるくらいに、強くなろうとしていた。
【……人間というものは、コロコロと意思を変える存在だが】
あの女、万乗穫は違う方向に向かっていきそうだ。
【ふふ……移り変わりも、また人間だからではないですか?】
【……兄者】
己と同じ、天の神としての白装束を纏っている、兄神の月読命は相変わらず女に見間違える美しさだった。
だが、弟である須佐は知っている。彼は見た目以上に苛烈な神であることを。
【穫は……たしかに弱いです。十束の剣を宿していても、鍛えた人間ではない。けれど、大切なものを守ろうと言う意思は強い子です。我々も、姉君が諾と言われたのならば、従いましょう】
【……応】
たしかに、今側にいる姉神の天照大神が決断を下したのであれば。須佐はそれに従うまでだ。はるか昔に、あの姉には多大な迷惑をかけたので罪滅ぼしをせねばならないからだが。
【行きましょう、須佐】
月詠の言葉に従い、二神は瞬時に外から笑也の自室に移動して。
すぐに、姉神の両隣に現れた。
【我らも】
【従おう】
いきなりの登場には、穫も慣れていたはずだろうに。相変わらず咲夜に抱きついていたのだった。
「須佐……さん、月詠さん……?」
【もう一度言います。我らも姉君の決断に従いますよ? 穫】
「い……いん、ですか?」
【応。姉者の決断は、我らも同意だ】
「!…………ありがとうございます」
その時の、穫が泣きそうになっているのを堪えた笑顔が。
須佐の、己の妻と重なり。今すぐ彼女に会いたいと思ってしまったが。
だが、彼女は。今は会えない。
この人間の女と、万乗に関わる呪怨を退治しない限り。
しばらく、会えないからだ。
【さーて? 二人には新メンバーを紹介するわよん?】
姉神が紹介すると言った人間は、一見すると少年のような印象を受ける女だったが。
覚醒した穫には霊力などは劣るものの、術には長けていそうな雰囲気を持っていた。
「安倍の流れを汲む、琴波佐和と申します」
綺麗な所作で、こちらに名乗り上げるのは好ましい印象を受けた。どうやら、稀代の安倍晴明の血族の傍流の傍流らしい。
それにしては、呪力の方は穫に匹敵するくらいあるように感じた。
【俺のことは須佐と】
【私のことは月詠と】
「わかりました」
とりあえず、あの呪怨の根城に突撃する前に。
全員で、穫の料理で腹ごしらえすることになったのだった。
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